抄録
本研究はドイモイによる経済発展が進むベトナムをフィールドとして,増え続けるストリートチルドレンの問題への政府の対応を検討,評価すると同時に,同じ目的を持って活動するNGOの現状を分析したものである.政府の対応を調査すると法整備の先進性,行政機構の充実,政策の考え方の合理性,そして現場における不適切な実施状況が明らかになる.一方,NGOでは個人の自発性に基づき,子どもの人権を尊重しながら多角的な社会福祉ケアが行われていて,活動の規模は小さいが,ストリートチルドレン問題の解決に一定の成果を上げていることが判明した.NGOは単に一党独裁への脅威ではなく,逆に社会問題解決のために貢献できる可能性を持つ存在である.今後は全国民の義務教育を担う政府と社会福祉ケアを得意とするNGOの協働によりストリートチルドレン問題の解決を目指す方向性が望ましい.