2012 年 32 巻 4 号 p. 4_79-4_84
目的:臨床看護研究が実施される病院における看護研究の倫理審査体制の現状と課題を明らかにし,病院における看護研究倫理審査についての今後の方向性を検討した.
方法:便宜的サンプリングとし,設置主体別(国・公・法人・大学附属・専門等)の協力の得られる病院を各1つ選択し,研究倫理審査の責任者あるいは倫理審査に精通している者を対象に,聴き取り調査を実施した.
結果:6病院のデータ分析の結果,(1)すべての看護研究が研究倫理委員会で審査されている病院から,研究倫理委員会とは別に看護部内で審査されている病院や審査システムを持たない病院まで,審査体制はさまざまである,(2)審査基準の有無と内容にも差異がある,(3)研究倫理委員会に看護師がいない病院や倫理の専門家(倫理学者等)がいない病院もある,(4)通常/簡易審査の基準が不明確である,審査期間が長すぎる,研究倫理に関する知識が不足しているなどの課題があげられた.
考察:看護研究の倫理審査が適切に行われるためには,倫理審査を担う人材育成に取り組むことが急務であり,学会や看護協会が教育・研修プログラムを提供すること,研究倫理に関する知識について情報発信を行うことが必要である.