2016 年 35 巻 p. 257-266
目的:本研究の目的は,作成した自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の信頼性と妥当性を検証することである.
方法:尺度項目は文献検討等から作成し,専門家による修正,プレテストを経て,「計画」49項目,「組織化」11項目,「装備」14項目,「トレーニング」22項目,「予行演習」9項目,「評価と改善」9項目の114項目で作成された.対象は全国4,298施設の病院看護部であった.調査は郵送法で実施し,分析には相関係数,信頼性係数等を用いた.調査期間は2013年5~6月であった.
結果:723施設から回答があり,有効回答は555施設(12.9%)であった.信頼性についてα係数は尺度全体得点で0.987, 下位尺度ごとのα係数も0.843~0.971であった.基準関連妥当性,構成概念妥当性も確保された.
結論:項目数が多いという課題は残るが,この尺度は自然災害に対する病院看護部の備えを測定するための有用性を認めた.
わが国では,南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の大規模地震発生が危惧されるだけでなく,火山災害,頻発する豪雨や台風による水害などもあり,自然災害に対する備えが重要であるといえる.
病院においては,日常から患者・家族を抱え,さらに災害時には多数の被災者が訪れる可能性があり,災害への備えは災害拠点病院だけでなく,すべての病院での取り組みが必要になってきている.とくに病院看護部は,施設において24時間365日勤務する職員数の最も多い職種であるといえ,災害時においても第一線での対応が必要になる.災害時は登院もままならない状況下で,少ない看護者数で看護サービスを行うこと,平常時には使用しない器材の活用など,通常と異なる活動が予想される.このため組織的な視点から看護者や物品を確保し,整備,教育,訓練など,災害時に活動できるようにしておくことを考えなければならない.
災害への備えという視点から文献検索を行い,災害時に活動できる病院看護部としての備えに関する尺度を検索したが,病院看護部に的を絞ったものは見あたらなかった.そこで「自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度」の開発に取り組むこととした.
本尺度の原案作成のために米国のDepartment of Homeland Security (2008)のPreparedness Cycleの6つの活動「Plan(計画)」「Organize(組織化)」「Train(トレーニング)」「Equip(装備)」「Exercise(予行演習)」「Evaluate and improve(評価と改善)」を下位尺度として用い,先行調査や文献から114の項目をあげた.回答には4件法を用い,1は「していない」,2は「あまりしていない」,3は「だいたいしている」,4は「している」とし,得点が高いほど備えられているように配点した.次に内容的妥当性の確認のために災害看護や看護管理分野の大学教員経験者5名への調査と,表面妥当性の確認のために過去に災害拠点病院や大規模病院で看護代表者や看護部で災害・防災に関して経験のある看護者6名への調査を行った.内容的妥当性の調査から6下位尺度において尺度項目の移動をした.表面妥当性の確認では,無回答の項目は少なく,平均25分で回答できていた.以上から114項目に対し,追加・削除は必要なしとした(西上,2015a).その後,プレテストでは,無作為に選んだ全国900施設を対象に,項目の過不足や回答率・回答時間等を調査した.有効回答率27.0%で,項目の過不足には具体的な意見はなく,回答の分布等から項目削除を検討したが,該当する項目はなかった.回答時間は平均24.8分であった(西上,2015b).本稿ではこの尺度の信頼性と妥当性を検証したので,報告する.
「災害に対する病院看護部の備え」とは,病院の看護部が自施設のある地域で起こると考えられる災害に対して専門的知識と技術を用いて事前に努めて堅実に対応できるようにしておく活動のことである.具体的には災害が起こると認識し,脆弱性を分析した上で計画し,組織化,装備,トレーニング,予行演習,評価と改善を連続的プロセスで継続的に行うことである.そのため,この活動には病院に勤務する他の職員や関連する業者や機関,地域住民との協働を含んでいる.
医療法第1条の5に定める病院の看護部で,回答を看護部代表者または,看護部において災害・防災に関することを任されている看護者とした.
2.データ収集方法病院検索システムを用い,病院を検索し,プレテストで使用した施設(900施設)を除いた4,298施設に調査票を郵送した.依頼書と同時に送付した調査紙へ回答した者を研究協力者とした.調査票は郵送で依頼し,返送は無記名,料金受取人払いとする返信用封筒を入れた.調査票郵送時には看護部代表者宛に研究の趣旨や倫理的配慮について記した依頼用紙を同封した.
データの収集期間は,2013年5月~同年6月であった.
3.調査項目基本属性として14項目(所在地,病床数,種別,立地,災害拠点病院指定,救急指定病院,被災経験,災害による傷病者受入経験,被災地への看護師派遣経験,病院機能評価受審,備えの満足度,備蓄等)を,さらに尺度114項目,企業防災力評価システム(以下,CMP法)等を調査項目とした.
4.分析方法解析にはIBM SPSS Statistics Ver. 20を使用した.
1)備え測定尺度の信頼性の検討信頼性の検討では,本研究は内的整合性(クロンバックのα信頼性係数:以下,α係数)のみをみた.再検査法を用いることは,病院看護部にとって多忙な病院業務の中で2度にわたる調査の回答を依頼することになり,時間的・心理的負担をかけることを考慮し,実施しなかった.
2)備え測定尺度の妥当性の検討(1)基準関連妥当性の検討本尺度では併存的妥当性より検討を行うこととし,病院機能評価,CMP法との検討を行った.Niskaら(2006)の米国の研究では医療評価を行っているJoint Commission on Accreditation of Healthcare Organization (JCAHO)の公認とテロリズムへの病院スタッフの備えトレーニングにおいて関連が報告されており,日本でも医療機能評価機構の行う病院機能評価との関係が推察された.病院機能評価受審の有無を独立変数としてt検定し,病院機能評価を受審している病院の平均値が有意に高いと推測した.
CMP法は,東京工業大学都市地震工学センターによって開発された地震に対する企業防災力評価システムである(梶ら,2004;慶應義塾大学SFC研究所,2005).満点1200点の評価システムは,点数が高いほど充実しているといえ,CMP法の総得点と本尺度の得点は,Spearmanの順位相関係数で,有意な正の相関を示すと予測した.
(2)構成概念妥当性の検討構成概念妥当性として,既知グループ技法を用いた.既知グループ技法には,「①災害拠点病院の指定の有無」「②災害への備えの満足度(高・低)」「③被災経験の有無」「④被害による傷病者を受け入れた経験の有無」を独立変数として,t検定にて比較した.仮説としては,①災害拠点病院の指定を受けている病院,②災害への備えの満足度の高い病院,③被災経験のある病院,④災害による傷病者を受け入れた経験をもつ病院のほうが有意に高い得点を示すと予想した.
3)尺度項目の検討尺度項目の検討では,内的整合性の点から,尺度を構成する下位尺度ごとにα係数,項目が削除された場合のα係数,項目–全体得点相関(I–T相関)と主成分分析を行った.さらにG–P分析を用いて,各項目の得点が全体の得点とどの程度関連しているかを確認し,下位尺度間での相関についても検討した.
5.倫理的配慮本研究は,研究対象者に身体的な侵襲を与える研究ではないが,調査はA4判で10頁に及び,時間的拘束感と負担感が発生する可能性があった.調査票への回答期間を3週間とすることで,時間的にゆとりをつくる配慮をした.無記名での回収とするため,返信に際して個人名はもちろんのこと施設名も記述しなくてよいことを記載した.本研究は兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会の審査を受け,承認(平成24年,博士1)されて研究を実施した.
調査は4,298施設に送付し,回収は723施設(回収率16.8%)からあった.回答者723施設のうち,尺度114項目中に欠損のある167施設,ならびに現状での回答でない東日本大震災被災以前の状況を回答した1施設の計168施設を除いた555施設で分析を行った(有効回答率12.9%).
2.回答施設・回答者の概要病床数は553施設から回答があり,平均189.2床(範囲:20~1000)であった.病院種別では「一般病院」354施設(63.8%),「地域医療支援病院」110施設(19.8%)が多かった.設置主体は「医療法人」259施設(46.7%),「都道府県・市町村」131施設(23.6%)が多かった.災害に対する備蓄は「あり」464施設(83.6%)で,備蓄をしている施設の備蓄日数の質問には403施設の回答があり,平均3.2日(範囲:1~10)であった.その他の概要は表1に示した.

回答者は「看護部門代表者」432施設(77.8%),「看護部門代表者ではないが,災害・防災に関することを任されている看護者」115施設(20.7%)であった.職位は,「看護部門代表者」の場合,「副院長(看護部長または看護局長を兼任するものを含む)」13施設(3.0%),「看護局長」16施設(3.7%),「看護部長・総看護師長」299施設(69.2%),「副看護部長・副総看護師長」37施設(8.6%),「看護師長・婦長」55施設(12.7%),「その他」11施設(2.5%)であった.
3.尺度に関する回答の概要114項目全体の平均値は251.1(SD 68.6),下位尺度は①計画49項目の平均値は111.7(SD 29.1),②組織化11項目の平均値は23.2(SD 7.2),③装備14項目の平均値は31.6(SD 9.7),④トレーニング22項目の平均値は47.6(SD 14.8),⑤予行演習9項目の平均値は18.9(SD 6.1),⑥評価と改善9項目の平均値は18.2(SD 7.4)であった.合計得点の分布は,中央値252で歪度0.171,尖度−0.496であった.データの正規性について,Kolmogolov–Smirnov検定(Lilliefors有意確率の修正)でp=0.069,正規分布していた.
尺度の114項目について平均値の一番高い項目は項目番号24で平均値3.5 (SD 0.7)であった.一番低い項目は,項目番号36で平均値1.4 (SD 0.6)であった.尺度の偏りをみる上で,回答分布から70%以上の回答者が「している」または「していない」という項目はなかった.尺度を構成する下位尺度ごとにα係数,項目が削除された場合のα係数,項目–全体得点相関(I–T相関)と主成分分析について検討した.概念内のα係数は0.987に対し,項目が削除された場合のα係数もすべて0.987であった.I–T相関は0.281~0.776, 0.4以下の項目は,項目番号98のみ0.281であった.主成分分析では0.286~0.784であり,0.4以下の項目はI–T相関と同じように項目番号98が0.286であった.
4.備え測定尺度の信頼性の検討信頼性の検討のために尺度全体得点と下位尺度ごとのα係数を求めた.114項目尺度全体得点の信頼性係数は0.987であった.下位尺度ごとのα係数は(1)計画49項目は0.971, (2)組織化11項目は0.884, (3)装備14項目は0.930, (4)トレーニング22項目は0.958, (5)予行演習9項目は0.843, (6)評価と改善9項目は0.951であり,すべて0.8以上であった(表2).

病院機能評価受審の有無と尺度得点の平均値の比較(t検定)を行った(表3).病院機能評価を受審している病院は263施設で,平均値は274.3(SD 64.0),受審していない病院は292施設で,平均値は230.2(SD 65.9)であった.等分散性のLeveneの検定でF値は0.817, p=0.366であった.t値は7.994,有意確率(両側)はp<0.001であった.病院機能評価を受審している病院の平均値は有意に高かった(p<0.001).病院機能評価の受審の有無と6つの下位尺度の各得点の平均値の比較結果は,すべての下位尺度で病院機能評価を受審している病院の平均値が有意に高かった(p<0.001).

回答者555施設のうち,CMP法に欠損のない施設は332施設であった.CMP法に回答した332施設の記述統計について総合防災力を示す全体の合計点数の平均値は569.8(SD 188.3)であった.CMP法の信頼性係数(α係数)は0.865であった.CMP法の目標値である1000点を超えた施設は2施設であった.CMP法の総得点と尺度の相関について検定した.CMP法の総得点と尺度の順位相関(Spearman)は,r=0.730, p<0.001で,強い正の相関を認めた.CMP法の総得点と6つの下位尺度の得点についても相関を検定した.6つの下位尺度すべてがSpearmanの順位相関係数で,有意な正の相関(p<0.001)があった.
2)構成概念妥当性の検討(表3)災害拠点病院の指定と尺度の平均値の比較(t検定)を行った.災害拠点病院の指定を回答した施設546施設中,指定を受けている病院は100施設で平均値は302.9(SD 57.5),受けていない病院は446施設で平均値は239.4(SD 65.7)であった.災害拠点病院の指定を受けている病院は受けていない病院よりも有意に得点が高かった(p<0.001).
災害への備えの満足度と尺度の平均値の比較を行った.災害への備えに対する満足度には548施設から回答があったが,「満足」と回答した施設が2施設のため,「満足」「だいたい満足している」と回答した施設(以後,「満足群」とする)96施設と「あまり満足でない」「満足でない」と回答した施設(以後,「不満足群」とする)452施設での平均値の比較(t検定)を行った.「満足群」の病院の平均値は307.7(SD 58.3),「不満足群」の病院は239.4(SD 64.2)であり,満足度の高い施設は低い施設よりも得点が有意に高かった(p<0.001).
被災経験をもつ病院とそうでない病院の得点の平均値の比較(t検定)を行った.被災経験について回答した施設は554施設であった.被災経験のある病院は平均値は278.9(SD 71.5),被災経験のない病院は242.4(SD 65.3)であった.被災経験のある病院は被災経験のない病院よりも有意に得点が高かった(p<0.001).
災害による傷病者の受け入れ経験をもつ病院とそうでない病院の得点の平均値の比較(t検定)を行った.災害による傷病者の受け入れ経験について回答した施設は554施設であった.傷病者の受け入れ経験をもつ病院の平均値は279.7(SD 68.2),経験のない病院は238.3(SD 64.9)であった.災害による傷病者の受け入れ経験をもつ病院は経験のない病院よりも有意に得点が高かった(p<0.001).
6.尺度項目の検討1)内的整合性(表2)「計画」のα係数は0.971であり,項目が削除された場合のα係数は,0.970~0.971であった.I–T相関は0.396~0.778,主成分分析では0.4以下の項目はなかった.「組織化」のα係数は0.884であり,項目が削除された場合のα係数でも0.867~0.879と高くなる項目はなかった.I–T相関は0.525~0.701,主成分分析で0.4以下の項目はなかった.「装備」のα係数は0.930であり,項目が削除された場合のα係数でも0.923~0.929と高くなる項目はなかった.I–T相関は0.514~0.740,主成分分析で0.4以下の項目はなかった.「トレーニング」のα係数は0.958であり,項目が削除された場合のα係数でも0.955~0.958と高くなる項目はなかった.I–T相関は0.512~0.815,主成分分析では0.4以下の項目はなかった.「予行演習」のα係数は0.843で,削除された場合のα係数では,0.811~0.847であった.項目番号98はこの項目を除外するとα係数が0.847となり,内的整合性を脅かしていた.I–T相関は0.347~0.692,主成分分析0.436~0.795であった.この項目はI–T相関では0.347と0.4以下であるが,主成分分析では0.436と削除の基準となる0.4以下ではなかった.「評価と改善」のα係数は0.951であり,項目が削除された場合のα係数は0.944~0.948と高くなる項目はなかった.I–T相関は0.758~0.837,主成分分析では0.4以下の項目はなかった.
2)Good–Poor analysis(G–P分析)G–P分析では,平均値が251.1であったことから,上位群を252以上,下位群を251以下として分析した.114の項目ごとに上位群と下位群の平均値を出してt検定を実施したところ,すべての項目で上位群が高い得点を出し,その平均値はp<0.001で有意差があった.114のすべての項目が,尺度の総得点と関連していた.
3)下位尺度間の相関(表4)6下位尺度についての正規性であるが,①「計画」のKolmogolov–Smirnov検定(Lilliefors有意確率の修正)p=0.032で,②「組織化」p=0.057,③「装備」p=0.047,④「トレーニング」p=0.050,⑤「予行演習」p=0.067,⑥「評価と改善」p=0.109で,正規分布している項目としていない項目があった.そこで6つの下位尺度間の相関関係についてSpearmanの相関係数を用いて検定したところ,全下位尺度間で有意な正の相関があった.

本研究における回収率は16.8%であり,一般的な調査票回収率が本調査のような条件の場合13.3%(萩原ら,2006)とあるように低い結果となった.しかし回答率は低いものの,回答は723施設(有効回答555施設)からあり,地域性や施設の規模,災害に対する施設の機能,経験等において比較的偏りがなく分散していることから,本調査の分析結果は一定の範囲で保証できると考える.なお,回収率についてプレテストより下がっていることから,項目数の多さに加えて,A4判10頁に及ぶ調査項目の量と災害対策への興味や関心が影響したと考えられる.
「自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度」の信頼性と項目数114項目で構成される本尺度のα係数は0.987であり,高い信頼性があった.6つの下位尺度のα係数も0.843~0.971であり,すべて0.8以上であった.α係数は項目数に影響される(Politら,2004/2010, p. 436)ため,0.987という高い値の信頼性の背景には項目数が114であることが関係していると考えられる.
基準関連妥当性では併存的妥当性から検討することとして,病院機能評価,CMP法との検討を行った.病院機能評価の受審の有無と本尺度では病院機能評価を受審している病院の平均値は有意に高く,本尺度の妥当性を示していると考える.CMP法の総得点と本尺度の相関についての検定でも相関係数0.7以上の正の相関があり,仮説が検証された.以上より基準関連妥当性からみた本尺度の妥当性は確保されたと考える.
構成概念妥当性における既知グループ技法は,1)災害拠点病院指定の有無,2)災害への備えの満足度,3)被災経験の有無,4)災害による傷病者の受け入れ経験の有無の4点から検討を行った.すべての仮説が検証され,既知グループ技法からも本尺度の妥当性は確保されたと考える.
114項目という数は,回答する者に数の多さによる圧倒感を感じさせるのではないかと考え,項目削除の検討を実施した.これについては,下位尺度ごとにα係数,項目が削除された場合のα係数,I–T相関と主成分分析から検討した.α係数を用いて,項目を削除したときのα係数の変化から削除に該当する項目を検討した.I–T相関では,本調査において「98.患者と一緒に訓練を行っている」の項目は0.4以下ではあるが,0.2以下の基準からは当てはまらなかった.また,この項目は主成分分析の第1主成分の因子負荷量からみると0.286と0.4以下の項目であった.項目の削除を検討したが,災害を想定して患者を巻き込んだシミュレーションをしておくことの重要性を考慮すると外せない項目であると考えた.この項目を残してもα係数は0.8以上を保てていることからも外す必要はないと考えた.このように本尺度においては項目数を減少させることよりも,Pan American Health Organization(2008)の「Hospital Safety Index」では145項目あるように,具体的に項目が示され,内容がわかりやすく,答えやすいことが必要ではないかと考えた.今回の回答者の平均値は満点456に対し,251.1と低く,現在災害への対策が急務といわれる中,まず丁寧に項目に回答することで具体的に対策に気づき,行動を起こすことが必要と考える.
本尺度はプレテスト・表面妥当性の検討で回答にかかる所要時間では25分程度という結果を得た.この所要時間は回答者への大きな負担ではないと考え,負担の点からも項目数114は受け入れられると考える.
2.災害・防災対策への本尺度の活用方法本研究は,これまでばらばらとしか行われてこなかった日本の病院看護部の災害・防災対策に関する調査を踏まえて,「備え」という視点から病院看護部が取り組むべき災害・防災対策に関する尺度開発を行うことであった.「備え」の定義を調べている際に備えの目的は,機関や組織において災害からの回復(復興・復旧),効果的な対応(援助・反応),予防の強化に使われることであるとされていたが,病院看護部が備えることにより,これらに貢献できるようになるのではないかと考える.
本研究から病院看護部の災害に対する備えとして114の項目があがり,6つの概念「計画」「組織化」「装備」「トレーニング」「予行演習」「評価と改善」で構成されることが支持された.この114の項目には具体的に災害に備える行動を示しており,今後,備えの実施状況を数量的に測定することを可能にする.これは経年的に備えに取り組む病院において備えの進捗状況の変化をみていくことを可能にすることにもなる.備えるためには,人的資源,物的資源の両方をもつ必要があると考える.本尺度はその両面について計画を立て,組織化し,資源をそろえるだけでなく,人的資源にはトレーニングと予行演習を通して,物的資源にも予行演習を通して,資源の量,活用方法等を評価し,改善させることをはかるようになっている.このことにより備えを強化していくことができるのではないかと考える.
2つめは,病院の看護部がこの尺度に回答する際に,回答項目によっては看護部以外の部門に確認しなければならない項目がある.例えば,「5.病院の防災計画を把握している」「6.病院の耐震構造について把握している」などである.看護は患者の安全,生活を守っていくことを担っているため,重要な項目であるが,これらは看護部のみで独自で取り組めるものでない.このような項目に「している」とつけられない場合,病院全体または他部門の取り組みが必要とされるため,看護部が病院管理者や他部門に対して災害への備えに関心を持ってもらうように働きかけることにつながる.また,看護部の取り組みも他部門に示すことができ,院内で状況を共有できるようになる.
3つめに本尺度は,データを積み上げることによって,例えば災害拠点病院と一般病院の備え状況の違いを比較するベンチマークにしていける可能性がある.日本では,災害拠点病院において災害対策は充実してきているところもあるが,施設によって対策の内容や充実度は異なっている状況がある.また,一般病院でも災害対策は行われているが,病院の規模や設置主体によって実施状況は異なっている.病院看護部が自分の病院の得点を認識することは,自分の病院の地域における役割を考え,主体的に災害への備えに取り組むことを喚起させるのではないかと考える.
3.研究の限界と今後の課題本研究において回答者が16.8%と少なかったことは,尺度項目数自体が114あること,妥当性をみるために質問項目が多かったことが影響したと考えられた.さらに回答者の災害や防災に関する興味や関心,問題意識,自施設の防災・災害対策の熟知度,病院本部の考え方,他部署や他職種間との連携が関係することも推察され,今後,本尺度を用いる上でどのようなことが影響するかについて調査をすすめるべきである.ついで,本尺度に関して,検証的因子分析を用い,概念間の関係を検討し,尺度の短縮版を含め,自然災害に対する病院看護部の備えについて探求していく必要がある.
本研究は,作成した尺度に対し,その信頼性と妥当性の検討から尺度を開発させることであった.信頼性については114項目および6下位尺度において高い内的整合性が確認された.妥当性については,基準関連妥当性では病院機能評価,CMP法で,構成概念妥当性では既知グループ技法で仮説が検証された.項目数について課題は残るが,この尺度は自然災害に対する病院看護部の備えに有用性を認めた.
この調査にご回答下さいました研究協力者の皆様,ご指導頂きました兵庫県立大学の山本あい子先生,片田範子先生,神戸女子大学の野並葉子先生,東邦大学の高木廣文先生に御礼申し上げます.
本研究は,平成25年度に兵庫県立大学看護学研究科に提出された博士研究の一部を加筆・修正したものである.本研究の一部を第34回日本看護科学学会学術集会において発表した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.