2016 年 36 巻 p. 34-40
目的:乳がん患者の受診遅延の概念分析を行い,受診遅延の定義を明確にすることを目的とする.
方法:Rogersの概念分析法を用いた.データ収集にはPubMed,MEDLINE,CINAHL,医学中央雑誌のデータベースを使用し,検索用語は「breast cancer」「help seeking behavior」「delay」,ならびに「乳がん」「受診遅延」とした.さらに,患者の語りのデータベースDIPEX Japanを加え,計30件を分析対象とした.
結果:概念の属性として「時間」「意思決定プロセス」の2カテゴリー,先行要件として「個人因子」「医療環境」「社会文化」の3カテゴリー,帰結として「生存率の低下」「治療に伴う医療者・患者への負担」の2カテゴリーを抽出した.分析の結果,乳がん患者の受診遅延を「主観的時間を含む受診に至るまでの意思決定プロセスにおいて客観的時間が延長した結果,治療に伴う医療者・患者負担や生存率等に悪影響を及ぼす現象」と定義した.
結論:乳がん患者の受診遅延の定義は,医療者のみならず患者の視点を含めた看護援助の構築に有用である.