2018 年 38 巻 p. 237-244
目的:2年次後期の小児看護学演習科目における看護過程の展開でジグソー法を取り入れたアクティブラーニングを実施した.その実施後の学生からの評価について示した.
方法:学生76名を4人1組19グループに分けた.4つのアセスメントの視点(疾患・治療,生活,成長・発達,家族)ごとにエキスパートグループでアセスメントを深め,もとのジグソーグループに戻り教え合った.その後,関連図作成,問題明確化,計画立案をした.全体での発表の後にアンケートを配付した.
結果:65名より有効回答があり,「積極的に参加できた」「責任を持って参加できた」という学生が9割以上を占め,ジグソー法の満足度は平均80.5点であった.
結論:ジグソー法を取り入れたことで,学生はグループに対する自身の課題と責任の所在が明確になり,積極的な姿勢で参加ができた.本調査では学生からの満足度は高く,好意的に受け入れられていた.
アクティブラーニングは,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授,学習法の総称」と定義され,日本の大学教育政策において推進されている(中井,2015).武庫川女子大学看護学部2年次後期の演習科目「小児看護学II」における看護過程の展開は学生個人で実施する課題ではなく,グループダイナミクスを活かすために複数の学生で実施するグループワークとしている.しかし,これまでのグループワークの課題として,積極的に参加しない学生の存在や,成績優秀な学生が課題をひとりでしてしまうことなどがあった.
そこで,協調学習のひとつである「ジグソー法」を取り入れることとした.ジグソー法とは,米国の社会心理学者エリオット・アロンソンによって発案された技法であり,テキサス州で人種統合が行われた1970年代の競争的な教室を協同的なものに変えようという意図があった.人種を混合した小さなグループを作って,自分が理解するためには,互いに協力しあわなければならないような状況に子どもたちを置くという技法であった(友野,2015).三宅ら(2011)は,知識構成型ジグソー法として以下のように紹介している.「知識構成型のジグソー授業では,まずその授業で答えを出したい問いを立て,その問いに答えを出すために必要な『部品』を複数,わかれて担当してその内容を理解する.その上で,部品を担当したものが一人ずつ集まってその内容を統合して問いに答えを出す.答えが出たら,それを公表し合って互いに検討し,一人一人自分にとって納得のゆく解を構成する.この部品を担当してその内容を確認するグループ活動を『エキスパート活動』,部品を統合して問いに答えを出す活動を『ジグソー活動』,ジグソー活動の結果を公表し合って検討し自分なりの納得を導きだす活動を『クロストーク活動』と呼ぶ」.緒方(2016)は基礎看護技術の演習「注射の看護技術」でジグソー法を取り入れ,「皮下注射」「筋肉内注射」「静脈内注射」「点滴静脈内注射」の4つに担当を分け,互いに教え合う方法を紹介している.
このように,ジグソー法は1つの課題を3つまたは4つに分けて,それぞれを3人または4人グループの1人ずつが分担して勉強を深める.さらに,勉強を深めたものを持ち寄って互いに自分が勉強したところを教えあい,ジグソーパズルを解くように協力して課題を達成していく方法である(東京大学CoREF,2018;小河,2011).それぞれ自身の担当した部分については自身しか詳しく知らないため,他のメンバーに教える必然性が生じる.他者に説明するには自分自身が十分に理解しておく必要があり,メンバー全員が責任を持って積極的に参加しないと課題を達成することができないという特徴がある.
本稿では,小児看護学演習科目における看護過程の展開で,ジクソー法を取り入れたアクティブラーニングを実践した後の学生からの評価について述べる.
2017年度後期の小児看護学演習科目では15回の授業の中で,第10回から第15回にかけて1回の講義と5回のジグソー法によるグループワークを実施した.ジグソー法についての講義では,「ジグソー法によるグループワークの流れ」図1を配付し,ジグソー法の目的と具体的な行動について説明をした.
ジグソー法によるグループワークの流れ
基本のグループをジグソーグループとした.4人1組の19グループとし,2年次前期の講義科目「小児看護学I」の成績を参考にして,各グループの学力ができるだけ均等になるように配慮した.事例は2つの事例「Aちゃん(生後11か月)診断名:感染性胃腸炎」「B君(10歳)診断名:気管支喘息」を用いて,19グループのうち10グループがAちゃん,9グループがB君を担当した.情報のアセスメントをする際は,丸(2015)の看護過程の展開を参考にして,4つのアセスメントの視点「I.疾患・治療」,「II.生活」,「III.成長・発達」,「IV.家族」で行った.「ジグソー法によるグループワークの流れ」図1に沿って5回のグループワークを実施した.グループワークでは,毎回3~4名の教員が巡回し,学生から質問があれば対応した.
ジグソー法についての講義の後で,ジグソーグループ内の4名の学生はこの4つのアセスメントの視点について学生間で相談して担当を決めた.各グループへ「I.疾患・治療」~「IV.家族」の4種類の【記録用紙1】を配付した.【記録用紙1】はA4サイズで「情報」と「アセスメント」が記入できるようにした.次回のグループワークまでに事例をよく読み,わからない用語などを調べて予習をし,担当する【記録用紙1】の「情報」の欄に記入してから参加するように学生へ説明した.
グループワーク第1回の「エキスパート活動」では,事例別に4つのアセスメントの視点ごとに担当する学生が集まり,エキスパートグループを作った.エキスパートグループ内で担当するアセスメントについて学生間でグループワークをして学習を深め,【記録用紙1】の「アセスメント」の欄をまとめた.
グループワーク第2回の「ジグソー活動」では,元のジグソーグループに戻り,【記録用紙1】を使用して担当したアセスメントについて他のメンバーへ5分間で説明し,質疑応答を行った.4名全員が説明と質疑応答を行った後,不足しているアセスメントはないかを相談して【記録用紙1】の「アセスメント」の欄を追加修正した.その後,4つのアセスメントを元に関連図を作成した.関連図を作成する際には,学生が試行錯誤をしやすいように下書き用紙と付箋を配付した.A3サイズの【記録用紙2】を配付し,関連図と全体像,看護上の問題およびニーズとその目標,計画が記入できるようにした.
グループワーク第3回,4回の「ジグソー活動」では,ひきつづきジグソーグループでの関連図の作成と,患者の看護上の問題とニーズを明確化し,その目標を設定した.計画を立案し,次回の発表に向けて準備を行った.なお,グループワークの第3回では,方向性がずれているグループの軌道修正をするために,「偵察タイム」を実施した.「偵察タイム」ではグループの中で残って説明をする学生1名を決め,残りの3名の学生は,同じ事例の他のグループに偵察に行った.説明者の学生は,偵察に来た学生へ関連図をもとに「看護上の問題とその根拠となる情報,アセスメント」について説明を行った.偵察した学生は,もとのグループにもどり偵察した内容を他のメンバーに説明した.
グループワーク第5回では「クロストーク活動」を実施した.【記録用紙2】(関連図,全体像,看護上の問題と目標,計画)について全ジグソーグループの提出資料をコピーして配付した.発表当日のくじびきで当たった2事例×2グループが全体像,看護上の問題と目標,計画を中心に10分間で発表をし,5分間の質疑応答をして理解を深めた.その後,教員からのコメントと補足説明を行った.
2. 調査内容以下の9項目,①グループワークに積極的に参加できた②グループワークに責任を持って参加できた③グループワークでは予習をして参加できた④グループワークでは看護過程の展開方法が理解できた⑤担当したアセスメントを他のメンバーにわかりやすく説明することができた⑥グループワークはメンバー全員で協力して進めることができた⑦グループワークはおもしろかった⑧グループワークは難しかった⑨今後のグループワークもジグソー法でしたい,について[非常にそう思う][そう思う][そう思わない][全くそう思わない]の4段階のリッカートスケールで回答を求めた.
グループワークの欠席回数,グループワークでの達成度(100点満点で点数を記入),グループワークの満足度(100点満点で点数を記入)について質問した.自由回答でグループワークに対する意見,感想などを質問した.
3. 調査方法ジグソー法についての講義が終わった際に,看護学部の2年生76名に対して調査の依頼書を配付し,調査の目的,方法,倫理的配慮について説明を行った.グループワーク第5回の講義の後にアンケート用紙を配付し,回答を依頼した.その際にも再度調査の目的,方法,倫理的配慮について説明した.調査に同意をした学生はアンケートを匿名で回答し,講義室の出口に設置した回収ボックスへ入れた.回収ボックスは講義室出口に1週間設置した.
4. 分析方法データはMicrosoft Excel 2016を用いて単純集計で分析した.また,自由回答は内容分析により分析した.
5. 調査期間2018年1月
6. 倫理的配慮倫理的配慮として,①アンケートは匿名であり,回答の有無およびアンケートの回答内容については成績とは一切関係がないこと②調査への参加は自由であり,強制ではないこと③アンケートに回答しなくても不利益を被らないこと④授業の時間内に調査の説明やアンケートの回答を依頼することによって授業時間が短くなる可能性があるが,調査の説明やアンケートの回答は可能な限り短時間で行うように配慮すること⑤学会等で発表する可能性があるが,個人は特定されないこと,について教員が学生へ文書と口頭で説明し遵守した.
調査への同意は,アンケートに回答して回収ボックスに入れたことで,同意を得たと判断した.調査は武庫川女子大学倫理審査委員会で承認を受けた後に実施した(承認番号:17-29).
学生76名に質問紙を配付し,66名より回答があり(回収率86.8%),有効回答数は65名であった(有効回答率85.5%).回答が無効であった理由は,質問項目の半数以下しか回答されていなかったためであった.グループワーク5回の中で欠席回数は,「0回」が58名(89.2%),「1回」が6名(9.2%),「2回」が1名(1.5%)であった.
ジグソー法を用いたグループワークに対する学生からの評価では,「グループワークに積極的に参加できた」「グループワークに責任を持って参加できた」「グループワークでは看護過程の展開方法が理解できた」「グループワークはメンバー全員で協力して進めることができた」「今後のグループワークもジグソー法でしたい」の質問に対して,[非常にそう思う]あるいは[そう思う]と回答した学生は9割以上であった(図2).「グループワークでの達成度(100点満点)」は平均78.8点(SD = 12.5),「グループワークの満足度(100点満点)」は平均80.5点(SD = 12.4)であった.
ジグソー法を用いたグループワークに対する学生からの評価(n = 65,グラフの数値は人数を示す)
ジグソー法を用いたグループワークに対する意見(自由回答)は43件あり,9つのカテゴリーに分類された.これらのカテゴリーを意見の多かった順に示すと肯定的な意見は『他者の意見を聞けることが良かった(16件)』『分担があるため責任が持てて積極的に参加できた(8件)』『発表を聞くことで理解できた(4件)』『ジグソー法は良かった(3件)』『意見が言いやすかった(2件)』『他者に頼りやすかった(1件)』であった.否定的な意見は,『欠席者,非協力的な学生がいると困る(7件)』『一人でやってから統合させるほうがよい(1件)』『ジグソー法でやると他のグループと同じものなってしまう(1件)』であった(表1).
カテゴリー | 意見,感想 |
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他者の意見を聞けることが良かった(16件) | グループワークでは自分では思いつかない考えや意見を聞けて面白かった. グループで意見などたくさん出たのでグループワークはスムーズに進めることができた.自分ひとりではわからないこと,知らなかったことなどグループだと理解することができたので良かった. 個人ワークで関連図を書くこともすごく勉強になると思うが,グループワークを行うことで難しい部分も一緒に考えることができ,よりよいものを作ることができた.他 |
分担があるため責任が持てて積極的に参加できた(8件) | ジグソー法ではグループ内で自分が責任を持って調べて他人任せにならないところが良いと思った. 今後もこの方法で行うと一人一人の責任感も強くなり,グループワークにももっと積極的に参加できるようになると感じた. 小児看護のグループワークを行ってみて,本当に知識を持つということや分からないことを調べてこと学ぶは大事だということに気付いた.他 |
発表を聞くことで理解できた(4件) | 事例が違うグループの発表を聞けて看護過程の展開の仕方を学ぶことができて良かった. 同じ事例でも違うケアの話が聞けたり,違う事例の話も聞けるので良いと思った. 同じ事例なのに関連図や目標がグループごとに異なっていたので,勉強になったし面白かった.他 |
ジグソー法は良かった(3件) | ジグソー法は良かった. ジグソー法は他の科目で行わなかった方法だったため,大変新鮮だった. 今までやったことのない方法だったので面白いグループワークだった. |
意見が言いやすかった(2件) | 4人という少人数で行うことにより発言が得意な人,苦手な人も関係なく全員が意見を言える場になるので,今後もこのグループワークは授業に取り入れてほしい. 自分のグループでは,4人という人数がちょうどよくて積極的に意見を述べることができた. |
他者に頼りやすかった(1件) | グループワークよりも一人でやることが好きでどうかなと思っていたが(人に頼ることが苦手),グループ一人ずつの役割が分担されているのでメンバーに頼ることができた. |
欠席者,非協力的な学生がいると困る(7件) | グループワークだったので全員が話し合わなければいけないときに全員そろっていないと大変だと感じた. 今回のグループワークは欠席者がいると非常にグループワークが難しくなり大変だった. 誰かが自分の分担をしてきていないとすごく困った.非協力的な人にも自分たちで注意しなくてはならないし,参加して取り組んでいる人とそうでない人の差が大きく,全員で積極的に参加できればもっと良いものになったと思う.他 |
一人でやってから統合させるほうがよい(1件) | 関連図をグループ全員で仕上げていくのは難しかったので,事前にひとりひとりが作成したものを統合していくやり方のほうが個人的にはやりやすかったと思った. |
ジグソー法でやると他のグループと同じものなってしまう(1件) | ジグソー法ですると結局他のグループと同じような内容になってしまうのではと思った.せっかくコピーしてみんなの完成したものを見れ,発表もしているので違ったものが見たかった. |
「グループワークに積極的に参加できた」「グループワークに責任を持って参加できた」という学生が9割以上であった.これまでも小児患者の事例を用いた看護過程の展開についてグループワークを実施していたが,課題として積極的に参加しない学生がいることがあった.また,一部の成績優秀な学生が課題をひとりでしてしまう,または任せられてしまうことなどもあった.千葉ら(2010)の研究では,グループワークで相互互恵的にタスク(分担された課題)を割り振られることによって,コミュニケーションの機会が増え,グループワークはポジティブな雰囲気となって活性化されることが報告されている.グループワークにジグソー法を用いたことにより,分担された課題と責任の所在が明確になったことで,各自がやらなければ先に進まない状況が作られ,結果として積極的な姿勢で参加ができたと考える.
「担当したアセスメントを他のメンバーにわかりやすく説明することができた」という学生は9割程度あった.ジグソー法は,エキスパート活動で担当したアセスメントの理解を深め,さらにジグソー活動でジグソーグループのメンバーに教え合うことができなければ成立しない.ジグソー法を用いたグループワークに対する意見,感想では,“小児看護のグループワークを行ってみて,本当に知識を持つということや分からないことを調べて学ぶことは大事だということに気付いた”という意見もみられた.他者に説明するためにはしっかりと理解しておく必要があるため,学習を深め,さらには記憶を定着させるためにもジグソー法は有効であろう.
2. ジグソー法を用いたグループワークの達成度,満足度,欠席回数「グループワークでの達成度」や「グループワークの満足度」の平均得点はともに80点程度あり,9割以上の学生が「今後のグループワークもジグソー法でしたい」と回答していた.ベネッセ教育総合研究所(2018)による大学生4,948名を対象とした「第3回 大学生の学習・生活実態調査報告書」の大学生の大学教育観では,「教員が知識・技術を教える講義形式の授業が多いほうがよい」と回答した学生は78.7%であり,「学生が自分で調べて発表する演習形式の授業が多いほうがよい」と回答した学生は21.3%であったことから,現代の大半の大学生は座学形式の講義を好むことが報告されていた.一方で,今回のジグソー法は学生らで責任を持って教えあい,他者に頼り頼られることが必要不可欠であるが,満足度が高いことからも学生からは学習方法のひとつとして好意的に受け入れられていたと考える.
グループワークの時期は12月から1月にかけてであり,感冒やインフルエンザなどの感染症が流行しやすい時期であった.グループワーク5回の中で欠席回数が「1回」は6名(9.2%),「2回」は1名(1.5%)であった.ジグソー法を用いたグループワークに対する否定的な意見,感想では,“欠席者がいると非常にグループワークが難しくなり大変”“全員がそろっていないと大変”“非協力的な人たちに自分たちで注意しなくてはならない”といった意見もいくつかみられた.学生が病気によってやむを得ず欠席する可能性も考慮していく必要がある.例えばグループワーク第2回で担当したアセスメントを他のメンバーに説明する回で欠席者がいた場合は,他グループの【記録用紙1】をコピーさせてもらい,説明を聞かせてもらうなどの対策が必要であろう.
3. ジグソー法を用いたグループワークに対する意見,感想学生からの肯定的な意見,感想では,“意見が言いやすかった”“他者に頼りやすかった”という意見がみられた.最近の学生の特徴として親しくないクラスメイトに意見を言うことや頼ることが苦手な学生もいる中で,お互いに頼り頼られることで,コミュニケーションが深まっている状況がみられた.1970年代にエリオット・アロンソンは,人種統合が行われた米国で競争的な教室を協同的なものに変えようという意図によりジグソー法を考案した(友野,2015).現代においても,学力の高い学生と高くない学生,さらに発言力の強い学生と強くない学生がいる.そのような中で互いに責任感を持ち,メンバーに頼り,時には頼りにされるという学習の機会は,今後の臨地実習や看護師として勤務をする際のメンバーシップにも良い影響を与えると考える.
学生からの否定的な意見としては“ジグソー法ですると結局他のグループと同じような内容になってしまうのではと思った”がみられた.今回実施したジグソー法では,エキスパートグループで同じアセスメントの担当者同士で集まってアセスメントを考えてからジグソーグループに戻り,説明をした.さらに,方向性がずれているグループの軌道修正をするために「偵察タイム」を実施した.そのため,グループワークにジグソー法を用いると,グループ内のメンバーだけで完結するグループワークの方法と比較して,成果物の完成度にグループ間の差が生じにくくなる.これはジグソー法を用いたグループワークの特長であり,この点についてはジグソー法の講義や,「偵察タイム」の際に学生へ説明しておく必要があった.
4. 実践への示唆と今後の課題今回実践したジグソー法のように,3つまたは4つに担当を分けて最終的にグループで1つのものを作り上げていく方法であれば,小児看護学や看護過程の展開に限らず,多人数での授業や院内研修などで応用可能である.ジグソーグループでワークを進める前にエキスパートグループで話し合うことによって,成果物の完成度にグループ間での差が生じにくくなり,全体的な完成度を高めることができるという利点もある.
さらに,初年次教育でのスタディスキルを学ぶためのグループワークや,緒方(2016)が紹介しているような看護技術の演習科目において学生同士で自己学習して教え合うなど,調べる力,話し合う力,説明する力など養うことにも効果的であろう.
今回のグループメンバーは1グループ4名で実施した.協同学習では2~6名のグループが推奨されている(中井,2015).ジグソー法による注射の技術演習を紹介した緒方(2016)も4名のグループを推奨しており,6名よりも4名のほうが演習時間内で1人の学生が使える時間が確保できるためと述べている.今回の実施でも多人数となると多様な意見が出る反面,個々の責任感や参加度が低下するため,4名グループが適当であった.今回の学生数は76名と4名で割り切れる数字であったが,割り切れない学生数では3名とすると担当できないアセスメントが出てくるため5名グループとし,4つのアセスメントの中でも特に重要な「I.疾患と治療」の担当者を2名とするなどして対応する必要がある.また,学生が欠席した時の対応や,行きづまった場合などの問題に対応できるよう準備をしておくことが必要である.回を重ねるごとに学習効果が高くなるよう,評価修正をしていくことが今後の課題である.
看護過程のグループワークにジグソー法を取り入れたことで,学生は自身の課題と責任の所在が明確になり,9割以上の学生が積極的な姿勢で参加ができた.学生からの満足度や達成度の平均得点はともに100点満点中80点程度と高く,学習方法のひとつとして好意的に受け入れられていた.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YFは研究デザイン,データ収集と分析,論文の作成;MKはデータ収集と分析,論文作成への助言;SUはデータ収集と分析,論文作成への助言;CFはデータ収集と分析,論文作成への助言;全ての著者が最終原稿を確認した.