日本看護科学会誌
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資料
回復期リハビリテーション病棟看護師の多職種連携実践力に影響する要因
吉江 由加里横山 孝枝加藤 真由美
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2019 年 39 巻 p. 157-164

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Abstract

目的:回復期リハビリテーション病棟(以下,リハ病棟)に勤務する看護師の多職種連携実践力に影響する要因を明らかにすることである.

方法:リハ病棟看護師245名に,インタープロフェッショナルワーク実践能力評価尺度(CICS29)を用いて質問紙調査を実施した.単変量解析で有意差がみられた変数を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った.

結果:CICS29に影響する要因は,「連携に関する現任教育の受講(Exp = 10.591)」,「療法士がチームリーダー(Exp = 19.455)」,「コミュニケーション能力(Exp = 1.157)」,「バックアップ能力(Exp = 1.180)」であった.

結論:多職種連携実践力を高めるためには,連携に関する現任教育および療法士をチームリーダーとするチームの構築,多職種の理解を深めコミュニケーション能力およびバックアップ能力を高めることの必要性が示唆された.

Translated Abstract

Purpose: To identify the factors that are affected with the ability of nurses working in a convalescent rehabilitation ward (hereafter the “rehab ward”) to collaborate with an Interdisciplinary team.

Method: A questionnaire survey was administered to 245 nurses working in rehab wards in the Hokuriku area by using the Readiness for Chiba Interprofessional Competency Scale (CICS29). Binomial logistic regression analysis was performed by using the variables that had shown significant differences in a univariate analysis as independent variables.

Results: The following variables were extracted as factors affected with the ability of nurses working in rehab wards to collaborate with an Interdisciplinary team: “in-service training programs to encourage collaboration”, “appointment of a therapist as a team leader”, “communication ability”, and “ability to support co-workers”.

Conclusions: This research is to ensure that nurses working in the rehabilitation ward improve their ability to work with interdisciplinary teams, it suggests to build an in-service education program on collaboration, build a team with a therapist as a leader, in addition, improve communication skills and backup skills by deepening the understanding of other job types.

Ⅰ. 緒言

回復期リハビリテーション病棟(以下,リハ病棟)においては,脳血管疾患または大腿骨頚部骨折等の患者に対して,決められた入院期間のなかで日常生活動作(activities of daily living; ADL)の向上と家庭復帰を目指している.リハ病棟の患者は,急性期後の残存する障害に対して機能回復訓練を行っているが,一定の時期になると訓練をしても障害前の状態にまで回復できないことを認識し始める.その過程で混乱や焦りが生じることから,回復の限界を自己判断し訓練に対して意欲を低下させる,もしくは独りで訓練し転倒に至ったり,抑うつ状態に陥ったりすることがある.また,重度の後遺症が残存する患者を抱える家族は,患者の状態に対する不安や将来の生活に対する不安などから介護に対する負担感やストレスが増大し,それらが原因で在宅復帰が困難となる場合もある(井上ら,2011).そこで,多職種がそれぞれの専門性を発揮し,身体機能の改善に加え,精神的・社会的側面の課題を解決するためには効果的な連携の探求が求められる.

多職種チームの類型のひとつにInterdisciplinary Model(以下,IDM)がある.このモデルは,ケアの継続性とより包括的なアプローチを確保するために,チームメンバーが連携しながら目標設定,治療,意思決定を行い,問題解決を行うチーム形態である(Judi & Nancy, 2012).リハ病棟における多職種チームも患者の複合的な課題に対して,ADLに焦点を当て,患者の日常生活の場である病棟で,医師や看護師だけではなく,リハ病棟専従の理学療法士,作業療法士,言語聴覚士(以下,療法士)等の多職種がチームをつくり,連携しながらアプローチを行っていることからIDMに該当するとされている(Chin, 1998).先行研究において,リハ病棟における看護師と多職種との連携の現状について,コミュニケーションの取りにくさや専門性の違い等による職種間の情報共有の相違(宮原ら,2014),情報共有の不十分さ(門家,2018)といった問題が報告されている.また,他職種間との葛藤や軋轢,対立が生じたり(酒井,2003伊勢,2007),多くの療法士と連携する場で看護師としての役割を矮小化して捉えてしまったりする傾向がある(荒木・上田,2012)等の報告もある.

有効なチームモデルとして,チームの課題達成には「チームの構造」,「チームアプローチ」「チーム・コンピテンシー」が影響を与えていることが示唆されている(Canon-Bowers et al., 1995).チームの構造とは,チームアプローチを行う上での地位や役割,職種間の関係であり,チームアプローチとは,課題構成や課題達成の質であり,チーム・コンピテンシーは,チームの目標を達成し,成果をあげるためのチームワークに対する知識・技術・態度のことである(Canon-Bowers et al., 1995).しかし,これらの有効なチームの要件に関して,リハ病棟のような複合的な課題をもつチームにおける現状を明らかにした報告は見当たらない.本研究の目的は,リハ病棟看護師の多職種連携実践力に対して,有効なチームモデルを基に「チーム構造」「チームアプローチ」および「チーム・コンピテンシー」との影響を明らかにすることである.

Ⅱ. 概念枠組み

1. 概念枠組み

本研究の概念枠組みは,多職種連携やチームモデルの概念に関する文献を基に構成した.リハ病棟看護師の多職種との連携実践力を従属変数として,「基本属性」(小味ら,2010),「チーム構造」「チームアプローチ」「チーム・コンピテンシー」(Canon-Bowers et al., 1995)の各変数を独立変数として設定した.

2. 用語の操作的定義

連携とは,「同じ目的を持つ者が互いに連絡をとり,協力をし合って物事を行うこと」(新村,2018)である.栗原(2009)は,回復期リハにおける連携を「多職種のチームアプローチが前提となる.それぞれの職種は専門的視点で評価し,意思疎通を大切に情報交換を図り,他職種の専門性を尊重しつつ,それぞれの専門職がチーム全体の目標に到達するようにかかわる」と述べている.そこで,リハ病棟看護師の多職種との連携実践力とは,看護師としての専門性を発揮し,チーム全体の目標達成に向けて役割を遂行しながら多職種と連携する能力とした.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究対象

一般社団法人リハ病棟協会ホームページにおいて公開されている正会員として加入している病院の中から,北陸エリア3県の全病院(29ヶ所)に協力依頼を行った.同意の得られた病院は18ヶ所(62.1%)であり,その病院のリハ病棟に勤務するスタッフ看護師(以下,看護師)および看護主任・副看護師長(以下,副師長)を対象とした.

2. データ収集方法

本研究は横断調査であり,無記名自記式質問紙法を用いた.手順は,対象候補病院の看護部長に研究説明書・質問紙・同意書を郵送し,研究協力を依頼した.同意のあった病院に,対象者用の研究説明書・質問紙および返信用封筒を送付し,看護師長から対象者に配布を依頼し,郵送法により個別に回収した.

3. 調査内容

1) 多職種との連携実践力

多職種との連携実践力は,「インタープロフェッショナルワーク実践能力評価尺度(Chiba Interprofessional Competency Scale: CICS29)」を使用した.CICS29は,「プロフェッョナルとしての態度・信念」「チーム運営のスキル」「チームの目標達成のための行動」「患者を尊重した治療・ケアの提供」「チームの凝集性を高める態度」「専門職としての役割遂行」の6つの下位概念から成り,計29項目で構成される.回答方法は5件法で,得点が高いほど連携実践力が高いことを示す.尺度の信頼性と妥当性は検証されている(Sakai et al., 2017).

2) 基本属性

基本属性は,性別,職位,看護師経験年数,リハ病棟経験年数,専門・認定資格の有無,連携に関する現任教育(院内外等,研修内容は問わない)受講の有無の6項目とした.

3) チーム構造

チーム構造は,多職種チームにおける意思決定に重要な役割を果たすチームリーダーの存在,チームリーダーの変更,チームリーダーの職種の3項目とした.

4) チームアプローチ

チームアプローチは,情報共有のための共通ツールの活用,患者目標の設定者,また情報共有の機会として設定されているカンファレンスにおける看護師の役割,さらにカンファレンス以外に行われる情報交換の機会の4項目とした.

5) チーム・コンピテンシー

チーム・コンピテンシーは,「チームワーク能力測定尺度」(相川ら,2012)を使用した.本尺度は「チーム志向性能力」「モニタリング能力」「コミュニケーション能力」「バックアップ能力」「リーダーシップ能力」について測定し,信頼性・妥当性は確認されている(相川ら,2012).また,チームの目標達成に向けた管理能力として,チームの理念・目標の認識と行動に関する項目を設定した.

なお,これら尺度の使用については尺度開発者からの承諾を得た.

4. 分析方法

全変数の記述統計量を算出した後,Kolmogorov-Smirnov検定で正規性を確認し非正規であったためCICS29の中央値を基準に2群(中央値以上を高得点群,中央値未満を低得点群)に分けた.CICS29を従属変数,基本属性,チーム構造,チームアプローチ,チーム・コンピテンシーの各変数を独立変数として,χ2検定もしくはFisherの正確確率検定,Mann-WhitneyのU検定を行った.最終的に,CICS29を従属変数(高得点群=1,低得点群=0),単変量解析で有意な差がみられた変数を独立変数とし,二項ロジスティック回帰分析(変数減少法:Wald)を行った.なお,独立変数に関して,連携に関する現任教育等の名義尺度についてはダミー変数(あり=1,なし=0)を,モニタリング能力等の順序尺度については実数値を投入した.統計ソフトは,IBM SPSS Statistics ver. 24 for Windowsを使用し,有意水準は5%未満とした.

5. 倫理的配慮

本研究は,金沢大学医学倫理審査委員会の承認(審査番号:735-1)を得て実施した.対象者には,研究の目的,方法,予測される利益・不利益とそれらの予防と対応,成果の公表,研究の参加は任意であることの保障や個人情報保護などを文書にて説明した.

Ⅳ. 結果

配布は245名であり,回収は102部(回収率41.6%)であった.CICS29の項目に欠損があったものを除外し,95部(有効回答率93.1%)を分析対象とした.

1. 各変数における連携実践力の比較(表1

1) 基本属性

基本属性では,職位および連携に関する現任教育の受講歴で有意差があった.職位において「看護師」と比べ「副師長」が高得点群に有意に多く,現任教育受講歴においては「なし」と比べ「あり」が高得点群に有意に多かった.

表1 基本属性,チーム構造,チームアプローチ,チーム・コンピテンシーにおける連携実践力の比較
項目 全体(N = 95) CICS29高得点群※3n = 48) CICS29低得点群※4n = 47) p
n % n % n %
〈基本属性〉
性別 男性 10 10.5 4 8.3 6 12.8 .532a)
女性 85 89.5 44 91.7 41 87.2
職位 看護師 71 75.5 31 64.6 40 87.0 .012b)
看護主任・副看護師長 23 24.5 17 35.4 6 13.0
看護師経験年数※1 平均年数未満 50 53.2 21 43.8 29 63.0 .061b)
平均年数以上 44 46.8 27 56.2 17 37.0
回復期リハ病棟経験年数※2 平均年数未満 58 61.1 28 58.3 30 63.8 .583b)
平均年数以上 37 38.9 20 41.7 17 36.2
専門・認定資格 あり 9 9.5 9 18.8 0 0 NA
なし 86 90.5 39 81.2 47 100
連携に関する現任教育受講歴 あり 15 16.1 12 25.0 3 6.7 .016b)
なし 78 83.9 36 75.0 42 93.3
〈チーム構造〉
チームリーダーの存在 あり 84 88.4 46 95.8 38 80.9 .023b)
なし 11 11.6 2 4.2 9 19.1
チームリーダーの固定 あり 33 40.2 18 40.0 15 40.5 .960b)
なし 49 59.8 27 60.0 22 59.5
チームリーダーの職種
 医師 はい 19 23.2 13 28.9 6 16.2 .176b)
いいえ 63 76.8 32 71.1 31 83.8
 看護師 はい 73 89.0 41 91.1 32 86.5 .725a)
いいえ 9 11.0 4 8.9 5 13.5
 療法士 はい 17 20.7 13 28.9 4 10.8 .044b)
いいえ 65 79.3 32 71.1 33 89.2
 社会福祉士 はい 5 6.1 4 8.9 1 2.7 .372a)
いいえ 77 93.9 41 91.1 36 97.3
〈チームアプローチ〉
カンファレンスでの看護師の役割
 一般状態報告 はい 75 78.9 39 81.3 36 76.6 .578b)
いいえ 20 21.1 9 18.7 11 23.4
 ADL報告 はい 80 84.2 39 81.3 41 87.2 .424b)
いいえ 15 15.8 9 18.7 6 12.8
 心理状態報告 はい 65 68.4 36 75.0 29 61.7 .163b)
いいえ 30 31.6 12 25.0 18 38.3
 患者・家族の希望報告 はい 83 87.4 43 89.6 40 85.1 .511b)
いいえ 12 12.6 5 10.4 7 14.9
 ゴールの設定 はい 36 37.9 24 50.0 12 25.5 .014b)
いいえ 59 62.1 24 50.0 35 74.5
 カンファレンスの進行 はい 31 32.6 16 33.3 15 31.9 .883b)
いいえ 64 67.4 32 66.7 32 68.1
 職種間の調整 はい 50 52.6 27 56.3 23 48.9 .475b)
いいえ 45 47.4 21 43.8 24 51.1
患者の目標設定者
 医師 はい 64 67.4 37 77.1 27 57.4 .041b)
いいえ 31 32.6 11 22.9 20 42.6
 看護師 はい 72 75.8 41 85.5 31 66.0 .027b)
いいえ 23 24.2 7 14.5 16 34.0
 療法士 はい 79 83.2 42 87.5 37 78.7 .253b)
いいえ 16 16.8 6 12.5 10 21.3
 社会福祉士 はい 34 35.8 20 41.7 14 29.8 .227b)
いいえ 61 64.2 28 58.3 33 70.2
カンファレンス以外の情報交換 している 93 97.9 48 100 45 95.7 NA
していない 2 2.1 0 0 2 4.3
共通ツールの使用 している 30 33.3 15 33.3 15 33.3 1.000b)
していない 60 66.7 30 66.7 30 66.7
〈チーム・コンピテンシー〉
チーム理念の認識 している 86 91.5 45 93.8 41 89.1 .481a)
していない 8 8.5 3 6.2 5 10.9
チーム理念を意識した行動 している 49 84.5 32 91.4 17 73.9 .135a)
していない 9 15.5 3 8.6 6 26.1
チームワーク能力 (下位尺度) n 中央値(最少値-最大値) 中央値(最少値-最大値) p
チーム志向能力 93 52.0(37–65) 50.0(41–59) .225c)
モニタリング能力 95 57.5(40–72) 48.0(36–64) .000
コミュニケーション能力 94 64.5(48–78) 61.0(45–71) .000
バックアップ能力 94 74.5(54–89) 60.0(45–82) .000
リーダーシップ能力 74 67.5(39–84) 52.0(19–70) .000

CICS29:Chiba Interprofessional Competency Scale29

a)Fisherの正確確率検定 b)χ2検定 c)Mann-WhitneyのU検定

NA:not applicable

1看護師平均経験年数:16.3 ± 10.0年

2回復期リハ病棟平均経験年数:4.0 ± 3.5年

3CICS29高得点群(CICS29中央値以上)

4CICS29低得点群(CICS29中央値未満)

※無回答の項目がある項目については回答した者に対する割合(%)を示した.

2) チーム構造

チーム構造では,チームリーダーの存在の有無およびチームリーダーの職種:療法士で有意差があった.チームリーダーの存在の有無において「なし」と比べ「あり」が高得点群に有意に多く,チームリーダーの職種:療法士においては「いいえ」と比べ「はい」が高得点群に有意に多かった.チームリーダーの職種:看護師において「はい」と回答した人が高得点群で91.1%いたが,「いいえ」と比べ有意差はなかった.

3) チームアプローチ

チームアプローチでは,カンファレンスでの看護師の役割:ゴールの設定および患者の目標設定者:医師,看護師で有意差があった.カンファレンスでの看護師の役割:ゴールの設定において「いいえ」と比べ「はい」が高得点群に有意に多く,患者の目標設定者:医師においては「いいえ」と比べ「はい」が,看護師においても「いいえ」と比べ「はい」が高得点群に有意に多かった.

4) チーム・コンピテンシー

チーム・コンピテンシーでは,「モニタリング能力」,「コミュニケーション能力」,「バックアップ能力」,「リーダーシップ能力」の各総得点が,低得点群と比べ高得点群の方が有意に高かった.

2. 多職種連携実践力に影響する要因(表2

多職種連携実践力に影響する要因は,連携に関する現任教育(Exp = 10.591,95%信頼区間(CI) = 1.170~95.866),チームリーダーの職種:療法士(Exp = 19.455, 95%CI = 1.341~282.309),コミュニケーション能力(Exp = 1.157, 95%CI = 1.002~1.335),バックアップ能力(Exp = 1.180, 95%CI = 1.071~1.300)であった.

表2 CICS29を従属変数とした二項多重ロジスティック分析の結果
項目 CICS29 95%信頼区間
偏回帰係数 オッズ比 下限 上限 p
基本属性 連携に関する現任教育 2.360 10.591 1.170 95.866 .036
チーム構造 リーダーの職種:療法士 2.968 19.455 1.341 282.309 .030
チーム・コンピテンシー コミュニケーション能力 .145 1.157 1.002 1.335 .046
バックアップ能力 .165 1.180 1.071 1.300 .001
モデルχ2検定 .000
判別的中率 79.0%
Hosmer-Lemeshowの検定 .591

CICS29:Chiba Interprofessional Competency Scale29

二項ロジスティック回帰分析(変数減少法:Wald)

変数間の相関係数の絶対値は0.9未満であり,多重共線性はなかった(対馬,2010).また,モデル全体の有意性は,モデルχ2検定p = .000,モデルの適合度は,Hosmer-Lemeshow検定の結果p = .591,判別的中率は79.0%であった.

Ⅴ. 考察

1. 各変数における連携実践力の比較について

基本属性の項目において,職位では副師長が,現任教育受講の有無では受講歴ありの看護師が連携実践力高得点群に多いことが分かった.看護管理者に求められる能力の1つとして,「対人的能力」がある(日本看護協会,2012).この能力は,他人と協調して効果的に仕事ができるチームワークをとる能力である.副師長は看護管理業務を行うなかで,この対人的能力,調整力および交渉力といった連携に必要な能力を培っているのではないかと推察する.

チーム構造の項目においては,チームリーダーの存在の有無でチームリーダーありが,チームリーダー職種で療法士であると回答した看護師が連携実践力高得点群に多いことが分かった.多職種チームの場合,「チーム内に意思決定の階層を持たない場合もあるが,チームの連携を維持・発展させるためにはリーダーは必要であり,課題によってリーダーが変更することがある」と言われている(菊池,2002).今回の結果で,リーダーの固定の有無で有意差はなかったが,リーダーはメンバーとの情報共有を行い,課題解決にむけてリーダーシップを発揮することで連携実践力を高めていると考える.中西(2016)は「目標達成のためにはそれを牽引するリーダーの必要性を示唆しているが,その役割を担うのは患者の身近に長くいて患者の生活全体を把握しやすい存在の看護師が最適である」と述べている.本研究では,看護師がリーダーであると回答したのは高得点群で91.1%であったが,有意差はなかった.その理由として,平均リハ病棟経験年数4.0年という経験の浅さから,多職種と連携するための調整力・交渉力が十分備わっていないことで,多職種チームでのリーダーとしての役割が十分に果たせていないのではないかと考える.

チームアプローチの項目において,カンファレンスでの看護師の役割でゴールの設定であると回答した看護師が連携実践力高得点群に多いことが分かった.松本・片山(2017)は,リハ病棟に従事する看護師のコンピテンシーとして「在宅復帰への準備を整える」「患者・家族の利益のために多職種と協働する」等があると報告している.看護師は,このコンピテンシーに基づき患者の退院後の不安がなくなるように退院計画を立てるとともに,患者が前向きに取り組めるように支援するためにチームを機能させる行動の必要性を示唆している.今回の結果から,リハ病棟看護師はカンファレンスにおいて退院後の患者の現実に即した実行可能な援助を計画し,それがチーム内で合意が得られるようチーム内の調整を行うというコンピテンシーに基づいた行動を実践していると推察する.

チーム・コンピテンシーの項目において,複合的な課題解決には,チームワークに関するコンピテンシーや目標管理に関するコンピテンシーが重要となってくる.今回の結果から,チームワーク能力のうちモニタリング能力,コミュニケーション能力,バックアップ能力,リーダーシップ能力の得点が,連携実践力高得点群で有意に高いことが分かった.しかし,チーム志向能力は有意差がなかった.チーム志向能力は「チーム内の良好な人間関係を維持し,目標達成を目指す意気込みや態度」(山口,2007)であり,チームの理念の認識・行動とともに動機付け要因と考える.山口(2007)は「チーム・コンピテンシーは動機付け要因のみでは強化につながらず,課題を遂行するためのプロセスが必要である」と述べていることから,チーム志向能力およびチームの理念の認識と行動は連携実践力に関係がなかったと考える.

2. 連携実践力に影響する要因について

連携実践力には,連携に関する現任教育の受講歴の有無,療法士がチームリーダー,コミュニケーション能力,バックアップ能力が影響していることが明らかとなった.

連携に関する現任教育について,リハ病棟においてチームアプローチを成熟化するためにはチームの組織化およびチームの進化のための教育・研修が必要であることが示唆されている(小林ら,2008).専門職同士の相互関係を基盤とした実践活動として専門職連携実践(Interprofessional Work; IPW)があるが,このIPWの実現にむけて,同じ場所で相互理解し,相互作用しながら学習し合う方法を用いるのが専門職連携教育(Interprofessional Education; IPE)である.IPEは基礎教育を中心に取り組まれているが,本研究の対象者の平均看護師経験年数は16.3年であり,IPE導入前に基礎教育を修了した看護師が多いことが考えられる.そのため,連携実践力を高めリハ病棟でIPWを培っていくためには連携に関する現任教育プログラムの構築が必要であると考える.

療法士がチームリーダーについて,本研究では,療法士をチームリーダーと捉えていたのは全体で20.7%であったが,低得点群(10.8%)と比べ高得点群(28.9%)が有意に多かった.IDMのメンバーの役割にはケア提供者,患者支援者,ケアのコーディネータがある(Chin, 1998).リハ病棟では,ADLを最大限に向上させ早期に社会復帰できるよう,機能改善を中心的課題として支援を行っている.その機能改善に向けて集中的なケアを提供している療法士をリーダーとして認識しているのではないかと推察する.また療法士を対象とした現任教育では,多職種の知識を取り入れたり,職能間の交流を通して相互に信頼関係を築けるような教育が行われている(西原,2009).この現任教育を受講した療法士は,リーダーの役割を理解し,課題解決にむけてリーダーシップを発揮していることで,リーダーとして認識されているのではないかと考える.

チーム・コンピテンシーの中で,コミュニケーション能力およびバックアップ能力が連携実践力に影響していた.コミュニケーション能力は「メンバーとの関係を形成し維持するための基本となる能力であり,他のチームワーク能力を結びつける基盤となる能力」(山口,2007)である.IDMには「患者のニーズに焦点をあて,オープンな会話と情報交換を行うことで協調的な議論が起こり,チームとして効果的に機能する」といった利点がある(Judi & Nancy, 2012).また,リハ病棟には療法士が専従で配置されており,一般病棟と比べ療法士等の他職種とタイムリーにディスカッションすることが容易である(藤田・習田,2016)ことから,コミュニケーション能力が連携実践力に影響しているという結果につながったと考える.しかし,チーム形成に必要なコミュニケーションの絶対的不足が原因で,リハチームとの連携に葛藤があるという報告もある(酒井,2003).そこで,リハ病棟看護師は,チームの課題達成のためには,職種間の競争心や垣根を越えて交流を図り,コミュニケーション能力を高めていく必要があると考える.バックアップ能力は「他のメンバーの課題遂行を支援したり,替わりに遂行したりする行動の要素」(山口,2007)である.大崎ら(2018)は,リハ病棟のIPWに求められるものとして「自分の役割を果たした後に他職種と連携して発展させる」「お互いの不足を埋めながら他職種の理解を深め尊重することで質の高い援助を生み出す」ことを示唆している.今回の結果から,職種をこえて連携するためには,自身の役割を発揮したうえで,他の職種に興味を持ち,互いに理解するよう努め,お互いの不足を埋めながら職種間のつながりを強めていく,バックアップ能力を高めることが必要であると考える.

本研究は,北陸3県のリハ病棟看護師を対象としていること,回収率が4割程度であり,一般化するには限界があるといえる.

Ⅵ. 結論

リハ病棟看護師の多職種との連携実践力には,連携に関する現任教育,療法士がチームリーダー,コミュニケーション能力,バックアップ能力が影響していることが明らかとなった.連携実践力を高めるためには,連携に関する現任教育および療法士をチームリーダーとするチームの構築,日々の実践の場で,コミュニケーション能力およびバックアップ能力を高める支援が必要であることが示唆された.

謝辞:本研究にご協力くださいました看護師の皆様,および対象施設の看護管理者の皆様に心より感謝いたします.なお本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金助成金(基盤研究(C):課題番号16K12016)の助成を受けて実施した研究成果の一部である.

利益相反:利益相反は該当しない.

著者資格:YYは,研究の着想から原稿作成まで研究全体に渡って貢献,TYは,研究デザイン,分析解釈に貢献,MKは,研究プロセス全体への助言および原稿への示唆に貢献.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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