日本看護科学会誌
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原著
看護学生におけるケアの倫理的行動尺度の開発
吉岡 詠美金子 さゆり
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2019 年 39 巻 p. 316-325

詳細
Abstract

目的:看護学生が看護学実習で経験するケアの倫理的行動について評価できる看護学生版ケアの倫理的行動尺度を開発し,その尺度の信頼性と妥当性を検証する.

方法:全国の看護学生694名に自記式質問紙調査を実施した.因子分析を行い,構成概念妥当性はAMOSでモデルの適合度を確認,併存妥当性は「看護の専門職的自律性測定尺度」を用いて確認した.信頼性はCronbachのα係数で内的整合性を確認,再テストで級内相関を確認した.

結果:因子分析の結果,5因子29項目が抽出された.モデルの適合度は,GFI = .896,AGFI = .883,CFI = .977,RMSEA = .034であり,「看護の専門職的自律性測定尺度」との相関は,r = .453であった.信頼性は,29項目全体で,α = .932であり,5因子それぞれは,α = .837~.887であった.級内相関は,ICC = .351~.904であった.

結論:看護学生版ケアの倫理的行動尺度は,5因子29項目で構成され,この尺度の信頼性と妥当性が確認された.

Translated Abstract

Aim: The aim of this study was to develop a scale that assesses the care ethical competence of students in nursing practice, and verify the reliability and validity of the scale.

Method: A self-administered questionnaire survey was conducted with 694 nursing students nationwide.

Factor analysis was performed and the construct validity was confirmed with AMOS statistical software using model fitness. The coexistence validity was confirmed using the “scale of professional autonomy in nursing.” The reliability was confirmed by Cronbach’s α coefficient to confirm the internal consistency, and a retest was used to confirm the intraclass correlation coefficients.

Results: As a result of factor analysis, 29 items of 5 factors were extracted.

Concerning the degree of data fitness, the GFI was .896, AGFI was .883, CFI was .977, RMSEA was .034, and correlation with the “scale of professional autonomy in nursing” was .453. For reliability, Cronbach’s α coefficient for all 29 items was .932, and Cronbach’s α coefficient for each of the five factors was between .837 and .887. The retest method showed intraclass correlation coefficients between .351 and .904.

Conclusion: The nursing student version of the care ethical competence scale consisted of 5 factors and 29 items. The reliability and validity of this scale were confirmed.

Ⅰ. 緒言

看護師は,日々の看護実践の中で,患者の価値観の多様化や医療に関する関心の高さ,急速な医療の進歩や複雑さなどに伴い,様々な倫理的問題に直面している.その課題に対応するために,看護師は看護者の倫理綱領(日本看護協会,2003)に基づき判断し,行動している.さらに複雑な倫理的問題は,カンファレンス等で倫理原則を用いて分析し,解決している.しかし,看護基礎教育で十分な倫理的行動が獲得されていないままに,看護師として臨床現場で働き始めてしまうことで,日々遭遇する倫理的問題に対応できない体験が蓄積され,学習性無力感を抱き,バーンアウトや離職につながる可能性がある(Epstein & Hamric, 2009).そのため,看護学生においては,看護師として働き始めた時に,倫理的問題に対応できるように,様々な教育が行われている.

最近の看護倫理教育は,看護学教育モデル・コア・カリキュラム(文部科学省,2017)の中で,看護実践における倫理の重要性,倫理に関する理論や倫理原則,思考方法を学習することがねらいとされ,事例検討や臨地実習で遭遇した倫理的問題を解決することが求められている.看護学生が,倫理的問題を解決できる能力を身につけるためには,教員が臨地実習で,看護学生の思考過程を把握し,問題を解決するための教育が重要である.そのためには,看護学生の倫理的行動の思考過程を可視化する必要があり,自己評価尺度はその一助となると考える.しかしながら,看護倫理に関する自己評価尺度には,看護師と看護教員を対象とした尺度は開発されているが,看護学生を対象とした尺度は開発されていない.

看護師を対象にした尺度には,大出(2014)の生命倫理4原則に依拠した「看護師の倫理的行動尺度」や,看護教員を対象にした村上ら(2010)の「看護学教員としての倫理的行動自己評価尺度」が報告されている.しかし,これら看護師や看護教員を対象とした尺度は,質問項目の内容が専門的であり,看護実践レベルが高いため,看護学生が看護学実習で遭遇するような実践レベルには該当しない項目も多く,これらの尺度を使用するには限界がある.

そこで本研究は,看護学生が看護学実習で経験するケアの倫理的行動について評価できる看護学生版ケアの倫理的行動尺度を開発し,その尺度の信頼性,妥当性を検証する.

Ⅱ. 目的

看護学生が看護学実習で経験するケアの倫理的行動について評価できる看護学生版ケアの倫理的行動尺度を開発し,その尺度の信頼性,妥当性を検証する.

Ⅲ. 用語の定義

1. 倫理的行動

本研究では,倫理的問題を解決するための思考過程(倫理的感受性,倫理的推論,倫理的意思決定)および倫理的実践と倫理的内省とする.

2. 看護学生

本研究では,看護系大学および看護専門学校で,看護基礎教育を受けている学生とする.

Ⅳ. 方法

1. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の原案作成

医学中央雑誌,EBSCO(MEDLINE, CINAHL)を使用して文献検索を実施した.国内文献は,医学中央雑誌を用いて,「倫理的行動」をキーワードとし,原著論文に限定して文献を抽出した.海外文献は,EBSCO(MEDLINE, CINAHL)を用いて,「ethical competence」をキーワードとし,Journal articleに限定して文献を抽出した.文献検索の結果,24文献が得られ,5概念12サブカテゴリーを抽出した(表1).

表1 文献検索から抽出された概念・サブカテゴリー
概念 サブカテゴリー 根拠論文
【倫理的感受性】 〈違和感をもつ〉 井上ら,2016
〈不快感に気づく〉 藪下ら,2014
【倫理的推論】 〈認識した状況に関する情報収集〉 Karlsson et al., 2017
〈認識した状況の検討〉 Chao et al., 2017井上ら,2016Luz et al., 2016境ら,2016
〈倫理的問題の明確化〉 藪下ら,2014
【倫理的意思決定】 〈ケアの方向性を決定〉 Meyer et al., 2017井上ら,2016藪下ら,2014
〈行動の明確化〉 境ら,2016
【倫理的実践】 〈判断した内容に沿ったケア〉 大出,2014藪下ら,2014
〈看護の基盤となる原則〉 Chao et al., 2017Karlsson et al., 2017井上ら,2016境ら,2016大出,2014内田ら,2010Wros et al., 2004
【倫理的内省】 〈実践を振り返る〉 境ら,2016大出,2014Poikkeus et al., 2014
〈心情を振り返る〉 Kim et al., 2018Storaker et al., 2017
〈経験からの教訓を得る〉 境ら,2016

本尺度は,看護学生が看護学実習で経験するケアの倫理的行動について評価できる尺度開発を目的としているため,看護者の倫理綱領の「看護を提供する場面で守るべき条文」1条から6条に沿って(日本看護協会,2003),看護学生が看護学実習中に遭遇しそうな6場面を想定した.質問内容は,看護者の倫理綱領の1条から6条に沿った6場面に合わせて,5概念(倫理的感受性,倫理的推論,倫理的意思決定,倫理的実践,倫理的内省)12サブカテゴリーの根拠論文を基に,看護学生版ケアの倫理的行動尺度原案72項目(6場面×12サブカテゴリー)を作成した(表2).

表2 「看護学生版ケアの倫理的行動尺度」原案および尺度項目の検証
倫理綱領 概念 質問項目 欠損値 Mean SD 床効果
M – SD
天井効果
M + SD
I-I相関 I-T相関
n %
1条 1 倫理的感受性 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 2.64 1.28 1.37 3.92 –.113~.843** –.545**
2 倫理的感受性 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた場面を見て,嫌な気持ちになった. 0 0.0 2.19 1.18 1.01 3.37 –.086~.843** –.610**
3 倫理的推論 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 1.72 1.03 0.69 2.76 –.131~.497** –.441**
4 倫理的推論 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいたことで感じた違和感の原因を考えた. 0 0.0 2.10 1.22 0.89 3.32 –.094~.662** –.586**
5 倫理的推論 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいたことは,人としての尊厳が守られていないと思った. 0 0.0 2.29 1.23 1.06 3.52 –.224~.708** –.529**
6 倫理的意思決定 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護するためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 3.14 1.28 1.86 4.42 –.015~.541** –.022*
7 倫理的意思決定 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護するために,患者に敬意を払った言動で接することにした. 1 0.5 4.09 1.08 3.02 5.17 –.067~.721** .298**
8 倫理的実践 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護するために,倫理綱領に沿って敬意を払って接した. 0 0.0 4.08 0.99 3.08 5.07 –.006~.865** .360**
9 倫理的実践 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護するために,判断した結果に沿って敬意を払って接した. 0 0.0 4.12 0.98 3.15 5.10 –.024~.865** .371**
10 倫理的内省 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. 2 1.0 3.67 1.14 2.53 4.81 –.003~.667** .457**
11 倫理的内省 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた時に感じた不快な気持ちを再整理した. 2 1.0 2.31 1.26 1.05 3.57 –.104~.649** –.527
12 倫理的内省 私は,患者をひとりの人としての尊厳を擁護するための自分なりの対応方法を見つけることができた. 0 0.0 3.47 1.08 2.38 4.55 –.011~.547** .413**
2条 13 倫理的感受性 私は,看護師が患者に差別的な発言(担当したくないなど)をしていた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 4.50 0.84 3.66 5.34 –.126~.551** .247*
14 倫理的感受性 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしていた場面を見て,どきどきした気持ちになった. 0 0.0 4.06 1.09 2.97 5.15 –.039~.551** .226
15 倫理的推論 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしていた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 2.74 1.21 1.53 3.95 –.094~.615** –.195
16 倫理的推論 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしていた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. 1 0.8 3.41 1.15 2.26 4.57 –.093~.577** .041
17 倫理的推論 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をすることは,患者を平等に見ていないと思った. 0 0.0 4.16 1.03 3.13 5.19 –.035~.486** .162
18 倫理的意思決定 私は,患者に平等な看護を実践するためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 3.84 1.08 2.76 4.92 –.194~.614** .634**
19 倫理的意思決定 私は,患者に平等な看護を実践するために,健康問題の性質にかかわらず,患者を受けとめる姿勢をもって対応することにした. 0 0.0 4.28 0.91 3.37 5.19 –.098~.705* .662**
20 倫理的実践 私は,患者の健康問題の性質にかかわらず,倫理綱領に沿って,偏見をもたずに平等に接した. 0 0.0 4.26 0.94 3.32 5.19 –.103~.843** .699**
21 倫理的実践 私は,患者の健康問題の性質にかかわらず,判断した結果に沿って,偏見をもたずに平等に接した. 0 0.0 4.31 0.80 3.51 5.11 –.104~.843** .757**
22 倫理的内省 私は,患者に平等な看護を実践できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. 0 0.0 3.75 1.05 2.70 4.81 –.224~.648** .671**
23 倫理的内省 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしている場面を見た時に感じたどきどきした気持ちを再整理した. 0 0.0 3.35 1.24 2.11 4.58 –.065~.422* .422**
24 倫理的内省 私は,患者に平等な看護を実践するための自分なりの対応方法を見つけることができた. 0 0.0 3.70 1.06 2.64 4.76 –.115~.639** .525**
3条 25 倫理的感受性 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 4.55 0.65 3.89 5.20 –.046~.779** .246*
26 倫理的感受性 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた場面を見て,もやもやした気持ちになった. 0 0.0 4.48 0.72 3.76 5.20 –.073~.779** .303*
27 倫理的推論 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 3.08 1.21 1.87 4.29 –.126~.640** .131
28 倫理的推論 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. 0 0.0 3.72 1.06 2.66 4.78 –.039~.588** .456**
29 倫理的推論 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していたことは,患者に不信感を与えていると思った. 0 0.0 4.25 0.87 3.38 5.12 –.131~.521** .506**
30 倫理的意思決定 私は,患者にケアを実施する時に,不信感を与えないためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 4.30 0.87 3.44 5.17 –.092~.599** .822**
31 倫理的意思決定 私は,患者にケアを実施する時,患者の信頼を得るためにプライバシーを配慮することにした. 0 0.0 4.62 0.63 3.98 5.25 –.033~.650** .742**
32 倫理的実践 私は,患者にケアを実施する時に,不信感を与えないよう倫理綱領に沿って,患者に誠実に対応した. 0 0.0 4.19 0.93 3.26 5.13 –.040~.680** .677**
33 倫理的実践 私は,患者にケアを実施する時に,不信感を与えないよう判断した結果に沿って,患者に誠実に対応した. 0 0.0 4.40 0.73 3.67 5.12 .056~.680** .771**
34 倫理的内省 私は,患者と信頼関係を築くことができた時も,できなかった時も,その原因を考えた. 1 0.4 4.13 0.93 3.20 5.07 .021~.674** .760**
35 倫理的内省 私は,看護師が患者にプライバシーの配慮のないケアを実施していたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. 0 0.0 3.76 1.10 2.66 4.86 .008~.807** .625**
36 倫理的内省 私は,看護実践する上で,患者と信頼関係を築くための自分なりの対応方法を見つけることができた. 1 0.4 4.13 0.86 3.27 4.99 –.011~.672** .747**
4条 37 倫理的感受性 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施していた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 4.28 0.75 3.53 5.03 –.035~.724** .396**
38 倫理的感受性 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施していた場面を見て,びっくりした気持ちになった. 0 0.0 4.10 0.86 3.23 4.96 .047~.724** .332**
39 倫理的推論 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施していた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 3.10 1.07 2.02 4.17 .044~.646** .105
40 倫理的推論 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施している場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. 0 0.0 3.46 1.17 2.29 4.63 –.035~.646** .246*
41 倫理的推論 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施することは,患者の自己決定が守られず不利益が生じていると思った. 0 0.0 4.09 0.82 3.27 4.91 –.009~.598** .551**
42 倫理的意思決定 私は,患者の自己決定の権利を擁護するためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 4.08 0.86 3.22 4.94 .031~.655** .866**
43 倫理的意思決定 私は,患者の自己決定の権利を擁護するために,看護行為を実施する時には患者に説明をして同意を得た上で実施することにした. 0 0.0 4.54 0.68 3.86 5.21 –.061~.739** .697**
44 倫理的実践 私は,ケアを実施する時に,患者の自己決定の権利を擁護するため,倫理綱領に沿って,患者に説明をして同意を得ることにした. 0 0.0 4.31 0.87 3.44 5.18 –.033~.737** .590**
45 倫理的実践 私は,ケアを実施する時に,患者の自己決定の権利を擁護するため,判断した結果に沿って,患者に説明をして同意を得ることにした. 0 0.0 4.44 0.72 3.73 5.16 –.016~.739** .688**
46 倫理的内省 私は,患者の自己決定権を尊重できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. 0 0.0 3.96 1.04 2.92 5.01 .028~.674** .839**
47 倫理的内省 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施していたことで感じたびっくりした気持ちを再整理した. 0 0.0 3.49 1.17 2.32 4.66 –.032~.807** .608**
48 倫理的内省 私は,看護実践する上で,患者の自己決定権を尊重するための自分なりの対応方法を見つけることができた. 0 0.0 4.05 0.87 3.18 4.92 .065~.672** .880**
5条 49 倫理的感受性 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 4.09 0.89 3.20 4.99 .009~.814** .156
50 倫理的感受性 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた場面を見て,もやもやした気持ちになった. 0 0.0 3.88 0.98 2.90 4.86 .039~.814** .304**
51 倫理的推論 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 2.87 1.15 1.72 4.02 –.108~.670** .144
52 倫理的推論 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. 0 0.0 3.31 1.14 2.17 4.44 –.063~.670** .265*
53 倫理的推論 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていたことは,守秘義務が遵守されていないと思った. 0 0.0 4.25 0.84 3.41 5.09 –.071~.663** .487**
54 倫理的意思決定 私は,患者の個人情報を守るためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 4.06 0.97 3.10 5.03 –.075~.602** .573**
55 倫理的意思決定 私は,患者の個人情報を守るため,守秘義務を理解した上で遵守することにした. 0 0.0 4.30 0.86 3.44 5.16 –.047~.650** .473**
56 倫理的実践 私は,患者の個人情報が漏出しないように,倫理綱領に沿って,個人情報の取り扱いに細心の注意を払った. 0 0.0 4.22 0.86 3.36 5.08 .121~.768** .418**
57 倫理的実践 私は,患者の個人情報が漏出しないように,判断した結果に沿って,個人情報の取り扱いに細心の注意を払った. 0 0.0 4.36 0.77 3.58 5.13 .098~.768** .568**
58 倫理的内省 私は,患者の個人情報を保護できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. 0 0.0 3.88 0.95 2.93 4.83 .036~.670** .706**
59 倫理的内省 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. 0 0.0 3.50 1.15 2.35 4.66 –.062~.670** .411**
60 倫理的内省 私は,看護を実践する上で,患者の個人情報を保護するための自分なりの対応方法を見つけることができた. 0 0.0 3.92 0.95 2.96 4.87 –.071~.637** .561**
6条 61 倫理的感受性 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制をしていた場面を見て,おかしいと思った. 0 0.0 3.02 1.07 1.95 4.09 –.071~.651** –.276*
62 倫理的感受性 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制をしていた場面を見て,もやもやした気持ちになった. 0 0.0 3.41 1.08 2.33 4.49 –.053~.651** .031
63 倫理的推論 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制をしていた状況を把握するために情報収集した. 0 0.0 3.63 1.16 2.47 4.79 –.040~.564** .273*
64 倫理的推論 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制していたことで感じた違和感の原因を考えた. 0 0.0 3.34 1.11 2.23 4.44 –.020~.598** .193
65 倫理的推論 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制していたことは,患者の自由な行動を制限して苦痛を与えていると思った. 1 0.4 3.83 1.02 2.82 4.85 –.062~.586** .113
66 倫理的意思決定 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者の安全を守るためには,どのように行動したらよいか考えた. 0 0.0 4.07 0.88 3.19 4.95 –.018~.722** .470**
67 倫理的意思決定 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者の安全を守るために,患者の動きたい理由を把握した上で行動を選択することにした. 0 0.0 3.99 0.93 3.05 4.92 .007~.722** .585**
68 倫理的実践 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,倫理綱領に沿って患者の動こうとするニードを満たし安全を保護するために行動した. 0 0.0 3.89 0.93 2.96 4.81 –.086~.800** .581**
69 倫理的実践 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,判断した結果に沿って患者の動こうとするニードを満たし安全を保護するために行動した. 0 0.0 4.00 0.90 3.10 4.90 –.007~.800** .694**
70 倫理的内省 私は,看護を通して患者の安全を守れた時も,守れなかった時も,その原因を考えた. 1 0.4 3.96 0.94 3.02 4.90 –.103~.677** .640**
71 倫理的内省 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制していたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. 0 0.0 3.54 1.08 2.46 4.62 .014~.584** .588**
72 倫理的内省 私は,看護実践する上で,患者の安全を守るための自分なりの対応方法を見つけることができた. 0 0.0 3.75 0.95 2.81 4.70 –.037~.657** .764**

スピアマン相関係数 * p < .05 ** p < .01

項目原案の内容妥当性を確保するために,7名の専門家で検討した.7名の内訳は,看護管理学の教授1名,基礎看護学(看護倫理を専門とする)の教授1名と助教2名,看護部長1名,看護副部長(教育担当)1名,看護師長1名である.さらに,項目原案の表現妥当性については,看護学生9名を対象にプレ調査を行い,質問項目の答えやすさなどを確認し,項目の表現を一部修正した.

2. 調査方法

1) 対象

研究協力の同意を得た全国の看護系大学および看護専門学校10校に在学している最終学年の看護学生694名(看護系大学5校468名,専門学校5校226名)を対象とした.そのうちの286名を対象に再テストを行った(看護系大学2校207名,専門学校2校79名).

2) 調査期間・データ収集方法

調査期間は2018年10月~2018年12月である.

データ収集方法は,調査協力への内諾が得られ,学科長の許可書をいただいた上で,対象人数を確認した.看護系大学,看護専門学校の担当者に対象人数分の調査票を郵送し,担当者から調査対象者への配布と倫理的配慮に関する説明を依頼した.調査対象者は調査票を受け取った後,研究に同意される場合は調査票を記入し,記入後は学校内に設置した返信箱に投函してもらった.投函された調査票は,担当者がまとめ研究者に送付した.再テストは,1回目の調査終了後から3~4週間後に実施した.

3) 調査内容

(1) 看護学生版ケアの倫理的行動尺度原案

尺度原案は,先に述べた72項目で構成されている.各項目は,「かなりあてはまる」5点,「ある程度あてはまる」4点,「どちらかというとあてはまる」3点,「あまりあてはまらない」2点,「全くあてはまらない」1点の5段階評価とし,得点が高いほど,倫理的行動が高いと評価される.

(2) 看護の専門職的自律性測定尺度

併存妥当性を検証するため「看護の専門職的自律性測定尺度(菊池・原田,1997)」を用いた.この尺度は,看護職一人ひとりが専門的な知識,技術に裏づけられた意思決定を可能にし,その上で的確な看護実践に取り組む専門職としての自律性を測定する尺度である.この尺度は,「認知能力」「実践能力」「具体的判断能力」「抽象的判断能力」「自立的判断能力」の5因子47項目で構成され,「かなりそう思う」5点,「少しはそう思う」4点,「どちらとも言えない」3点,「あまりそう思わない」2点,「全くそう思わない」1点の5段階評価である.点数が高いほど,状況認知,判断および実践の各側面で自律性が高いことを示している.この尺度は,信頼性,妥当性ともに確保されており,開発者の使用許可を得ている.

(3) 個人属性

年齢,性別,在学している教育機関,社会人経験の有無,婚姻,子育て経験の有無の6項目を設定した.

3. 分析方法

回収された調査票のうち,同意確認欄にチェックがされていないもの,記入率が80%以下のものを除き有効回答とした.

1) 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の因子構造

看護学生版ケアの倫理的行動尺度原案72項目について,はじめに記述統計による項目分析を行った.欠損値(1.0%未満),天井効果(M + SD > 5.0),フロア効果(M – SD < 1.0)を基準に項目を確認した.また,Item-Item相関(I-I相関;r > .800),Item-Total相関(I-T相関;r < .200)を基準に項目を確認した.

次に,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った.抽出された各因子で因子負荷量の高い項目(r > 0.4)を選定して確証的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,因子の収束性を確認した.

2) 妥当性の検証

妥当性は,AMOSによるモデルの適合度指標(GFI,AGFI,CFI,RMSEA)を用いて構成概念妥当性を確認した.また,看護の専門職的自律性測定尺度(菊池・原田,1997)との相関から併存妥当性を確認した.相関分析においては,各因子の得点について正規分布しているか否かをShapiro-Wilk検定で確認し,スピアマンの相関係数を用いた.

3) 信頼性の検証

信頼性は,項目全体と抽出された因子ごとにCronbachのα係数で内的整合性を確認し,さらに再テストで因子間の級内相関(ICC)を求めて安定性を確認した.

以上の統計解析には,SPSS Version24を使用し,統計学的有意水準はp < .05とした.

4. 倫理的配慮

本調査は,回答者が特定できないように無記名方式で実施し,調査の同意は,調査票に記載された同意の確認欄のチェックで同意とした.調査協力は,研究協力者の自由意思に基づき,調査に参加されなくても,また途中で回答をやめたとしても学業成績評価に影響しないことを保証した.調査票は,個人情報保護法および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従い,得られたデータは統計的に処理して保管し,分析終了後,厳重に破棄すること,調査票を投函した後に参加を撤回されても,データを削除することはできないことを説明した.本調査で知り得た情報は,本研究の目的以外に利用しないこと,今回得られた結果は,集計結果のみを公表し,看護学生名はもちろん学校名も明らかになることはないことを保証した.分析結果は,博士論文発表会および学会発表,学会誌やインターネット掲載などを通して社会に還元する予定であることを,文書で説明をした.本調査は,長野県看護大学倫理委員会の倫理審査を受け,承認を得た上で実施した(承認番号2018-11).

Ⅴ. 結果

1. 対象者の属性

調査対象者694名のうち,回収数398名(回収率:57.3%)であった.有効回答数は,398名(有効回答率100%)であった.

対象者の平均年齢は,22.2歳で,男性29名(10.1%),女性347名(89.9%)であった.看護系大学の看護学生は209名(54.0%)と専門学校は178名(46.0%)であった.社会人経験は,無が193名(53.3%),有が169名(46.7%)で,雇用形態は正社員が25名(13.5%),アルバイトが156名(84.3%),契約・派遣社員などは4名(2.2%)であった.婚姻は,無が375名(97.9%),有が8名(2.1%)で,子育て経験は無が373名(97.4%),有が10名(2.6%)であった.

2. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の因子構造

看護学生版ケアの倫理的行動尺度原案72項目のうち,床効果のある2項目と,天井効果のある27項目を削除した.I-I相関の相関係数が,r = .800以上を示すものは12項目あり,項目間の類似性を考慮して4項目を削除した.I-T相関は,r = .200未満の相関係数を示す6項目を削除した(表2).以上の結果,看護学生版ケアの倫理的行動尺度原案は33項目となった.

得られた33項目の探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)の結果,5因子が抽出された.因子負荷量が.400以上の項目を選定したところ,29項目であった.

29項目で,確証的因子分析を行った結果,5因子に収束された(表3).第1因子は,転倒転落のリスクがある患者の安全確保と抑制に関する倫理的行動の推論,意思決定,実践,内省を網羅した項目で構成されていたことから,【安全なケア提供】と命名した.第2因子は,ケアを実践する上での説明と同意や自己決定の権利擁護に関する倫理的行動の推論,意思決定,内省を網羅した項目で構成されていたことから,【自己決定の尊重】と命名した.第3因子は,守秘義務の配慮と遵守に関する倫理的行動の推論,内省を網羅した項目で構成されていたことから,【個人情報の保護】と命名した.第4因子は,対象となる人々へ平等な看護を提供することに関する倫理的行動の感受性,推論,意思決定,内省を網羅した項目で構成されていたことから,【最善のケア提供】と命名した.第5因子は,人間の生命,人間としての尊厳および権利の尊重に関する倫理的行動の感受性,推論,内省を網羅した項目で構成されていたことから,【個人の尊厳尊重】と命名した.

表3 「看護学生版ケアの倫理的行動尺度」の因子構造と信頼係数
因子
1 2 3 4 5
因子1【安全なケア提供】(Cronbach α = .887)
67 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者の安全を守るために,患者の動きたい理由を把握した上で行動を選択することにした. .871 –.050 –.036 –.087 –.004
69 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,判断した結果に沿って患者の動こうとするニードを満たし安全を保護するために行動した. .864 –.132 .055 –.015 .013
66 私は,自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者の安全を守るためには,どのように行動したらよいか考えた. .835 –.038 –.064 –.048 .032
70 私は,看護を通して患者の安全を守れた時も,守れなかった時も,その原因を考えた. .753 .008 .041 –.011 –.074
72 私は,看護実践する上で,患者の安全を守るための自分なりの対応方法を見つけることができた. .671 –.043 .070 .096 .003
71 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制していたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. .564 .076 .106 .073 .013
63 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制をしていた状況を把握するために情報収集した. .562 .198 –.128 –.047 –.058
64 私は,看護師が自ら動こうとして転倒・転落リスクがある患者に,身体抑制していたことで感じた違和感の原因を考えた. .531 .169 –.094 .065 .029
因子2【自己決定の尊重】(Cronbach α = .872)
40 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施している場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. –.042 .792 .031 –.120 .074
39 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施していた状況を把握するために情報収集した. –.124 .788 –.012 –.075 –.095
27 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた状況を把握するために情報収集した. –.059 .640 –.042 .132 –.034
28 私は,看護師がプライバシーの配慮のないケアを患者に実施していた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. .035 .591 –.067 .098 .032
35 私は,看護師が患者にプライバシーの配慮のないケアを実施していたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. .083 .551 .098 .051 –.023
41 私は,看護師が説明をしないままに,患者にケアを実施することは,患者の自己決定が守られず不利益が生じていると思った. .105 .432 .002 –.104 .087
42 私は,患者の自己決定の権利を擁護するためには,どのように行動したらよいか考えた. .215 .384 .025 .055 .015
48 私は,看護実践する上で,患者の自己決定権を尊重するための自分なりの対応方法を見つけることができた. .193 .364 .087 .043 .035
因子3【個人情報の保護】(Cronbach α = .851)
59 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていたことで感じたもやもやした気持ちを再整理した. –.061 .024 .879 –.019 .026
58 私は,患者の個人情報を保護できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. .073 –.030 .746 –.014 .010
60 私は,看護を実践する上で,患者の個人情報を保護するための自分なりの対応方法を見つけることができた. .017 –.149 .745 .021 .014
52 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. –.027 .108 .710 –.032 –.015
51 私は,看護師が病室で患者の個人情報について,患者と話していることが,周りに聞こえていた状況を把握するために情報収集した. –.058 .130 .568 .021 –.059
因子4【最善のケア提供】(Cronbach α = .847)
22 私は,患者に平等な看護を実践できた時も,できなかった時も,その原因を考えた. .001 –.026 .030 .820 –.045
14 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしていた場面を見て,どきどきした気持ちになった. –.057 .025 .001 .776 .040
24 私は,患者に平等な看護を実践するための自分なりの対応方法を見つけることができた. .026 –.081 –.004 .758 –.006
18 私は,患者に平等な看護を実践するためには,どのように行動したらよいか考えた. .049 –.033 –.008 .709 .017
16 私は,看護師が患者に対して,差別的な発言(担当したくないなど)をしていた場面を見た時に感じた違和感の原因を考えた. –.053 .104 –.044 .583 .019
因子5【個人の尊厳尊重】(Cronbach α = .837)
2 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた場面を見て,嫌な気持ちになった. –.008 –.028 –.010 .010 .894
5 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいたことは,人としての尊厳が守られていないと思った. –.036 –.014 –.007 –.073 .839
11 私は,看護師が小児患者以外の患者を「〇〇ちゃん」と呼んでいた時に感じた不快な気持ちを再整理した. .010 .089 .010 .098 .669
因子間相関 因子1 1.00
因子2 .306 1.00
因子3 .228 .383 1.00
因子4 .302 .350 .305 1.00
因子5 .056 .148 .019 .011 1.00

因子抽出法:最尤法(プロマックス法)

尺度全体(Cronbach α = .932)

3. 妥当性の検証

5因子29項目のモデル適合度は,GFI = .896,AGFI = .883,CFI = .977,RMSEA = .034であった.

既存尺度である「看護の専門職的自律性測定尺度」47項目の総得点と本調査の5因子29項目の合計得点との相関は,r = .453であった.また,既存尺度47項目の総得点と本尺度因子との相関はr = .245~.310であった(表4).

表4 「看護の専門職的自律性測定尺度」と「看護学生版ケアの倫理的行動尺度」の相関
看護の専門職的自律性測定尺度
総得点 認知能力 実践能力 具体的判断能力 抽象的判断能力 自立的判断能力
看護学生版ケアの倫理的行動尺度
因子1:安全なケア提供 .310** .369** .268** .219** .205** .093
因子2:自己決定の尊重 .279** .344** .270** .153 .027 .130
因子3:個人情報の保護 .245** .311** .251** .159* .139 –.109
因子4:最善のケア提供 .300** .288* .326** .216* .083 .023
因子5:個人の尊厳尊重 .248** .139 .184* .238** .214** .130

スピアマン相関係数 * p < .05 ** p < .01

4. 信頼性の検証

本尺度29項目全体の,Cronbachのα係数はα = .932であり,5因子それぞれのCronbachのα係数はα = .837~.887であった(表3).再テストを実施した結果,1回目の調査と2回目の調査における5因子それぞれのICCは,【安全なケア提供】は,r = .660,【自己決定の尊重】は,r = .524,【個人情報の保護】は,r = .401,【最善のケア提供】は,r = .351,【個人の尊厳尊重】は,r = .904であった.

Ⅵ. 考察

1. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の因子構造

本研究では,看護学生版ケアの倫理的行動の因子構造として5因子が抽出された.

因子1の【安全なケア提供】は看護者の倫理綱領の6条“人々を保護し安全を確保する”,因子3の【個人情報の保護】は看護者の倫理綱領の5条“個人情報の保護に努める”に該当すると考えられる.因子4の【最善のケア提供】は看護者の倫理綱領の2条“対象となる人々に平等に看護を提供する”,因子5の【個人の尊厳尊重】は看護者の倫理綱領の1条“人間としての尊厳及び権利の尊重”に該当すると考えられる.他方,因子2の【自己決定の尊重】は,看護者の倫理綱領の3条“信頼関係に基づいて看護を提供する”と4条“知る権利及び自己決定の権利を尊重”の内容を網羅していると考える.これらのことから,5因子は看護者の倫理綱領の1条から6条の看護を提供する上で守られるべき価値・義務を反映した構造であった.

また,看護職者は倫理的問題を判断する上で倫理原則を用いている(Fry & Johnstone, 2008/2010).因子1の【安全なケア提供】は倫理原則の「無危害の原則」,因子2の【自己決定の尊重】は倫理原則の「自律尊重の原則」に該当すると考える.因子3の【個人情報の保護】は倫理原則の「真実・忠誠の原則」,因子4の【最善のケア提供】は「正義の原則」,因子5の【個人の尊厳尊重】は「善行の原則」の内容を網羅していると考える.これらのことから,5因子は看護倫理原則の5原則を反映した構造であった.

2. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の妥当性

モデル適合度指標は,GFIは.900以上あれば説明力があり,AGFI,CFIは値が1に近いほどデータのあてはまりが良いとされる.また,RMSEAは.500以下であてはまりが良く.100以上あればあてはまりが良くないと判断される(豊田,2007).これらのことから,5因子29項目からなる看護学生版ケアの倫理的行動尺度のモデル適合度指標は,GFIが.900と概ね妥当な適合度を示す結果であると判断でき,構成概念妥当性を支持する結果と考える.

また,併存妥当性は倫理的行動を通して,看護専門職者としての自律性が向上すると考え,看護の専門職的自律性測定尺度との相関を検証した.この尺度は,看護職従事者を対象としており,本尺度と対象者は異なる.本尺度は,看護学生を対象としたものであり,看護学実習を積み重ね,看護基礎教育修了時の倫理的行動の習得を目指す尺度であることから,新人看護師から活用できる看護の専門職的自律性測定尺度で検証することは可能であると考えた.検証の結果,尺度全体の相関はr = .453であり,併存妥当性が確認された.しかし,看護の専門職的自律性測定尺度の各因子と本尺度の各因子の相関は,一部認められなかった.とくに,看護の専門職的自律性測定尺度の「自立的判断能力」と本尺度の5因子では,相関が認められなかった.菊池・原田(1997)は,看護の専門職的自律性における判断能力は,具体的な手がかりに基づき方法を決定する初歩的レベルと,看護モデルという科学的概念や法則を活用したより高度なレベルがあると述べている.すなわち,看護の専門職的自律性測定尺度における判断能力の初歩的レベルは,「具体的判断能力」が該当し,高度なレベルは,「抽象的判断能力」「自立的判断能力」が該当する(菊池・原田,1997).本研究の対象は看護学生であり,初歩的レベルである「具体的判断能力」の段階を修得することが先決であり,高度なレベルである「抽象的判断能力」と「自立的判断能力」は継続教育で獲得していくものであると考える.したがって,看護の専門職的自律性測定尺度の「抽象的判断能力」「自立的判断能力」と本尺度5因子は,相関を示さなかったのだといえる.

3. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の信頼性

信頼性は,内的整合性と安定性を検討した.一般にCronbachのα係数がα = .800以上の値が望ましいとされる(村上,2006).本尺度29項目においては,尺度全体のCronbachのα係数はα = .932であり,内的整合性は確保されたと考える.

安定性については,再テストで検証した.一般にICC = .0~.20をslight,ICC = .21~.40をfair,ICC = .41~.60をmoderate,ICC = .61~.80をsubstantial,ICC = .81~1.00をalmost perfectと基準を示している(対馬,2018).本尺度においては,各5因子はICC = .351~.904の範囲であるため,概ね安定性は確保されたと考える.

4. 看護学生版ケアの倫理的行動尺度の活用可能性

本尺度の活用可能性として,看護学生と看護教育者の2つの観点から述べる.看護学生の場合,本尺度を活用することで,看護学生が倫理的行動を客観的に自己評価し,自己の能力を自覚し課題を明確化する上で活用できると考える.他方,看護教育者の場合,本尺度を活用することで,看護学生の倫理的行動の判断能力および実践・内省能力を可視化することが可能となり,看護学生が適切な倫理的行動のプロセスを辿ることができるように支援できる.

5. 本研究の限界と今後の課題

本研究の限界として,2点が考えられる.1点目は,回収率である.平成29年度の全国の看護学生182,572名のうち,全日制の看護専門学校の総定員は87,008人(48.0%),看護系大学の総定員は90,364人(49.0%)である(日本看護協会,2017).本調査では全国の看護基礎教育機関(看護系大学および看護専門学校)を母集団とし,対象は看護系大学の看護学生が209名(54.0%)と専門学校の看護学生178名(46.0%)であった.全国と本調査における看護学生の人数の比率は,ほぼ同様であるため,概ね母集団を反映したデータだと考えられる.今回は,10施設の対象者全員に配布することが可能であったが,調査票の回収率は57.3%であった.このことは,調査の協力者は研究テーマへの関心が高い看護学生が回答している可能性があると考えられる.

2点目は,尺度項目を作成した時に看護者の倫理綱領の1条から6条を適用したことである.この尺度は,看護学生が看護学実習で経験するケアの倫理的行動について評価できる尺度開発を目的としていたため,看護実践に焦点をあて,簡便に評価できる実現可能性の高い尺度開発をめざした.そのため,看護者の倫理綱領の1条から6条に焦点をあてて作成したが,今後は「看護者の倫理綱領」の7条から11条(看護者の努力)および12条から15条(個人特性と組織的努力)を網羅した尺度項目を再検討していく必要がある.

Ⅶ. 結論

看護学生版ケアの倫理的行動尺度は,【安全なケア提供】【自己決定の尊重】【個人情報の保護】【最善のケア提供】【個人の尊厳尊重】の5因子29項目で構成された.5因子のCronbachのα係数はα = .837~.887であり,再テストによるICCはICC = .351~.904であることから,信頼性は概ね確保された.また,5因子29項目のモデル適合度は,GFI = .896,AGFI = .883,CFI = .977,RMSEA = .034であり,構成概念妥当性が確認された.本尺度の合計得点と「看護の専門職的自律性測定尺度」の総得点との相関はr = .453であり,併存妥当性が確認された.

謝辞:本研究にご協力いただいた学生のみなさまと看護基礎教育機関の教職員のみなさまに感謝申し上げます.本研究は,JSPS科研費基盤研究C(17K12134)の助成を得て実施した.

利益相反:本研究に関する利益相反は存在しない.

著者資格:EYおよびSKは研究の着想およびデザインに貢献;EYはデータ収集,分析および草稿の作成;SKは分析の助言および原稿への示唆,研究プロセス全体への助言;すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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