日本看護科学会誌
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原著
産後0~4か月の母子を対象とした助産師の家庭訪問支援の構造
柳本 佳世子西井 崇之畑下 博世
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2025 年 45 巻 p. 951-961

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Abstract

目的:産後0~4か月の母子を対象に自治体で行っている助産師による家庭訪問活動の経験から支援の構造を明らかにする.

方法:対象者はA県で産後0~4か月の母子に対して家庭訪問支援を実践する助産師10名とし,半構造化面接を行い質的統合法(KJ法)にて分析した.

結果:助産師が行う家庭訪問の専門的支援は,【心身の負担を減らす支援】を手がかりとし,【分娩体験の振り返り支援】と【母の育児実践に向けた支援】の2つの実践を助産ケアの核として通底していた.しかし,経験を通して対象の多様性にあわせた【多面的な支援の必要性】に気づき,【地域に根差した継続的支援】や【保健師との協働】を課題と捉えていた.

結論:家庭訪問を行う助産師の支援の構造が明らかとなり,今後は育児に揺れる母を深く理解することや,母子への継続的支援の時期を見極めること,多職種が互いの専門性に理解を深め協働することが重要である.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to clarify The Structure of Support based on the experiences of midwife home visit activities that municipalities conducted for mothers and infants aged 0–4 months postpartum.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with 10 midwives who practiced home visit support for mothers and infants aged 0-4 months in Prefecture A. Interview data were collected and assessed using the qualitative synthesis method (KJ method).

Results: The professional support that midwives offered during home visits was underpinned by efforts to decrease physical and psychological burdens and consistently characterized by two core practices of midwifery care: helping in the reflection on childbirth experiences and supporting mothers in their caregiving practices. However, through their experiences, the midwives recognized the requirement for multifaceted support tailored to the diversity of mothers and infants. Additionally, they identified challenges such as “sustainable community-based support” and “collaboration with public health nurses.”

Conclusion: The structure of midwives’ support during home visits was clarified. Therefore, deeply understanding mothers struggling with childcare, determining the appropriate timing for ongoing support for mothers and infants, and fostering collaboration among multidisciplinary teams with a deeper understanding of each other’s expertise are crucial.

Ⅰ. 緒言

産後3~4か月までの時期は育児不安や育児負担感が増大する時期であり,特に支援の継続が必要といえる(益邑,2017山口ら,2017).この時期に重要な役割を担うのが乳児家庭全戸訪問事業や新生児訪問等といった母子への家庭訪問支援である.訪問に必要な専門職として保健師と助産師をあげる自治体が多く,初回訪問で保健師は家族アセスメントを確実に行い,漏れなく継続支援につなげる等が必要であることが示唆されている(元山,2018a).また,保健師と助産師の家庭訪問時の相談内容の違いについては,助産師は「授乳相談」「児の身体的問題」「養育支援体制」,保健師は「社会資源」についての内容が多いことが示されている(中尾・横山,2017).産後0~4か月を対象にした保健師と地域で活動する助産師のそれぞれの役割を明確にしていくことが求められている.

妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援の提供を目指し母子健康包括支援センター(以下,子育て世代包括支援センター)の設置(厚生労働省,2017)と,さらに母子とその家族が健やかな育児ができるように支援することを目的とした「産後ケア事業」が市町村の努力義務として法的に位置づけられた(こども家庭庁,2023).また産後ケア事業の支援者のサービスの質の保障のため,2020年のガイドラインで実施担当者について「特に,出産後4か月頃までの時期は,褥婦や新生児に対する専門的ケア(乳房ケアを含む)を行うことから,原則,助産師を中心とした実施体制での対応とする」(こども家庭庁,2024)とされており,産後の母子支援の重要性と助産師が支援に携わる必要性が示されている.

地域で活動する助産師は,全ての子育て支援において専門職と連携を図り助産ケアの質向上が課題であると捉えている(石原ら,2015).開業助産師は委託で行う新生児訪問でも母乳育児支援に手応えを感じ(渡邊・赤星,2021),訪問指導にやりがいを感じている(諸橋・関島,2021).しかし,開業助産師は一回限りの訪問で解決できない難しさや,自身の実践の評価が難しいことから一人で活動する不安も感じている(渡邊・赤星,2021).家庭訪問を行う助産師が少ない中で,1人で活動する支援の困難さを感じているため,訪問活動の取り組みや他の訪問支援者との連携などから自身の支援を振り返り,知識や技術を獲得しながら,次の活動へ活かす経験が必要である.

産後0~4か月における全ての母子が対象となる家庭訪問支援を円滑に実施し,保健師を始めとした多職種と連携し家庭訪問支援をさらに充実させるためには,助産師が自身の支援について,どのような思いと考えをもち活動をしているのかを捉え,家庭訪問支援の実態を明らかにし,専門性や課題に示唆を得ることが必要となる.

Ⅱ. 研究目的

産後0~4か月の母子を対象に自治体で行っている助産師による家庭訪問活動の経験から支援の構造を明らかにする.

Ⅲ. 用語の定義

経験とは 実際に見たり,聞いたり,行ったりすること.また,それによって得られた知識や技能などと定義されている.しかしながら,専門職の経験は日々の活動や取り組みを重ね,それを次なる行動に活かすことが含まれると考えた.

そのため,倉岡(2018)の「管理者が,挑戦課題への取り組みをしたのちに,内省する事で,実践に根差した知識・スキルの獲得をし,獲得した知識やスキルを別の場面で応用させること」と,コルブら(2018)の4つのプロセスからなる「経験,検討,思考,行動」という2つの経験学習の定義を参考にし,本研究では「経験とは,助産師が家庭訪問の活動の取り組みから,その活動の思いや考えを振り返り検討し,家庭訪問活動の実践に根差した知識・技術を獲得し,さらに新たな展開を試みていること」と定義する.

Ⅳ. 研究方法

1. 参加者

参加者は,A県の母子保健事業の中で産後0~4か月の母子に対する家庭訪問を実践する助産師10名とした.参加者の募集方法は,A県助産師会会長およびB施設管理者に協力依頼を行い,同会員および同施設助産師の同意の得られた者を参加者とした.B施設は,妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援の強化を図るため実施された「妊娠・出産包括支援モデル事業」(厚生労働省,2016)にA県内で唯一取り組んだ地域より訪問事業を委託された施設であり,本研究において参加の協力を得た.

2. データ収集方法

調査期間は,2022年4月~6月で研究参加者に半構造化面接を実施した.具体的には,家庭訪問において,支援内容・支援についての思いや考え・助産師ならではの支援・家庭訪問の経験を重ねたことによる思いの変化・よりよい支援を行っていくためにどのような事をしたいと思うか等を質問し自由な語りを促した.面接は個室で行い,同意を得て録音し逐語録を作成した.

3. 分析方法

分析は,質的統合法(KJ法)を用いた(山浦,2012).助産師の経験から捉えた思いや考えから得られたバラバラな語りを見落としなく全体像をすくい上げ,先入観をもたずに客観的に分析を行うため,混沌としたデータをもとに実態把握を行い,法則的秩序を見出す仕組みである質的統合法(KJ法)が適していると考えた.

1) 個別分析

分析手順は,まず逐語録から参加者の思いや考えを広く取り出し,1つの意味のまとまり毎に区切り,そのまま表現を40~120字程度の一文にして1枚の元ラベルを作成した.次に,全てのラベルを丁寧に何度も読み,訴えてくる意味が類似したラベル同士を2~4枚寄せ集めて,グループを作成した(以下,グループ編成).集めたラベルの文章をさらに読み,グループが意味する内容を一文にまとめ新しいラベル(以下,表札ラベル)を作成した.表札ラベルは,グループ編成の段階が上がる度に番号を「A000」「B000」と示した.これらのグループ編成と表札ラベル作成の段階を繰り返し,段階が上がるごとに集める類似性の距離感と抽象度をあげ,最終的にラベルが5~7枚になるまで分析を行った.

そして,最終ラベル同士の関係性を探り,訴える内容が最も分かりやすく一貫した相互関係になるように空間配置図を作成した.さらに,最終ラベルの内容を凝縮した表現として【事柄:エッセンス】という二重構造を用いてシンボルマークを作成した.事柄はラベル内容のキーワードや象徴的な表現を用い,エッセンスはシンボルマークの内容を補足する表現で作成した.最後に,シンボルマークと関係記号の沿え言葉を用いて空間配置図を説明するストーリーを作成した.

2) 統合分析

分析手順は,個別分析と同様に,グループ編成と表札ラベル作成の段階を繰り返し最終的にラベルが5~7枚になるまで分析を行い,最終ラベル同士の関係性を探り関係記号と沿え言葉とシンボルマークを使い,空間配置図を作成した.そして,空間配置図より浮かび上がった全体像のストーリーを作成した.

また,個別分析10例の最終ラベルから2段下げたラベルを元ラベルとして使用した.理由として,個別分析の具体性とリアリティを残しつつ,分析の効率も考えた上で最終ラベルの2段下のラベルを使用するのが適切(山浦,2012)とされているためである.

4. 信頼性と妥当性の確保

分析の信頼性と妥当性を確保するために,研究者は質的統合法(KJ法)の研修を受講し分析を行った.全ての事例で質的統合法(KJ法)に精通している研究者および家庭訪問支援に精通した大学院の指導教員によりスーパーバイズを受け分析を行い,信頼性と妥当性を高めた.また,個別分析の結果を参加者に示し内容の妥当性を確認した.

5. 倫理的配慮

本研究は,東京医療保健大学倫理委員会(承認番号 院33-90A-R3)の承認を得て実施した.研究参加者に対して,自由意思による参加,同意撤回の権利,匿名性の確保と個人情報の保護,データ厳重管理,結果の公表方法について説明し,同意を得て実施した.

Ⅴ. 結果

1. 参加者の概要

参加者は,助産師10名,年齢は30~60歳代(平均47.3 ± 9.7歳),助産師の経験年数は7~36年(平均21.5 ± 8.7年),家庭訪問の経験年数は1~20年(平均6.6年),年間訪問件数は約7~200件(平均91.7件/年)であった(表1).面接時間は40~59分(平均49.4分),ラベル数は84~180枚(平均126.5枚)であった.対象者の主な就業場所は助産所が5人,次いで行政機関(非正規雇用)が3人,病院が2人であった(表1).表1に参加者の特性と個別分析のストーリーを示す.

表1 研究参加者の概要と個別分析におけるストーリー

参加者 年代
(経験年数)
面接時間
(元ラベル数)
就業場所 個別分析におけるストーリー
1 A氏 60歳代
助産師経験:27年
家庭訪問経験:20年
年間訪問件数:約190件
面接時間:54分(ラベル:180枚) 助産所 A氏は,家庭訪問支援の[助産師の役割]として[訪問支援における曖昧な独自性]を感じていた.しかし,その反面で[助産師の専門的支援]として[母親の心身を熟知した生活支援]を行っている.ゆえに,[出産体験を肯定的にする関わり]や[心身への労いとエール]につながり,専門性を発揮している.この[バースレビューの支援]と[母親が一番という支援]の2つは,それぞれがますます専門性を発揮することにつながっている.また,[訪問支援における研鑽]と[助産師としての研鑽]の二つの研鑽があり,さらに支援能力の向上へとつながっている.この2つは,善循環サイクルをなして[初対面で聞き取る対応力]の研鑽により[出産体験を肯定的にする関わり]ができ,もう一つの[母親へのメンタルケアと児のケア]の研鑽により[心身への労いとエール]という支援を実践している.
2 B氏 50歳代
助産師経験:36年
家庭訪問経験:4年
年間訪問件数:約60件
面接時間:46分(ラベル:128枚) 行政機関(非正規雇用)
教育機関(非正規雇用)
B氏は,[物理的な距離から選んだ地域支援]という[担当地域の設定]があるとともに,[限定された訪問時間]で[時間内に本音を引き出す工夫]を実践している.これらは限定された地域と時間の支援として共通しており,その中で[母の変化に気づき経過に沿った支援]が実践できていることから[担当助産師の重要性]を感じている.さらに[より深い母の理解と支援]へつなげるために[訪問前後の連携]をしたり,[地域から見た母子の環境]を丁寧に把握しながら[訪問時の家族間調整]も実践している.このように保健師と連携をしながら家族を含め母の理解を深めた支援をしており,だからこそ[職種に捉われない専門性の発揮]をしながら[支援をつなげる重要性]を大切にしている.
3 C氏 40歳代
助産師経験:20年
家庭訪問経験:10年
年間訪問件数:約200件
面接時間:48分(ラベル:101枚) 助産所 C氏は,[得意な訪問支援]として[母に自信をもたす具体的な授乳指導]を実践している.しかし,その反面で[不得意な訪問支援]として[知識と経験の不足からくる研鑽の必要性]を感じている.そして,この[得意な訪問支援]を発揮しているがゆえに,[専門職役割の限局]という[その場限りでは手応え不足]という思いにつながっている.また,不得意な訪問支援や手応え不足を感じる結果として,[母に必要な多様な支援]へと繋げるため[多職種連携の促進]を行っている.そして,手応え不足と多様な支援の必要性を感じていることが影響し,地域では[家族の変化を深く理解した関わり]の重要性を感じ,助産師として[限局されない役割]を長期的に継続していく必要性を感じている.
4 D氏 40歳代
助産師経験:21年
家庭訪問経験:6~7年
年間訪問件数:約100件
面接時間:49分(ラベル:124枚) 行政機関(非正規雇用) D氏は,[実践値を活かした思いの受容]として[否定しない本音の語り]を実践している.だからこそ[母児の経過と思いをくみ取った助言]をしながら[つながりを見据えた育児技術支援]ができたり,もう一方で[関係性や能力を含めた支援者の理解]を通して[母なりの育児ができる支援]を実践している.さらに,この支援者の理解は,他職種の[連携に必要な役割への理解]に影響し[母児支援に向けた専門職の適材適所]を活かした実践につながっている.また,[つながりを見据えた育児技術支援]ができている反面で,[対話の難しさと支援への心残り]から[限局された訪問への役割不足感]を感じている.この役割不足感と専門職としての役割を理解しているからこそ,[妊娠中からつなげる支援に期待感]をもち[継続したかかわりへの意気込み]へとつながっている.
5 E氏 50歳代
助産師経験:22年
家庭訪問経験:15年
年間訪問件数:約180件
面接時間:67分(ラベル:157枚) 助産所
行政機関(非正規雇用)
E氏は[妊娠期からの支援]として[思いから汲み取る母の理解]を心掛けており,ゆえに[母を大切にする支援]として[安らぎを与える心身のケア]の実践へとつながっている.また,[学習から培った支援]として[より効果的なケアの探求]をしており,そしてこれは[思いを優先した関わり]を通して[母への手厚い支援]の実践につながっている.これらから,だからこそ[母からの肯定的な言葉や笑顔]から[支援の充実感]を感じている.しかしその反面で,[母乳育児支援を続ける限界]の中で[長期的な支援の重要性]を感じていたり,[初回連絡の対応力]の限界から[訪問に至らない母への課題]を見出している.
6 F氏 60歳代
助産師経験:27年
家庭訪問経験:20年
年間訪問件数:約195件
面接時間:42分(ラベル:95枚) 助産所 F氏は,[積み上げた学習と経験を発展]させながら[助産師としての専門性を再認識]している.さらに,家庭訪問支援を経験する中で,[支援の間を埋める役割]を感じ[つなげる視点の必要性]を重視している.さらに,母へ[愛情を注ぐ支援の重要性を再認識]し[自己肯定感を高める関わり]も大切にしている.そして,この思いを元に[語りから導く分娩の振り返りと母親役割獲得]を通して[母の育児をサポート]したり,[発達支援への自信と専門性を広げる必要性]を感じながら[学習を積み子の発達をサポート]している.さらに,これらの支援を通して,必要な訪問支援が見えているからこそ[母の思いや力量に合わせた臨機応変な対応]を実践することで[セルフケア能力を高める指導]を心掛けている.
7 G氏 30歳代
助産師経験:7年
家庭訪問経験:1年
年間訪問件数:約80件
面接時間:42分(ラベル:84枚) 行政機関(非正規雇用) G氏は,助産師だからこその[経験値を活かした助言]を通して[肯定的な反応に手応え]を感じている.また[助産師だからこその母乳育児支援]を実践しながら[乳房管理の奥深さと専門性の追求]したい思いを抱いており,この手応えと専門性を追求する思いはお互いに高め合っている.これらの思いを基盤に,[スキンシップの大切さを伝授]する助産師らしい[愛着形成を促進する支援]や,[心身の不調を汲み取り]ながら実践する[母の些細な変化を捉えた支援],そして[家族の関係性や力量に合わせた支援]である[家族間の調整をする支援]という3つの支援の実践につながり,これらは善循環サイクルをなして促進し合っている.しかし,[限られた訪問支援への未達成感]を感じていることで[伴走者として継続支援への意欲]へとつながっている.
8 H氏 50歳代
助産師経験:7年
家庭訪問経験:1年
年間訪問件数:約80件
面接時間:47分(ラベル:130枚) 病院 H氏は[産後4か月までに多い母乳育児への不安]を通して助産師の[訪問の必要性]を感じており,そして[経験を活かした分娩体験の振り返りと本音の受容]を実践しながら[前向きな育児をめざし]ている.さらに[対価に見合ったサポート]を心掛けており[責任ある家族間とセルフケアの支援]を実践している.その反面で[本音の聞きづらさと経験不足]から[訪問支援の難しさ]も感じている.この[訪問支援の難しさ]と[対価に見合ったサポート]をしなければならないという相反する思いがある中で,だからこそ[支援充実のため異なる視点同士の補完]として[保健師と助産師の連携]を心掛けており,さらに[不安を抱えた母へのケア]には[社会全体で支える支援]の必要性も感じている.
9 I氏 50歳代
助産師経験:26年
家庭訪問経験:1年
年間訪問件数:約20件
面接時間:40分(ラベル:102枚) 病院 I氏は,[家族や助産師に頼れる環境作りと母への労い]を通して[母の心身を気遣う支援]を心掛けている.そして,その中でも[こだわりながら母の不安を拭える母乳育児指導]という[助産師らしい支援]を実践している.また,[訪問支援の心掛け]として[所属組織の責任感から問題を解決に導く支援]を実践している.そして,そのために[保健師との連携から得た異なる視点の学び]を得て[支援のスキルアップ]ができている.そして,[病院と異なる地域支援の連携や住民感情に配慮した訪問手段]を経験し,[他者から見た視点]という地域独自の視点を学ぶ事ができ,さらに[支援のスキルアップ]を加速させている.そして,助産師らしい支援と支援のスキルアップを実践している結果として,[母への深い理解と感謝の言葉]から[訪問支援の手応え]を感じている.しかしながら,現在訪問支援が実践できていない現状から[病院業務を超えて訪問につなげる役割の未達成]を感じ[助産師の訪問支援の妨げと必要性]を感じている.
10 J氏 40歳代
助産師経験:17年
家庭訪問経験:2年
年間訪問件数:約70~80件
面接時間:59分(ラベル:164枚) 助産所 J氏は,[病院時代に地域とのつながりから得られた興味]として[地域の母子支援への関心]を持っていた.そして,訪問活動を通して[つなげる支援の大切さ]を感じ[母の経過を丁寧に捉え病院と地域の支援を結ぶ関わり]を心掛けている.そして,このような[地域の母子支援への関心]がある中で,[つなげる支援の大切さ]を感じながら,実際に助産師として[前向きな子育てをするための分娩の振り返り]を通して[子育てのスタートを後押し]している.さらに,[母の思いを聞き出す工夫]を実践しながら,[本音を聞く工夫から得られた支援の手がかりとやりがい]を感じている.しかし,地域の経験を積み重ねて[4か月以降の子どもを多角的にみるスキルの不十分さ]から[発達相談の難しさ]も感じている.そして,この難しさを感じながらも母の思いを大切にする中で,[母の望む支援の拡充]という[生活面も含めた幅広い支援の必要性]を感じている.

参加者が委託され訪問していた事業は,新生児訪問事業が最も多く9人,次いで,乳児家庭全戸訪問事業が6人,妊産婦訪問指導が6人,産後ケア事業が6人,産前産後サポート事業が3人,養育支援訪問事業が0人であった.また,養育支援訪問事業の若年の妊婦や産後うつ等のハイリスク例の訪問支援は実施していなかった.訪問支援内容は,対象者全員が,母の心身状態・母乳分泌・児の観察・サポート状況の把握・連携など母子の観察及び指導・支援を行っていた.

2. 分析結果

1) 個別分析の結果

個別分析の最終ラベルのシンボルマークを[ ]で示す.

個別分析の特徴として,[母が一番という支援(A氏)],[地域からみた母子の環境(B氏)],[知識と経験の不足からくる研鑽の必要性(C氏)],[母児支援に向けた専門職の適材適所(D氏)],[訪問に至らない母への課題(E氏)],[支援の間を埋める役割(F氏)],[家族間の調整をする支援(G氏)],[支援充実のため異なる視点同士の補完(H氏)],[保健師との連携から得た異なる視点の学び(I氏)],[本音を聞く工夫から得られた支援の手がかりとやりがい(J氏)]があった.

2) 統合分析における最終ラベルについて

統合分析は,個別分析より得られた123枚のラベルを用いて,10段階までグループ編成を行い6枚の最終ラベルが残った.最終ラベルを用いて空間配置図を作成した(図1).シンボルマークを【事柄:エッセンス】,最終ラベルを〔 〕,下位ラベルを〈 〉で示す.最終ラベルとシンボルマークと下位ラベルを表2に示す.最終ラベルにつけたシンボルマークについて表2の下位ラベルを用いて説明する.

図1  統合分析の空間配置図
表2 統合分析の最終ラベルとラベル例

シンボルマーク【事柄:エッセンス】 最終ラベル ラベル例
【心身の負担を減らす支援:母のあゆみと母児を紐づけるケアと必要な支援の見極め】
女性としてだけでなく妊娠出産を中心としたあゆみと今の母児の身体の状況を丁寧に紐づけてケアしたり,家族など支援環境や多職種の専門性を把握し必要な支援につなげるなど,母の心身の負担を減らす関わりを心掛けている.(J002)
(012)母と二人の方が家族計画の思いを察して話しやすく,女性として自身の体と心を意識して見つめていく話をしている.
(F007)特に育児に戸惑う産後4か月までの時期は,家族関係を念入りに把握して専門職として家族間のサポートもしながら,心身の負担なく協力を得て育児できるような支援を大切にしている.
(H003)母児の身体の状況とお産も含めこれまでのあゆみを紐づけて観察やケアをしたり,周りの支援環境や多職種の専門性を把握し必要な支援につなげるなど,訪問の役割を全うしようと心掛けている.
【分娩体験の振り返り支援:自身を肯定的に捉え直す関わり】
特に産後0~4か月がよいが,肯定的否定的に関わらず分娩体験の思いを引き出し,時には過去の自分のわだかまりも消化しながら,気持ちを整理して自信を持ち前向きな育児に向けた関わりを大切にしている.(B003)
(010)バースレビューをする機会がなく母から否定的な言葉を聞くが,お産には肯定的な面があるので,それを引き出し前向きな体験に関する関わりが必要であり,産後0~4か月がよい.
(070)母子手帳を見ながら分娩体験を振り返り,良かった体験だけでなく辛さも語ることで,思いを消化し分娩を乗り越えた自信をもちながら,母親役割獲得につなげられると思う.
【母の育児実践に向けた支援:身体的ケアから導き出す母の本音と生活に沿った支援】
母児の経過と助産師の信念を合わせたケアをしながら,妊娠期からの関わりだけでなく肌に触れる乳房観察やお産などの助産師経験を通して本音で語り合い,母が自身で実践できるよう生活の視点で助言できるのは助産師かなと思う.(J003)
(G002)妊婦訪問も含めて母の希望に対応するなど手厚く支援することで,母が心を開き頼ってくれたり,母に良い変化が起きるなど納得できる支援ができた時は手応えを感じる.
(F004)肌に触れる乳房観察や分娩体験を通して思いを読み解き母との関係性を深めたり,母児の状況や助産師の信念が合わさった乳房管理やマイナートラブルとベビー整体など児のケアはならではだと思う.
(H004)お産を経た思いや産後の問題など助産師経験を活かして本音と困り事を読み取り,母が自分で選び実践し自信ある育児に繋がるよう生活の視点で具体的に助言できるのは助産師かなと思う.
【多面的な支援の必要性:育児に揺れるすべての母を深く理解する困難さと重要性】
育児には誰しも孤独感や心身のしんどさを抱えており,その中で支援拒否や深刻なリスクがあるケースを経験することで,母を深く理解する難しさと重要さがわかり,社会全体で更に包括的な支援が必要だと思う.(I001)
(G005)孤独な母乳育児や様々な情報に惑わされる中で,24時間365日続く育児は母にとって負担と不安があるので,母がヒントを得られ笑顔で育児できるように社会全体も含めた関わりが必要だと思う.
(E004)訪問経験を重ねて,不安が強い母の背景を理解する事や精神疾患など支援が難しいケースや,日常的な生活面の支援など,幅広い支援が必要だと思う.
【地域に根差した継続的支援:訪問支援からみえた伴走型支援の重要性】
地域の支援に長い目でみて関わるゆとりがなかったので母が安心できる存在として長期的に見届けていきたいが,訪問支援を経験して生活者の状況や訪問支援特有の大変さなどを学びながら地域の中に入り自分なりに実践している.(J001)
(094)助産師になる人やお産も少ない中で施設では状況に応じて産科以外も担当するので,授乳指導も十分できていないし,新生児訪問まで目がいかず大事な支援だと思ってなかった.
(E002)産後ケアなど訪問以外で関われることも稀にあるが,1歳頃まで関わりたいし4か月以降は様子を聞くだけで終わってしまい気掛かりなので,母が安心できる存在として長い目で見届けていきたいと思う.
(105)訪問は記録や保健師への報告が必要だったり,出向く時は行政の車と分からないようにしたり狭い道中で重い荷物を持って何件も一人で回るなど,大変さや気をつける点が違うなと思った.
【保健師の協働:異なる強みや視点を活かした連携と相互理解】
訪問の役割や発達の支援など迷う事もあるが,保健師と強みや見方は異なり,先を見据えた視点は地域の助産師も学ぶ必要があるので,お互いを理解し尊重しながら連携することを大切にしている.(J004)
(H002)母子関係や子どもの発達など先を見据えた関わり方や,親の子どもの発達への理解や支援を受け入れられないことがあるので,その時の判断や対応に迷う事があり,もっと研鑽を積んでいきたいと思う.
(069)助産師はやっぱり新生児期が得意だが,地域の助産師も子どもの発達まで見る事が必須だし保健師さんと一緒にみていけるので,そんな助産師が増えてほしいと思う.
(D009)助産師と保健師は必要に応じて連携するので,どちらがいいとは言い切れないけれど,助産師は授乳相談やお産や産後早期の知識,保健師は先を見据えた発達指導などそれぞれ強みがあり見方も違うと思う.
(D012)母の希望や相談内容を見極めて保健師さんが訪問を振ってくれており,結局,助産師が訪問にいく基準があまりはっきりしていない.

(1) 【心身の負担を減らす支援:母のあゆみと母児を紐づけるケアと必要な支援の見極め】

助産師は,母の心身の負担を減らす支援を心掛けていた.まず〈母と二人の方が家族計画の思いを察して話しやすく,女性として自身の体と心を意識して見つめていく話をしている(012)〉ことから,助産師は母を一人の女性としてみる視点をもちながら支援していた.さらに,〈特に育児に戸惑う産後4か月までの時期は,家族関係を念入りに把握して専門職として家族間のサポートもしながら,心身の負担なく協力を得て育児できるような支援を大切にしている(F007)〉のように母の心身を大切に思い気遣う関わりがわかる.また,〈母児の身体の状況とお産も含めこれまでのあゆみを紐づけて観察やケアをしたり,周りの支援環境や多職種の専門性を把握し必要な支援につなげるなど,訪問の役割を全うしようと心掛けている(H003)〉のように,母児の経過を丁寧に把握し必要な支援を見極めていた.

つまり,助産師は母を大切に思い,地域のさまざまな支援や多職種の専門性への理解を経験と学習の中で深めながら,母児の経過を紐づけ家族や支援者などのサポート環境を把握することで必要な支援を見極め,支援をつなげることを訪問の役割の1つと捉えて,心身の負担を減らす支援を実践していた.これらより【心身の負担を減らす支援】をしていると捉えた.

(2) 【分娩体験の振り返り支援:自身を肯定的に捉え直す関わり】

助産師は,母から分娩体験の思いを引き出している.その理由は,〈バースレビューをする機会がなく母から否定的な言葉を聞くが,お産には肯定的な面があるので,それを引き出し前向きな体験に関する関わりが必要であり,産後0~4か月がよい(010)〉と考えているためである.さらに〈母子手帳を見ながら分娩体験を振り返り,良かった体験だけでなく辛さも語ることで,思いを消化し分娩を乗り越えた自信をもちながら,母親役割獲得につなげられると思う(070)〉と表現している.これらより,肯定的・否定的に関わらず分娩体験の思いを引き出すことで,母が過去に経験してきた思いも含めて気持ちを整理し,分娩体験を母の自信の一つにつなげるといった前向きな育児に向けた支援を大切にしていることがわかる.これらより【分娩体験の振り返り支援】を実践していると捉えた.

(3) 【母の育児実践に向けた支援:身体的ケアから導き出す母の本音と生活に沿った支援】

助産師は,〈妊婦訪問も含めて母の希望に対応するなど手厚く支援することで,母が心を開き頼ってくれたり,母に良い変化が起きるなど納得できる支援ができた時は手応えを感じる(G002)〉ことから訪問支援にやりがいを感じていた.

そして,助産師の独自のケアとして〈肌に触れる乳房観察や分娩体験を通して思いを読み解き母との関係性を深めたり,母児の状況や助産師の信念が合わさった乳房管理やマイナートラブルとベビー整体など児のケアはならではだと思う(F004)〉と捉えている.さらに,〈お産を経た思いや産後の問題など助産師経験を活かして本音と困り事を読み取り,母が自分で選び実践し自信ある育児に繋がるよう生活の視点で具体的に助言できるのは助産師かなと思う(H004)〉ということからも,直接肌に触れるケアや助産師経験の語りなど助産師の独自の関わりを通して心の壁を取り除き本音で語り合い,乳房管理など母のセルフケア能力を高める具体的なアドバイスに専門性を感じていることから,助産師の専門的支援であるといえる.これらより【母の育児実践に向けた支援】と捉えた.

(4) 【多面的な支援の必要性:育児に揺れるすべての母を深く理解する困難さと重要性】

助産師は,〈孤独な母乳育児や様々な情報に惑わされる中で,24時間365日続く育児は母にとって負担と不安があるので,母がヒントを得られ笑顔で育児できるように社会全体も含めた関わりが必要だと思う(G005)〉というように育児に揺れる母を理解している.さらに,〈訪問経験を重ねて,不安が強い母の背景を理解する事や精神疾患など支援が難しいケースや,日常的な生活面の支援など,幅広い支援が必要だと思う(E004)〉という気づきの中で,母を深く理解する大切さと支援の難しさも感じている.これらより,母の思いとニーズを深く理解した【多面的な支援の必要性】を感じていると捉えた.

(5) 【地域に根差した継続的支援:訪問支援からみえた伴走型支援の重要性】

助産師は,〈助産師になる人やお産も少ない中で,施設では状況に応じて産科以外も担当するので授乳指導も十分できていないし,新生児訪問まで目がいかず大事な支援だと思ってなかった(094)〉と語っている.しかし,訪問支援を経験し〈産後ケアなど訪問以外で関われることも稀にあるが,1歳頃まで関わりたいし4か月以降は様子を聞くだけで終わってしまい気掛かりなので,母が安心できる存在として長い目で見届けていきたいと思う(E002)〉と感じており,母の伴走者として病院だけの知識・技術だけでなく分娩施設を退院後から4か月以降に渡って長期的な視点をもつ必要性と支援への意欲を感じていることがわかる.

しかしながら,経験を重ね〈訪問は記録や保健師への報告が必要だったり,出向く時は行政の車と分からないようにしたり狭い道中で重い荷物を持って何件も一人で回るなど,大変さや気をつける点が違うなと思った(105)〉など,限られた時間と地域の中で,その地域の中に入り生活者の状況や訪問支援特有の大変さなどを学びながら自分なりに実践していることから,自身の役割を果たしながら【地域に根差した継続的支援】を目指していると捉えた.

(6) 【保健師との協働:異なる強みや視点を活かした連携と相互理解】

助産師は,〈母子関係や子どもの発達など先を見据えた関わり方や,親の子どもの発達への理解や支援を受け入れられないことがあるので,その時の判断や対応に迷う事があり,もっと研鑽を積んでいきたいと思う(H002)〉と自己研鑽の必要性を感じていた.さらに〈助産師はやっぱり新生児期が得意だが,地域の助産師も子どもの発達まで見る事が必須だし保健師さんと一緒にみていけるので,そんな助産師が増えてほしいと思う(069)〉のように,地域で活動する助産師にとって先を見据えた子どもをみる視点の必要性と重要性も感じていた.

助産師の役割について,〈助産師と保健師は必要に応じて連携するので,どちらがいいとは言い切れないけれど,助産師は授乳相談やお産や産後早期の知識,保健師は先を見据えた発達指導などそれぞれ強みがあり見方も違うと思う(D009)〉と感じている.これらから,それぞれ強みや見方が異なるからこそ,お互いを理解し尊重しながら連携することを大切にしており役割を補い合っていたことから,【保健師との協働】と捉えた.

3) 統合分析の空間配置図

統合分析で得られた空間配置図(図1)について,シンボルマークと関係記号の沿え言葉を用いて構造を示す.

地域で訪問支援を行う助産師は,【心身の負担を減らす支援】を専門的支援の手掛かりにしていた.さらに【分娩体験の振り返り支援】と【母の育児実践に向けた支援】の2つの実践が抽出され,これらはより専門性を発揮した助産ケアの核として通底していた.

しかし,その後,訪問活動を通して【多面的な支援の必要性】を認識せざるを得ない状況に直面したことで,だからこそ,【地域に根差した継続的支援】の重要性と【保健師との協働】の連携の在り方が相互に影響し合いながら,あるべき訪問支援の姿を模索している構造が明らかになった.

次に最終ラベルによるストーリーでは,助産師は,〔女性としてだけでなく妊娠出産を中心としたあゆみと今の母児の身体の状況を丁寧に紐づけてケアしたり,家族など支援環境や多職種の専門性を把握し必要な支援につなげるなど,母の心身の負担を減らす関わりを心掛けている〕(J002).さらに,〔特に産後0~4か月がよいが,肯定的否定的に関わらず分娩体験の思いを引き出し,時には過去の自分のわだかまりも消化しながら,気持ちを整理して自信を持ち前向きな育児に向けた関わりを大切にしている〕(B003).また,〔母児の経過と助産師の信念を合わせたケアをしながら,妊娠期からの関わりだけでなく肌に触れる乳房観察やお産などの助産師経験を通して本音で語り合い,母が自身で実践できるよう生活の視点で助言できるのは助産師かなと思う〕(J003)と感じており,これら3つを助産師の専門的支援として捉えていた.

しかし,訪問支援を重ねる中で,〔育児には誰しも孤独感や心身のしんどさを抱えており,その中で支援拒否や深刻なリスクがあるケースを経験することで,母を深く理解する難しさと重要さがわかり,社会全体で更に包括的な支援が必要だと思う〕(I001)と感じている.だからこそ,〔地域の支援に長い目でみて関わるゆとりがなかったので母が安心できる存在として長期的に見届けていきたいが,訪問支援を経験して生活者の状況や訪問支援特有の大変さなどを学びながら地域の中に入り自分なりに実践している〕(J001).さらに,〔訪問の役割や発達の支援など迷うこともあるが,保健師と強みや見方が異なり,先を見据えた視点は地域の助産師も学ぶ必要があるので,お互いを理解し尊重しながら連携することを大切にしている〕(J004)ということが示された.

Ⅵ. 考察

助産師が行う家庭訪問支援の構造から得られた専門性,及び家庭訪問の経験を重ねたことで見出された課題と家庭訪問支援の在り方について考察する.

1. 家庭訪問支援における専門的支援

助産師は【心身の負担を減らす支援】を通して,母を一人の女性として捉えるために【母のあゆみと母児を紐づけるケアと必要な支援の見極め】を行っており,具体的には,母子手帳からも母児の経過や授乳状況やニーズ等を読み取り,母の背景も踏まえながら心身の負担を減らす効果的なケアを見極めていた.先行研究では,分娩施設等で勤務経験がある助産師は「妊娠期からの経過を理解した関わり」や「入院中と比較したアセスメント」を産後訪問で実践している(久保ら,2022).本研究においては,母の背景まで把握した上で妊娠期からも経過を踏まえ,心身の負担を減らす支援を実践することで,母の本音を引き出し信頼関係を築くことができていた.

また,助産師は分娩体験を母と共有できる専門職であるため,出産から数週間以上経過している機会を活用し,【分娩体験の振り返り支援】を通して【自身を肯定的に捉え直す関わり】を実践していた.豊かな出産体験は母親役割の受容や児への攻撃的衝動性の抑制につながり(竹原ら,2009),出産のトラウマがあるときは長期にわたり母が語りたいときに語れるよう出産の振り返りを提供する必要性がある(鈴木・大久保,2018)ことから,産後0~4か月の家庭訪問で,【分娩体験の振り返り支援】を実践することで対象者へのニーズと時期を配慮した支援につながっている.さらに,育児期のバースレビューも有効である(中村,2018)ことから,産後4か月以降の節目における家庭訪問でも,母の分娩体験を振り返る機会を作っていくことが重要であるといえる.

さらに,【母の育児実践に向けた支援】として【身体的ケアから導き出す母の本音と生活に沿った支援】をしていた.具体的には,授乳や身体的ケア等の肌に触れるケアを通じて信頼関係の構築を図りながら,母の本音を聞き出しながら生活に応じた支援を提案し,母が自分なりに育児ができるよう日常生活に即した具体的な支援を実践していた.先行研究では,家庭訪問の支援者は,家庭も含めた「総合判断できるアセスメント能力」「相手の事を親身に考える努力をする意識」をもつことが課題(元山,2018b)とされているが,助産師以外の専門職では行うことが困難な身体的なケアを通じて信頼関係を得ることで,総合的なアセスメントに必要な本音を聞き出し,母にとって必要な実践に向けた支援を展開できていると考える.開業助産師などは家庭訪問支援に手応えややりがいを感じている(諸橋・関島,2021渡邊・赤星,2021)ことから,助産師の身体的ケアは母の信頼関係を得て支援に必要な情報を得るために重要であるといえる.

助産師が行う家庭訪問の専門的支援は,【心身の負担を減らす支援】を手がかりとし,【分娩体験の振り返り支援】と【母の育児実践に向けた支援】の2つの実践を助産ケアの核として通底していることが明らかとなった.

2. 家庭訪問支援における課題

家庭訪問において助産師の専門的支援を実践していく中で,【育児に揺れるすべての母を深く理解する困難さと重要性】を経験することで【多面的な支援の必要性】を感じ従来の助産師の専門的支援だけでは限界を認識していた.先行研究において,地域母子保健を担う助産師は,「孤立した子育て」や「情報に振り回される母親」,「子育てに関する生活体験や知識が不足している親」などの現状を捉えている(及川ら,2022)が,課題を把握している一方,地域で生活をしている母の幅広いニーズに合わせた支援が十分にできていないと考えられる.今後,助産師が訪問活動を継続する上で,母の思いやニーズに耳を傾けながら対象の多様性を深く理解し,多職種と連携しより良い支援に向けて模索していくことが重要であるといえる.

専門的支援の枠を超えた多面的な支援として,【訪問支援からみえた伴走型支援の重要性】を感じながら,【地域に根差した継続的支援】を実践していた.

本研究では,産後4か月以降に渡って母が安心できる存在として長期的に関わる必要性を感じていた.助産師は「母子が生活する地域の特性を踏まえ,母子とその家族の状況に応じて,健康診査や相談,訪問を通して,対象の健康維持,増進を支援する」という実践能力が求められている(日本助産師会,2021)が,地域に根差した伴走型支援を行うために必要な地域の特性と関連付けてアセスメントする視点は明らかにされず,助産師は,産後4か月以降も母の伴走者として支援を継続したいという葛藤を抱えながら,地域の支援を学び自身の役割を果たそうと努めていた.

また,【異なる強みや視点を活かした連携と相互理解】の重要性を感じることで【保健師との協働】を促進させていた.

地域の助産師と保健師の連携に関する文献レビューの研究では,育児不安や虐待予防などが多く(岡田,2015),家庭訪問の連携に関する研究は少ない.施設助産師と保健師の連携に関する先行研究では,服部ら(2019)は,助産師が「保健師と直接的な連携が取れていない」ことを課題とし「保健師との情報共有の場があるといい」と認識を示している.大友・麻原(2013)は,施設助産師と保健師の連携のあり方として「文書だけではない情報交換が重要であり,助産師と保健師の信頼関係があることで実践できていた」ことを示している.本研究では,文書だけでない情報交換を行ったことで互いを理解し尊重しながら連携することを大切にしていた.助産師と保健師は,支援目的や訪問結果などの情報を共有しながら,それぞれの役割を模索し続けながら支援を強化していくことが重要だといえる.

産後4か月以降は,1歳までを目安に母子に対するケアが求められている(日本助産師会,2024).本研究より,訪問の役割や発達の支援などの迷いから,先を見据えた子どもをみる視点が課題であると捉えていた.助産師は,「乳幼児の発育・発達に応じたアセスメント」が必要な能力(日本助産師会,2017)とされているが,産後は乳幼児健康診査など保健センターが母子保健の役割を担っており,産後4か月以降は地域の助産師が関わる機会が少ないと考えられる.先を見据えた子どもをみる視点は,産後4か月までをより強化することが必要である.産後4か月以降は,乳幼児健康診査等で助産師として必要な支援を行いつつ,保健師等の専門職へ支援をつないでいくことが重要である.助産師が中心的に関わる支援の時期を区切ることで,その期間内で助産ケアをより深めることができると考える.今後保健センターなどの市区町村で助産師の配置が増えることによって,保健師と協働して乳児期の支援をより充実させる可能性もある.これらの課題に取り組み,保健師を含む多職種との協働をさらに強め,母子へのより充実した支援を目指すことが重要である.最後に,市区町村で常勤として活躍する助産師が増えることの一助となることを期待したい.

【地域に根差した継続的支援】の困難さと重要性と【保健師との協働】を促進する必要性の理解を深めることで,互いにますます影響しあうという構造を示していた.さらに,本研究では保健師との協働を課題としているが,訪問支援に携わる様々な専門職とも,相互理解をさらに深め異なる視点同士を補完し協働を心掛けていくことが重要であるといえる.

本研究では,産後0~4か月の母子を対象に自治体で行っている助産師による家庭訪問活動の経験から捉えた支援より専門的支援と課題を明らかにした.助産師は,家庭訪問で乳房ケアや分娩の振り返りを助産師の強みを生かしたケアと感じ(久保,2022),一人で活動する家庭訪問に困難さを感じている(渡邊・赤星,2021).本研究では,保健師と協働することで自身の活動を振り返り,家庭訪問での異なる強みと視点や地域の支援を学びながら課題に気づくことができ,より充実した支援を実践していた.

Ⅶ. 研究の限界と今後の課題

本研究の強みは,産後0~4か月を対象とした家庭訪問において助産師の経験から捉えた支援に着目し,支援の構造化を行うとともに,助産師の専門的支援と課題を指示した点である.また,これから助産師の地域活動が拡大する上で,母子へのより充実した支援と助産ケア向上のエビデンスの補強になるものと考える.

一方で,本研究の限界として,1県の産後0~4か月の母子を対象に自治体で家庭訪問活動を行う助産師10名からのデータを分析しており,限定された地域の参加者による結果であることや,地域における支援体制の違いや地域性に限られた傾向がある可能性は否定できない.

Ⅷ. 結論

地域で家庭訪問を行う助産師の専門的支援と,地域に根差した継続的支援や保健師と協働した家庭訪問支援の在り方についての構造が示された.今後の課題として,助産師が母子への継続的支援の時期を見極めることや多職種の専門性の理解を深めることが重要である.助産師や保健師などの専門職が相互の専門性を補完しながら地域の実情に応じた体制で協働していくことが重要であると考えられる.

付記:本研究は,東京医療保健大学大学院和歌山看護学研究科修士課程で提出した修士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.本論文の内容の一部は,第44回日本看護科学学会学術集会において発表した.

謝辞:本研究にご協力くださいました研究参加者の皆様,関係者の皆様に心より感謝申し上げます.また,東京医療保健大学大学院和歌山看護学研究科在学時にご指導くださいました先生方,および本研究に関する貴重なコメントを頂きました査読者の先生方に感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:YKは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,解釈,原稿作成までの研究プロセス全体を行った;NTおよびHHは研究の着想およびデザイン,原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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