日本看護科学会誌
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胃切除を受ける早期胃癌患者に対する認知行動療法
-セルフエフィカシーと心理的ストレスに対するノート記述と面接による介入効果-
神〓 初美城戸 良弘
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2002 年 22 巻 4 号 p. 1-10

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抄録

本研究の目的は, 告知され手術を受ける胃癌患者のストレス認知に対して, 認知行動療法による介入研究を行い, 患者のセルフエフィカシーの強化と心理的ストレス軽減を目指すものである. 介入内容は, 毎週の面接と患者自身によるノート記述(セルフモニタリング)であった. 研究に使用した概念モデルはストレス対処理論(Lazar & Folkman, 1984)で, 対処の自己効力概念についてはBandura (1977, 1986) の社会的学習理論を用いた.
本研究の介入評価には, 気分(DAMS: 福井, 1997), 一般性セルフエフィカシー(GSES: 坂野ら, 1986), 心理的ストレス反応 (SRS-18: 鈴木ら, 1997) の測定尺度を用いた. 研究参加者は26名(介入群14名, 非介入群12名)であったが, うち対象者は20人(介入群9名, 非介入群11名)であった. 介入評価時期は, 介入開始前 (告知後一週間), 退院時, 退院一ヶ月後の3時期とした. 結果は以下のとおりである.
1) 平均値比較では, 退院時の「SRS-18総得点」・「SRS-18抑うつ不安」因子, 退院一ヶ月時の「SRS-18抑うつ不安」因子が改善していた(p<0.05).
2) 経時変化比較では, 介入開始前から退院において, 介入群の「DAMS肯定的気分」が非介入群に比べて改善(p<0.05)していた.
3)群別多重比較では介入群は, 退院時の「気分」が非介入群より改善していた. また, その効果は退院一ヶ月も持続していた(P<0.05).
4) しかし一般性セルフエフィカシーの強化は退院時も退院後一ヶ月も, どの尺度においても認められなかった.
本介入では, 退院・退院一ヶ月時において「気分」やストレス反応の「抑うつ・不安」に対する介入効果は見られた. しかし本介入による一般性セルフエフィカシーへの効果はみられなかった.

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