日本看護科学会誌
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双子の一方に障害児をもつ母親の社会化プ口セス
泊 祐子
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2005 年 25 巻 1 号 p. 39-48

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抄録

本研究は, 双子の一方に障害児をもつ母親の社会化プロセスを明らかにすることを目的に, グラウンデッドセオリー法を用いた.
研究参加者は, 双子の一方に障害児をもつ配偶者のいる母親14名である.
得られた上位カテゴリは, <双子としての育児の始まり>, <双子に障害児と健常児をもつ母親の役割認知と取得>, <双子という既成概念への葛藤から解放>, <人の役に立つ自分になる> の4つであつた.
母親の社会化プロセスとしては, 障害の告知後<双子に障害児と健常児をもつ母親の役割認知> は, 障害児をもつ特徴の【障害へのなじみのなさからくる戸惑い】や【障害があつても命は大切】を感じるとともに, 双子の特徴である【双子の比較で障害を直視する】ことや,【双子で障害児ゆえの多忙な日常性を思い知る】という両方に共通する経験をしながら【父親との親意識の相違を認識する】プロセスを辿つていた.
母親は<双子という既成概念への葛藤>を,【双子に愛情半分ずつとはうまくいかない】と【双子でよかつた】という経験からしていた.【精神的強みを獲得する】,【障害児の後ろ盾となる】という主体性を獲得することによつて,<双子という既成概念からの解放>され,【双子の発達の開きすぎに双子の意味を喪失する】と【双子でも躾の違いは当然】と思えることが起こると考えられる.
双子の一方に障害児をもつ母親の社会化プロセスは, 双子という既成概念への囚われから解放され, 母親自身がく人の役に立つ自分になる> という社会的自我を形成するプロセスであると考えられる.
この研究結果を, 地域で生活する親・家族に対する育児支援の時期とタイミングおよび支援の区切りを予測する目安として用いることができる. また長期的視点に立つ家族看護システムの構築が示唆された.

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