2005 年 25 巻 3 号 p. 31-40
本研究は, 精神科勤務の看護者のバーンアウトと医療事故との因果関係を検討したものである. 精神科を主とする16病院に勤務する全看護者1,684名を対象に自己記入式質問紙調査を行い, 1,295名の有効データを得た. データ収集は研究用日本版Maslach Burnout Inventory-General Survey, 臨床看護職者の仕事ストレッサー測定尺度, General Coping Questionnaire特性版, 医療事故に関する質問紙を用いて行った. 最終的に仕事ストレッサー, コーピングスタイル, バーンアウトと医療事故との関係を示した因果関係モデルが構築され, 次のことが示唆された. 仕事量の多さや患者との関係に由来する負担感や葛藤が続くと, バーンアウトの最初の現象である疲弊感が生じる. この疲弊感は, シニシズム的態度というバーンアウトの次の現象を生む. 患者に対する冷淡で無関心な態度は患者関係にうまく対応できない看護者で特にみられるが, 職場の上司や同僚関係に悩んでいる看護者もそのような態度に陥りやすくなると考えられた. 看護者のこのようなバーンアウト状態が医療事故発生を導く. 特に感情表出型のコーピングスタイルをとる看護者はバーンアウトに陥りやすく, 医療事故発生に繋がりやすい集団と考えられた.