2005 年 25 巻 4 号 p. 22-29
現在, 分娩時の会陰損傷を防止するための方策として, 妊娠末期に妊婦が会陰部自己マッサージを行うことが注目されている. このような状況を受け, 初産婦に対して, マッサージの効果に関する無作為化比較試験を行った. 対象の条件を満たした90名のうち, 協力の得られた63名を介入群 (30名) と対照群 (33名) に割り付け, 介入群には自己マッサージ法を週4回以上, 分娩まで (3週間以上) 実施してもらった. 第一義的なエンドポイントである会陰切開施行率の減少については, 介入により21%減少がみられたが, 統計的に有意な減少には至らなかった. 第2のエンドポイントである会陰損傷の程度の比較でも, 介入群をマッサージ続行者に限定した比較においてのみ, 対照群よりも介入群のほうが, 損傷の程度が軽度であった. これらの結果から, 妊娠末期における会陰部自己マッサージは, 初産婦の経腟分娩において会陰切開施行率を低下させ, 会陰損傷を軽度にする効果があるとは認められなかった.
しかし, 今回の結果は, 検出力の不足が関係している可能性もあり, 今後必要対象数を満たした追試を行う必要がある.