本研究では,馴染みの薄いにおい刺激(アニスシード・オイル)に対して異なる情報付与を行い,それぞれの情報付与がにおいにする主観的反応および心臓血管系の反応に及ぼす影響について検討した.本研究はヘルシンキ宣言および文京学院大学倫理委員会規定に則って行った.その結果,これまでの我々の報告と同様に情報付与の内容によってにおい刺激に対する主観的反応が有意に変化した.さらに心臓血管系反応の一部の指標にも情報付与の効果による反応の違いが見られた.具体的には,におい刺激に対してネガティブな情報を与えられた群はポジティブな情報を与えられた群に比して当該におい刺激をより不快に感じ,さらに収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)において血圧上昇が確認された.以上の結果から,におい刺激に対して予め情報付与によって植えつけられた先入観がにおいの知覚・認知に影響を与え,その影響が主観的指標のみならず心臓血管系反応にも見られることが明らかになった.