2015 年 46 巻 5 号 p. 346-349
清酒には多くの味と香りの成分が含まれており,特に香りは清酒の第一印象を特徴づける重要な因子である.香りの中でも,フルーティーな香り“吟醸香”を代表する香りとして,リンゴ様の香りであるカプロン酸エチル,バナナ様の香りである酢酸イソアミルがある.それぞれの香りは,清酒酵母が発酵醸造中に生成し,その生成機構も近年明らかになっている.カプロン酸エチルは酵母の脂肪酸合成経路から生合成し,酢酸イソアミルはアミノ酸合成経路から生合成される.それぞれの香りを多く生成する酵母育種方法も開発され,現在清酒醸造において,実際に実用酵母として用いられている.