2017 年 48 巻 6 号 p. 418-428
難消化性オリゴ糖や食物繊維は消化管における糖質消化酵素によって加水分解されることなく大腸へ到達し,そこに棲息する腸内細菌によって発酵を受けて,短鎖脂肪酸の他,炭酸ガス,水素ガス,メタンガスなどに代謝される.難吸収性の糖アルコールや希少糖も腸内細菌による発酵を受ける.産生された短鎖脂肪酸は吸収上皮細胞から吸収された後,宿主のエネルギー源として利用されるので,消化吸収されない糖質であってもエネルギー源として宿主に寄与している.経口摂取した難消化吸収性糖質がほぼ完全に発酵を受けた場合には,2kcal/1gのエネルギーを産生する.一方,腸内細菌由来の水素ガスは,その大部分が吸収上皮細胞から吸収され,呼気へ排出される.我々は,呼気水素ガス排出が糖質の小腸における消化性と大腸における発酵性を反映することを明らかにし,呼気水素ガス排出量を1つの指標として難消化性糖質素材の有効エネルギーを評価する方法を提案した.消化吸収性および難消化吸収性を含めた総糖質の生体利用性を評価するためには,血糖値やインスリン分泌応答に加えて呼気水素ガス排出量を生体指標に加えて総合的に評価することを提案したい.