抄録
この半世紀わが国の年死亡数は一貫して上昇し、今後もさらに増加することが見込まれている。死者に対する弔いの形態は、地域や住民の文化、民俗性に極めて依存するものであるが、死亡数の増加に伴い、わが国の葬儀業の規模や従事人数が今後も増大傾向であると考えられる。多死社会の到来とともに、御遺体を取扱い、御遺族と接する業務に従事する労働者数は増えると予想される。届け出承認制度がない葬儀業の現状の労働安全衛生に関して、感染対策や、安置施設の冷蔵庫不足、ドライアイス取扱いや換気意識に関する課題が指摘される。重量物搬送、化学物質曝露、メンタルヘルス対策等とあわせ、厚労省研究班が実施した全国調査概況から示唆される労働衛生上の様々な葬儀業特有の課題を抽出し、特に感染対策と室内環境対策を中心とした基準ガイドライン作成にむけた方向性を提示する。