本稿は、Industry 4.0(I4.0)の技術革新が労働安全衛生(OHS)に与える影響と、それに適応する規制の在り方について文献レビューを基に考察している。I4.0では、AI を用いた自律的なロボットなどが導入され、作業の効率化とリスク低減が期待される一方で、新たなリスク(特に心理社会的リスク)や規制の課題も浮上している。I4.0 においては、規制が技術の進化に追随できず、従来のルールでは不十分である。そのため、プログラマーや製造者にリスク管理の責任を委ね、共同規制の仕組みを構築する必要がある。更に、ウェアラブル技術による健康モニタリングや、ビッグデータの活用によるリスク予測、プライバシー保護を伴うデータ管理の適正化(単なる強化ではない)が求められる。結論として、OHS 規制は予防的かつ柔軟であるべきであり、技術開発を阻害しない規制と共に、新技術の利点を最大限活用するためのガイドラインやセーフティネットの整備が不可欠とされる。リスクの予見及び管理が可能な者(広義のリスク創出者)に管理責任を課す原則の採用や徹底も必要である。これにより、設計者や製造者、プラットフォームや(部分的には)仕事の注文者らにリスク防止の責任を課すことができる。これには、受注者が安全かつ持続的に仕事を遂行できるかを確認する責任も含まれる。特に心理社会的リスクには、人と組織の相性や能力の適合性を重視したアプローチが重要である。
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