産業保健法学会誌
Online ISSN : 2758-2574
Print ISSN : 2758-2566
事例検討
多職種で考える合理的配慮
~高次脳機能障害の復職事例を用いて考える~
辻 洋志仲井 敏治日比 友美子井上 洋一丸山 泰子
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2025 年 4 巻 2 号 p. 60-67

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抄録
本稿は、高次脳機能障害を有する労働者の復職事例を題材に、日本産業保健法学会が実施した事例検討研修会の成果を報告するものである。対象事例は、勤務中に脳出血を発症した40代男性が高次脳機能障害を残しつつ復職を試みたケースであり、就業継続に向けて、産業医、保健師、人事労務担当者、弁護士など多職種が関与した。研修会では、復職可否の判断、復職後の職務調整と合理的配慮、障害特性に基づく職務適性評価、個人情報の開示範囲などについて活発な議論が行われた。医学的視点からは、急性期から生活期・職業期に至るリハビリテーション連携と障害管理の重要性が指摘され、法的視点からは「治癒」と原職復帰の原則および合理的配慮の範囲が整理された。さらに、人事労務の観点からは、不確実性の高い状況下で合理的判断の基準をいかに設定するかが課題として示された。本事例を通じて、復職支援には社内外リソースの統合、多職種連携、そして企業としての一貫した合理的判断が不可欠であることが明らかとなった。
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© 2025 一般社団法人日本産業保健法学会
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