2016 年 3 巻 1 号 p. 8-15
企業の経営者は、労働者の不健康による勤労意欲の低下に注意しなくてはならない。本研究では、「不健康による勤労意欲の低下」に関連する因子を探る。これらの因子として、7つの保健行動(喫煙、飲酒、朝食、間食、睡眠、適正体重、身体活動)、精神的疲労、身体的疲労に着目した。人々の保健行動は、時と共に変わる。ゆえに、保健行動の効果を定量化するためには、現在の保健行動のみでは不十分かもしれない。そこで、各保健行動に関して、無記名式の自記式調査票で過去から現在までの保健行動の平均を求めた。本研究の解析で使用した質問項目のうち、1つでも欠損値のある対象者を解析対象から外した。 その結果、535 名を解析対象とした。平均年齢は38.4歳で標準偏差は10.8であった。重回帰分析の結果、適切な保健行動を実践して来た労働者ほど、不健康による勤労意欲の低下はなかった。また、精神的疲労と身体的疲労のある労働者は、不健康による勤労意欲の低下が認められた。男性は、女性よりも不健康による勤労意欲の低下が認められた。保健行動の効果を定量化するためには、現在の保健行動の他、過去の保健行動についても考慮に入れる必要性が示唆された。今後の検討課題として、過去から現在までの保健行動をより適切に定量化するための分析手法について検討する必要性がある。また、対象者が過去の生活習慣を正確に思い出すことに限界があることから、無記名式の自記式調査票ではなく、労働者の保健行動を定期的に記録し、そのデータを分析する必要性もある。