目的:本研究では,事業場内で産業看護活動を行う看護職が,労働者の健康に関する個人情報を事業者と共有する際に経験する困難の実態を明らかにする.方法:2017年9~10月,日本産業衛生学会産業看護部会員と日本産業看護学会員1,793名を対象に自記式郵送質問紙調査を実施した.記述統計量を算出し属性との関連を検証した.自由記載は内容分析の手法に準じ分析した.結果:回収率23.8%,有効回答384名(21.8%)であった.困難の経験が「よくあった」27.6%,「ときどきあった」54.9%であった.業務別ではメンタルヘルス対策,内容別では「産業保健活動における必要範囲がわからなかった」で多かった.困難の経験には当該事業場での就業年数が関連していた.考察と結論:回答者の大部分が何らかの困難を経験していることが明らかとなった.就業上の配慮を要する場合,本人同意の必要性を認識する一方で安全配慮義務履行補助や集団の利益を考慮し,倫理的困難が生じると考えられた.