抄録
視機能看護の分野は,感覚機能,その中でも視機能を中心に,それに関連する看護の分野が広くかかわっている。もちろん,この分野の中心には眼科疾患を中心とした「見える」「見る」機能に対するケアを展開するものではあるが,「見える」「見る」には眼科疾患に限らず,人の日常的な身体機能の一つである眼に影響する他の機能―例えば,身体的には,内分泌疾患,神経疾患,加齢現象など様々な機能がかかわり,心理的には気分障害や認知機能にかかわるものなども含まれてくる。さらに,社会的な側面としては,治療の経過にかかわる時間,塲,コストなど広範囲な次元をとらえる必要もある。そして何よりも,視機能とは人の実存的な側面であるその人自身の「見えにくさ」「見えない」ことにかかわるその人の病いの体験や価値観,そしてその人の存在それ自体を揺るがすものでもあるだろう。そのような前提で考えていくと,視機能看護がかかわるケアの領域は実に多様であり,広範囲な探究の射程範囲が存在するはずである。
眼科病棟に勤務する人たちが多い視機能看護学会において,どのような研究の取り組みの可能性があるのか,そして研究する臨床の看護に携わる人や,学会としての組織的な取り組みについても,少しでもヒントが得られればと思い,ほんのわずかな提案になるかもしれないが,示してみたい。
本稿では,視機能看護分野の知の構築に向けて,何をどのように探究していく必要があるのかについて,研究的な取り組みによって,基盤構築の手がかりを手繰り,看護研究の進め方・論文の書き方に触れて,研究における問い(目的)を明確にしていく方法を示す。