本稿では,日本国憲法の人権規定の解釈論を手がかりとして,ASD 当事者への支援のあり方について考察した。具体的には,まず,(1)最近のASD 研究の動向と近年有力化している憲法13 条の解釈論をあわせて考慮すると,ASD 当事者が障害の克服や治療を強いられることなく,ありのままの存在として 生きていけるように「社会を変えていくという形での支援」が重要であると指摘し,その観点から発達障 害者支援法の問題点について検討した。その上で,(2)ASD 当事者への特別支援教育においても,従来から行われてきた「社会適応の努力を求める方向での支援」,「ASD 当事者が変わるための支援」に加えて,「ASD 当事者が安全・安心感をもって学校生活を送ることができるように環境整備を行うという形での支援」をも充実させることが重要であると論じ,ASD 当事者側がどのような支援を受けるかを自己決定に よって選択できるようにすることが望ましいことを指摘した。