ASD の養育者が虐待加害にいたる過程を分析するとともに,支援される必要を指摘した。社会性 の問題に関連しては,女性の場合には自らの母親や支援サービスなどとの不適切な関係から,養育が閉塞状況に陥りやすく,男性の場合には養育に参入する役割を見つけにくい傾向があることが指摘できる。子どもとの相互関係に関しては,女性養育者の場合には愛着形成そのものに困難をきたす事例が認められ,男性養育者の場合には,密着した母子関係に割り込む方法が見つからないことに由来する困難が認められ る。衝動性に関連しては,自らの衝動を回避困難であると考える心性に,ASD の特徴を認めることができ, 虐待的な行為への嗜癖的な固着にこの衝動性が関与する場合がある。状況認知に関連しては,被害的な認知が養育態度に持ち込まれることによって生じる,子どもに対する不適切な影響の可能性を指摘することができる。