2014 年 11 巻 2 号 p. 21-28
従来、時間的拡張自己の成立について遅延自己映像認識課題を用いた検証では、自閉症者と定型発達者との間で差異は認められなかった。本研究は、時間的拡張自己の成立について、過去の時点の自己像と行動の理解という2つの側面に着目し、それを遅延自己映像認識課題と過去の行動再生課題の実施から検証した。対象は、特別支援学校に通う小学部から高等部の知的障害のある自閉症者(自閉症群)および知的障害者(対照群)とした。その結果、遅延自己映像認識課題の成績において両群に有意差は認められなかったが、過去の行動再生課題の成績において両群間に有意差が認められ、自閉症群は対照群に比べて課題通過率が著しく低かった。このことから、知的障害のある自閉症者は時間的拡張自己の成立において、過去の自己像の理解は可能であるものの、過去の行動の理解に困難を示すことが示唆された。