自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
実践研究
ASD児を持つ自閉症が疑われるひとり親への家事・育児支援
青木 康彦
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2016 年 14 巻 1 号 p. 13-18

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抄録

本実践研究は、 ASD 児を持つ自閉症が疑われる母子家庭の母親が示す育児・家事が行えないという問題に対して、面接を通して支援を行った経過を報告している。[方法]まず、母親に家庭において期待される母親役割(家事・育児)を確認した。そして、面接を通して、現在行えていない家事・育児をリストアップし、それらを目標に家事・育児の遂行の記録をしてもらった。さらに、行うことが難しい項目について、課題分析を行い、ステップシートを作成し、それに基づいて家庭で取り組んでもらった。[結果]家事・育児のいくつかの項目について、記録開始時から面接を通して徐々に遂行率が高まった。また、「掃除をする」について、課題分析を行い、ステップシートにしたところ、当初0 ~15%であった遂行率が、57 ~100%に上昇した。社会的妥当性についても、本人、叔母ともにほとんどの項目で肯定的な評価をしていた。[考察]家事・育児の遂行率について、面接を通していくつかの項目で改善が認められた。しかし、改善が認められなかった項目については、子どもが発達障害児であることや母親本人の特性を踏まえた支援を行う必要性が示唆された。発達障害が疑われる親、発達障害児の親、母子家庭などの状態にある母親の家事・育児への支援に関して、これまで検討した研究は少なかったが、本報告により支援の有効性が示唆された。

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© 2016 NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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