2016 年 14 巻 1 号 p. 19-31
本研究は、知的障害を伴う自閉症スペクトラムの人1 名(A 氏)を対象に、日常生活におけるお知らせや行動、考え方について、ソーシャルナラティブを用いて説明を行った。対象者はX 年度からR 事業所に通所し、研究開始時は通所して6 カ月目であった。通所前に在籍していた特別支援学校と連携し、フォーマルアセスメントであるTTAP の直接観察尺度を行い、保護者への聞き取り等インフォーマルアセスメントを行った。これらのアセスメントからA 氏の障害特性や機能レベルを確認し、環境調整を行った。指導開始前は様々なことで落ち込み、机に伏して、その日一日活動できなくなってしまうことがあった。ソーシャルナラティブによる介入を行ってから、ソーシャルナラティブに記述されている内容について、机に伏してしまうことがなくなる等の行動の変容が確認された。また、保護者の聞き取りから、家庭においても行動の変容があることが確認された。以上の結果から、ソーシャルナラティブが対象者になぜ有効であったかについて考察した。