2022 年 20 巻 1 号 p. 97-103
本研究は、肢体不自由特別支援学校中学部3年に在籍する知的障害と自閉スペクトラム症を併せ有する男子生徒を対象に、積極的な言語によるコミュニケーションを獲得することを目的に介入を行った報告である。授業や日常生活の中に、身近な教師との言語によるコミュニケーション場面を意図的に設定した。さらに、集団での学習環境を工夫して友達とのコミュニケーションの機会を増やした。また、自分の不快な感情を不適切な行動で表現するのではなく、不快な原因を教師と一緒に確認して言語で伝える支援を工夫した。その結果、身近な教師へ言語による要求や依頼が増えて、さらにコミュニケーションの対象が身近な友達へと広がった。そして他害や物を投げるなどの不適切な行動が減少した。このことから、適切なコミュニケーションによって自分のニーズが満たされる経験を蓄積する環境づくりの重要性と、自己の感情理解を促し言語化することは不適切な行動を減少させることが考察された。