本稿では創造的リスキリングを個人の創造性のそれではなく、イノベーションのための組織的創造性にかかわる知識・能力の拡充としてとらえる。イノベーションは革新的知識創造活動であるが、安定を追求する現業の現場では必ずしも歓迎されない。そこでは壁を超える協業で組織の創造性を引き上げることが課題となる。一方、組織が知識を得ても、それが価値実現に直接結びつくとは限らない。価値の方向や目的を先行的に明示することで、あるべき知識や能力、人的資本が出現すると考えるのが妥当ではないか。そこで重要になるのが目的群の創出である。個からチーム、組織に至る「目的のオーケストレーション」が組織全体の潜在的な知力、創造性を高めるといえる。本稿では「目的工学」の考え方に沿って、組織的知識創造を支援・加速する利他主義的な目的と場、それに基づく知の方法論のカリキュラムによるリスキリングを提言している。