流体中を遊泳する微生物の運動を制限する定理として 帆立貝定理(scallop theorem)がよく知られている. これは,質量ゼロの生物が定常Stoke流中で帆立貝の ような往復形状変形をする場合,変形の1周期で 生物の位置と向きが元に戻るというものである. 我々は生物と流体の慣性を考慮した場合に定理がどの ように破れるのかを検討するために,球形生物がその 表面を微小変形させる微生物モデル(squirmerモデル) を非定常Stokes流体中に拡張した. このモデルはボルボックスやゾウリムシのような生体表面の繊毛によって泳ぐ 微生物のモデルとして古くから用いられており. 講演ではこの拡張されたモデルから得られた結果を紹介するとともに, これらの微生物のサイズスケールが推進力に及ぼす影響に関しても言及したい.