日本女子体育連盟学術研究
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実践研究
ダンス学習における「ものを使った表現」の特性と意義に関する研究
─新聞紙を使った指導を中心に─
中島 由梨村田 芳子
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2012 年 28 巻 p. 1-16

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抄録
本研究はダンス学習における「ものを使った表現」に着目し,過去の実践事例を収集し,その特徴的な傾向を分析すると共に,特に新聞紙を使った表現の指導実践を対象に,受講者への質問紙調査,指導者の言語の逐語記録,指導者へのインタビュー調査を通して,「ものを使った表現」の特性と意義について明らかにすることを目的とした。
その結果,事例調査からは過去20年間における「ものを使った表現」の実践事例が303件抽出でき,そのうち新聞紙(205件),布(60件),ゴム(34件)の順で多く使われており,指導者は「ものを使うことによる動きの広がり」を最も大きなねらいとしていた。新聞紙を使った表現の指導実践では,「指導者が動かす新聞紙になって動く」「学習者2人組で新聞紙を扱う・新聞紙になって動く」「新聞紙を使って即興的に踊る」という3つの学習の段階が含まれ,初めは指導者のリードがありながらも常に他者と関わる学習形態がとられているのが特徴的であった。受講者の主な受け止めは,「やりやすさ」「動きの広がり」「仲間との関わり」の3点が挙げられ,対象とした指導者の教材化の視点は,「多様な動きの体験」「想像力とデフォルメ」「ダンスで教えたい動きの理解」「空間認識」「演出的な魅せ方」の5点にまとめられた。以上の結果から,「ものを使った表現」は,「もの」固有の特性を生かしながら,指導者が意図した教材化の視点や学習形態などの指導性が加わることにより,学習者に表現性と学びの深まりを与えることが示唆され,その特性と意義は,「『もの』の質感を身体と一体化することによる多様な動きの開発」「具体物の存在による心理的・身体的なやり易さ」「他者と触発・連鎖し合う発想の広がり」であることが示唆された。
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© 2012 社団法人 日本女子体育連盟
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