2025 年 12 巻 p. 5-17
2006年12月に改正された貸金業法は、貸金市場の健全化と消費者や事業者への貸し付けを行う貸金業者を規制する目的で施行された。これにより、過剰貸し付けなどによる多重債務の問題は減少し、資金需要のある消費者や事業者にとって、安全な貸金市場での取引が可能になるものとみられていた。
一方で、この法改正により特定の階層に属する資金需要者は、正規の消費者金融会社による審査が通りにくくなった。特に、正規の消費者金融から融資を受けることが困難となった属性の一つとして、非正規労働や主婦などの安定した収入がない女性が挙げられる。こうした属性の資金需要者は、融資について親族や友人などの身近な人を頼る傾向を強めた。その後、インターネットの掲示板やSNSを利用した違法な「個人間融資」が広がりを見せた。これらに関与すると見られる女性による投稿も数多く確認されることから、市場規模の大きさが推察される。個人間融資の中でも特に悪質なパターンが、資金需要のある女性に対して性交渉を条件に融資を行う「ひととき融資」と言われるヤミ金融である。そして今日、ひととき融資の犯罪被害がマスコミで広く報告されるようになった。
本研究では、ひととき融資における違法性を明らかにするため、司法関係者や関係団体へのヒアリングを行った。また、そこで得られた情報をもとに、被疑者にあたる貸し手(男性)側の動機や貸し付け行動に注目して事例の類型化を行った。
この調査を通して、ひととき融資について、①市場への参入障壁が低い、②経済事犯という側面よりも性犯罪の側面が強い、③被害に遭った女性が往々にして捜査に非協力的なため捜査が難航する、といった特徴が抽出された。