2025 年 12 巻 p. 19-34
本研究は、ナッジ理論をベースに福井大学で行ったSNS型詐欺の被害防止に向けた啓発ポスター作成の取組み及びその後の社会実装を事例とした行動経済学教育の実践の報告である。また、学生が制作したポスターを分析することによって、ポスターに使用されたナッジ理論の要素の特徴を明らかにすることも目的とする。さらに、実際に掲示されたポスターの設置状況を観察し、ポスターのナッジ要素の効果を考察することにより、今後の実証に寄与する知見を得ることを目的とする。
研究の結果、学生たちは特に Salience の要素を意識してポスターの制作を行なっていたことが明らかとなった。グラフィックデザインの技法を用いたり、生成AIを活用したりしながら、よりナッジ効果を高めた作品もみられた。一方で、周辺の環境条件に対する設計意図や具体的な行動変容に対する言及はみられなかった。多くの場合、注意喚起で止まってしまっていたことから、具体的な行動変容をどのように意図させるかが、今後の行動経済学教育の課題である。