パーソナルファイナンス研究
Online ISSN : 2189-9258
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招待論文
  • 堂下 浩
    2022 年 9 巻 p. 5-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/27
    ジャーナル フリー

    厳格な規制が盛り込まれた貸金業法が2006年に改正されてから、貸金市場では大きな社会問題を惹起せず、業界として安定性が保たれてきたと言われている。一方で法改正当時から懸念されていた通り、ヤミ金融は正規貸金市場の水面下で暗躍し、その犯罪手法は巧妙化の一途を辿っている。

    近年、ファクタリングを偽装した様々な新しいタイプのヤミ金融が貸金機能の代替として成長している。たとえば、給与所得を得ている消費者向けに資金を供与する新たなヤミ金融である給与ファクタリングの被害が2018年頃から報道されるようになった。しかし、金融庁は2020年3月に確定賃金の債権譲渡を偽装した給与ファクタリングに関して、当該スキームが貸金業に相当する旨のノンアクションレターを示したことで、給与ファクタリング業者の多くが市場から撤退した。

    ところが、市場から撤退した給与ファクタリング業者の一部は給与ファクタリングで培った審査や回収のノウハウを新たなヤミ金融のビジネススキームへ進化させた。その代表が後払い現金化商法と、先払い買い取り商法と呼ばれる新たなヤミ金融である。今日、こうした事象は社会問題として顕在化しつつあり、警察が取り締まる難易度を徐々に高めているだけでなく、国会でも度々取り上げられるテーマとなっている。

  • ─メタアナリシスを中心とした海外文献のレビュー─
    坂野 友昭, 小西 由樹子
    2022 年 9 巻 p. 15-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/27
    ジャーナル フリー

    本稿では、金融教育が金融リテラシーと金融行動に与える影響に関する方法論的に厳密な5つのメタアナリシスをレビューした。その結果、金融教育は金融リテラシーに正の影響を与えていた。金融教育は金融行動に有意な正の影響を与えており、より厳格なRCTを用いた研究でも、有意な正の効果が発見されたが、その効果はかなり小さかった。金融リテラシーは金融行動に正の影響を与えていたが、操作変数を用いるなど、より厳格な研究では、その効果は小さかった。金融教育は貯蓄や予算管理などには強い影響を与えていたが、借金や債務管理にはほとんど影響を与えていなかった。低所得者など問題のあるグループへの金融教育は低い効果しか有していなかった。子供や若者を対象とした学校での金融教育は、成人を対象とした金融教育よりも大きいか、少なくとも同程度の効果を持っていた。教育時間を長くすると、金融教育の効果は高くなった。金融教育の効果は時の経過とともに減退した。教育時点からの間隔が短い短時間の金融教育は、教育時点からの間隔が長い長時間の金融教育とほぼ同じ効果を有している。ついで、将来の研究方向と政策上の課題について議論した。

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