パーソナルファイナンス研究
Online ISSN : 2189-9258
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査読付論文
  • 前田 真一郎
    2021 年 8 巻 p. 5-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    日本でキャッシュレス決済を促進する動きが広がっている。2019年における日本のクレジットカード、デビットカード、電子マネー決済合計額の民間最終消費支出に対する比率は27%であった。日本政府は、このキャッシュレス決済比率を、2025年までに40%にする目標を掲げている。本論文の目的は、キャッシュレス化を推進するために必要な要素を検証することである。具体的には、キャッシュレス化で先行する米国の状況を踏まえて、特に日本においてキャッシュレス化を推進するために必要な要素を考察する。キャッシュレス化を推進するためには、その国の政策、消費者の行動、加盟店の動向、金融機関等の対応の4つの視点から見ていく必要がある。本論文では、日米比較を行いながら、特に消費者の行動と金融機関等の対応に着目する。

    日本のキャッシュレス決済は、クレジットカードの利用が中心であり、米国との共通点がある。しかし、日本のクレジットカードは、マンスリークリアーでの利用が多く、クレジットカード事業での利益貢献は米国ほど大きくない。また近年では、新しい支払い方法が登場しており、モバイル支払い等が増加している。このような新しい支払い方法の多くは、消費者の利便性を向上させているが、必ずしも収益貢献につながっていない。

    米国は、キャッシュレス社会が進展しており、主要先進国のなかでもクレジットカードの利用比率が高い。米国におけるクレジットカードの利用拡大は、消費者信用の拡大を通じて個人消費支出を押し上げ、経済成長を支えてきた。米国におけるキャッシュレス社会は、個人の消費活動を促進するクレジットカード利用の拡大と、そこから収益を生み出そうとする金融機関の活動があわさって進展してきたのである。実際、米国の大手金融機関は、クレジットカード事業を中心に、年間2,000~3,000億円の税引前利益を上げている。

    本論文では、キャッシュレス化を推進する要素として、決済を手掛ける金融機関等の持続的な利益計上が必要であることを明らかにする。日本におけるキャッシュレス化の推進は、金融機関等の持続的な利益計上が必要な段階に入った。本論文の貢献としては、米国等との比較を行いながら、日本固有の状況を踏まえたうえで、キャッシュレス化を推進するための要素を提示することがある。特に日本の場合は、キャッシュレス決済を手掛ける金融機関等の低収益性が問題である。本論文が、日本におけるキャッシュレス化のさらなる推進に貢献できれば幸いである。

  • 堂下 浩
    2021 年 8 巻 p. 19-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    日本において貸金業法は2006年12月に改正され、2010年6月に完全施行された。新たに科された厳格な規制の影響は甚大であり、業界の淘汰が短期間で進んだ。たとえば、武富士(業界規模2位)が2010年9月に倒産、翌月には三洋信販(業界規模7位)がプロミス(業界規模4位)へ吸収合併された。同時に消費者金融市場の信用収縮が一気に加速した。その後も市場規模の減少は続いたが、2012年に市場の縮小傾向も収まり、新型コロナ禍の前までは概ね安定的に推移してきた。そして今日、消費者金融市場は新型コロナ禍により混乱を生じている。

    そこで本論文では、先ず貸金業法の改正前後における消費者金融市場に注目して、残高、新規成約率、そして過払い金返還額などの状況変化について分析した。その結果、上限金利の引き下げにより借入困難に陥った資金需要者が債務整理に向かったことで、過払い金返還請求が一気に増大し、貸付残高の減少に大きな影響を及ぼした蓋然性が確認された。つまり、法改正による上限金利の引き下げと総量規制の導入は当時の一部利用者を借入れの困難な状況に追い込んだ。借入困難者の急増は貸金業者への過払い金返還請求を一気に促し、貸金業者の業績は徐々に悪化へ向かった。

    続いて、新型コロナ禍の経済環境が消費者金融市場に及ぼした影響についても分析した。近時、新型コロナ禍により経済的に困難な状況におかれた資金需要者が増え、一部はヤミ金融に流出している可能性が報告されている。こうした経済下における消費者金融市場の取引データから資金需要者の置かれている状況を調査した。その結果、経済活動の萎縮が進む中、消費者金融会社からの融資が拒絶される資金需要者が増加している可能性が示唆された。

  • ─ゼミナール活動の予算獲得をケースとして─ (フォーマルラーニングのフィールドワーク費におけるファンドレイジング活用)
    永野 聡
    2021 年 8 巻 p. 31-41
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    人文社会科学系は、小集団である「ゼミ」運営に関して予算があまり計上されていない。それにもかかわらず、大規模大学のゼミは、大人数の学生が所属する為、まちづくりのようなフィールドワークを主としたゼミ活動を実施する際、その費用が大きな負担となる。ここでいう費用は主に旅費にあたる。実際にフィールド先の地域課題に向き合い、その解決に向けた活動をする事は、学生にとって深い学びに繋がり、かつ、地域にとっても大学を通した学生の活動を目の当たりにする事での活力を得る事に繋がる。しかしながら、フィールドワークを実施したくとも、金銭的理由よりそれが叶わないゼミも存在している。

    大学経営は厳しさを増しており、外部資金の獲得が重要な課題となっている。これまでの大学は、教育と研究と社会貢献を主な柱とし、限られた関係性(学生、企業、地域)の中で活動してきた。一方で、これからの大学は、この柱を広く社会全般にアピールし、真に外に開かれた関係性を作り、多くの賛同者や支援者を得る必要がある。そこで、本研究では、大学の小集団単位での外部資金の獲得という先進的な取組みを実施する事とした。具体的にはシェアリングエコノミーの仕組みを活用し、まちづくりを主軸におく人文社会科学系ゼミを主体としたクラウドファンディング(以下、CFと表記)で、費用を確保する事を試行し、その意義と課題を把握する事を目的とした。

    本研究において、運用の特徴としては、ゼミ生自身がプロジェクトページの新着情報の更新とSNSを活用して情報発信を行い、支援希望者に対して広く呼びかける活動を実施した。そこで、ゼミ生と支援希望者の信頼関係を構築するように努めた。CFの実施概要をまとめ、1日毎のPV数と支援金額の推移より、分析と考察をまとめた。また、CFの実施主体であったゼミ生へ、内省化も踏まえたアンケート調査を実施し、得られたデータのグループ化と統計分析を 実施した。

    今回実施したCFでは、38日間の実施期間で、96名の支援者より、130.9万円の支援を得る結果を得た。また、CFを行う事でゼミ生一人ひとりのメタ認知も含めた内省化に繋がった。この取組みを通して、人文社会科学系ゼミを主体としたCFで、ゼミ活動の費用を確保する事は可能である事がわかった。また、教育的な効果も図れる事もわかった。

  • ─日本の地方部への課題アプローチ─
    尾形 孔輝, 竹本 拓治, 米沢 晋
    2021 年 8 巻 p. 43-59
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    本研究では、コミュニティバスの受益者負担について、日本におけるライドシェアと海外における乗合交通の比較の視点から考察する。地方では、路線バスの維持が経営収支の面から困難な状況にあり、移動手段を確保するために、路線バスの代わりや公共交通機関がない地域の移動手段として、コミュニティバスを自治体で運行する事例が増えてきている。現在、コミュニティバスの運営経費は公的負担にて賄われている事例が多い。本研究では、行政のみに負担を強いるのではなく、パーソナルファイナンスの視点から受益者負担はどうあるべきかを考え、受益者負担と公的負担のバランスを検討する。その上で、公共交通の受益者負担の在り方について、公共財の観点から考察し、産学官金民が一体となって運営することを提案する。

    受益者負担にて運営されているライドシェアの京都府京丹後市の「ささえ合い交通」の事例や乗合交通が発達しているタイをはじめとする東南アジアの事例、企業を受益者として公共交通の財源を企業からの税金で賄うフランスの事例から、コミュニティバスにおいても受益者負担による運営の仕組みを構築することを考察する。公共交通には一定の受益者負担が必要であるとの立場から、産学官金民が連携して公共交通の維持や発展における課題解決を行うことを提言する。

  • 趙 彤, 石田 基広
    2021 年 8 巻 p. 61-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    本稿は「人人貸」のトランザクション・データを用いて、借手の出身地が河南省であることがローン証券の成約とデフォルトにどれほど影響するかを明らかにし、その目的は河南人に対する差別が中国のP2Pネット金融においてどれほど存在するかを明らかにすることである。計量モデルの推定結果から言えば、借手の省レベルの出身地域に対する差別が全く存在しない一方、貸手は市町村レベルの出身地域を経済的豊かさ(市町村レベルの1人当りGDP)に置き換え、より豊かな地域出身の借手を選好していたことが明らかになった。この選好は結果的に投資収益を高め、全く合理的な行動である。情報の不完全性を補うため、出身地域という借手の非金融的属性を投資決定にたくみに利用することが貸手の賢さの現れであり、評価すべきことである。

English Summary
編集後記
奥付
エラータ
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