厳格な規制が盛り込まれた貸金業法が2006年に改正されてから、貸金市場では大きな社会問題を惹起せず、業界として安定性が保たれてきたと言われている。一方で法改正当時から懸念されていた通り、ヤミ金融は正規貸金市場の水面下で暗躍し、その犯罪手法は巧妙化の一途を辿っている。
近年、ファクタリングを偽装した様々な新しいタイプのヤミ金融が貸金機能の代替として成長している。たとえば、給与所得を得ている消費者向けに資金を供与する新たなヤミ金融である給与ファクタリングの被害が2018年頃から報道されるようになった。しかし、金融庁は2020年3月に確定賃金の債権譲渡を偽装した給与ファクタリングに関して、当該スキームが貸金業に相当する旨のノンアクションレターを示したことで、給与ファクタリング業者の多くが市場から撤退した。
ところが、市場から撤退した給与ファクタリング業者の一部は給与ファクタリングで培った審査や回収のノウハウを新たなヤミ金融のビジネススキームへ進化させた。その代表が後払い現金化商法と、先払い買い取り商法と呼ばれる新たなヤミ金融である。今日、こうした事象は社会問題として顕在化しつつあり、警察が取り締まる難易度を徐々に高めているだけでなく、国会でも度々取り上げられるテーマとなっている。
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