パーソナルファイナンス研究
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招待論文
ファクタリングを偽装したヤミ金融の被害に関する事例調査
堂下 浩
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2019 年 6 巻 p. 57-66

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抄録

日本において貸金業法が2006年に改正されて以降、ヤミ金融の事犯が表面化される機会が減ったように見受けられる。しかしながら最近の報道を精読してみると、ヤミ金融はそのスキームを様々に進化させ、警察にとって摘発が難しい形態へ巧妙化させることで高金利被害を拡大している。例えば、2018年9月26日に報道された日本経済新聞の記事「倒産企業の陰にひそむ危うい資金調達」によると、従来から商慣行として行われてきたファクタリングのスキームを利用する違法性の高い二者間ファクタリングが新たなヤミ金融として水面下で浸潤し、資金需要のある中小企業の間で被害が拡大している。二者間ファクタリングに関しては警察の摘発が困難であるだけでない。利用した中小企業がファクタリング業者に賠償請求を求める裁判が幾つかの事案で争われたが、その違法性を巡る判決に一貫性はない。

2017年3月3日に共同通信が報じた記事「債権取引『実質は貸金』  地裁、過払い金返還命令」によると、二者間ファクタリングの違法性を認めた判決が出された。一方で筆者が二者間ファクタリングを利用した中小企業に行ったインタビュー調査の中には、裁判で二者間ファクタリングの違法性は認められず、逆に中小企業側がファクタリング業者に多額の違約金の支払いを命じられた事例も存在する。

こうした司法判示の限界性を鑑みると、現行法令で二者間ファクタリングを規制することは困難となってきている。さらに2020年改正民法の施行により債権譲渡が原則自由化されることで、二者間ファクタリングを行う上での環境は逆に整う恐れもある。こうした見地からも中小零細企業による資金需要の現実を考慮した上で貸金業法が改正され、適正な貸金市場が日本国内で形成されるべきである。

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