パーソナルファイナンス研究
Online ISSN : 2189-9258
ISSN-L : 2189-9258
査読付論文
貸金業法の改正前後における資金供与側からの消費者金融市場に関する調査
堂下 浩
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 8 巻 p. 19-29

詳細
抄録

日本において貸金業法は2006年12月に改正され、2010年6月に完全施行された。新たに科された厳格な規制の影響は甚大であり、業界の淘汰が短期間で進んだ。たとえば、武富士(業界規模2位)が2010年9月に倒産、翌月には三洋信販(業界規模7位)がプロミス(業界規模4位)へ吸収合併された。同時に消費者金融市場の信用収縮が一気に加速した。その後も市場規模の減少は続いたが、2012年に市場の縮小傾向も収まり、新型コロナ禍の前までは概ね安定的に推移してきた。そして今日、消費者金融市場は新型コロナ禍により混乱を生じている。

そこで本論文では、先ず貸金業法の改正前後における消費者金融市場に注目して、残高、新規成約率、そして過払い金返還額などの状況変化について分析した。その結果、上限金利の引き下げにより借入困難に陥った資金需要者が債務整理に向かったことで、過払い金返還請求が一気に増大し、貸付残高の減少に大きな影響を及ぼした蓋然性が確認された。つまり、法改正による上限金利の引き下げと総量規制の導入は当時の一部利用者を借入れの困難な状況に追い込んだ。借入困難者の急増は貸金業者への過払い金返還請求を一気に促し、貸金業者の業績は徐々に悪化へ向かった。

続いて、新型コロナ禍の経済環境が消費者金融市場に及ぼした影響についても分析した。近時、新型コロナ禍により経済的に困難な状況におかれた資金需要者が増え、一部はヤミ金融に流出している可能性が報告されている。こうした経済下における消費者金融市場の取引データから資金需要者の置かれている状況を調査した。その結果、経済活動の萎縮が進む中、消費者金融会社からの融資が拒絶される資金需要者が増加している可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2021 パーソナルファイナンス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top