抄録
本研究は、薬物依存リハビリテーション施設利用者の回復過程を明らかにすることが目的である。対象は薬物依存リハビリテーション施設を利用した経験をもつ回復者で、断薬期間3年以上の23-41歳の男性4名であった。データ収集は半構成的面接により行い、内容を質的に分析した。その結果、ダルク利用の薬物依存症者の回復過程は4段階あることが見出された。第1段階は「極限状態」、第2段階は「生き方の問題に直面することによる苦悩」、第3段階は「回復への決意と行動化」、第4段階は「自己受容と生きる希望の獲得」であった。通常、第1段階から第4段階に順次進むが、新たな問題に直面すると第2、第3段階に戻り、薬物再使用の葛藤を経て先の水準よりさらに高い統合の第4段階に回帰し、人間として成長し続ける傾向にあった。回復過程を支える要因として、問題に直面すること、薬物依存の仲間の存在、自己を越えた力への信頼、薬物依存リハビリテーション施設という場の存在が見出された。