抄録
本研究の目的は、女性摂食障害患者の入院体験を明らかにし、患者の行動的な特徴と精神的な問題の結びつきを理解し、良好な治療的関係を形成するための看護への示唆を得ることである。6名の女性患者に開放的、反構成的面接を行いコレイジの現象学的方法論を基に分析した。摂食障害という病気の体験からは; 1)完璧な自己像vs.否定的な自己像; 2)どうにもやめられない過食嘔吐・拒食; 3)両親との関係のもどかしさ; 4)身近な人間関係での孤独感; 5)性に対する恐怖と嫌悪感の5つのテーマ、入院環境での体験からは; 1)自己に対する絶望感と孤独感; 2)回復への希求; 3)最も頼りたい存在である医療者との表面的な関係の3つのテーマが抽出された。入院環境においても、患者は従来から指摘されている前述の5つのテーマと同様の体験をし、それは医療者を巻き込む形で存在し、自己探求が思うようにできないという患者の苛立ちは最も頼りたい存在の医療者に向けられていた。患者の葛藤の表出は回復過程の一部であるという理解の姿勢を示す看護が重要であると考えられた。