抄録
精神科看護はこれまで幾多の救急場面や急性期場面を経験し、患者の暴力と攻撃行動に介入する臨床経験を蓄積してきた。精神科において重要な部分を占めているこうした経験は、これまで記述もされずまた介入技術として分析もされてこなかった。本研究は、患者からの暴力や攻撃に対処してきた精神科看護師に彼らの臨床経験を尋ね、暴力に対する看護師の技術的な対処に焦点を当てた。精神科看護師20名に対し半構成的なインタビューを行い、その介入技術についての内容を質的記述的に分析した結果、144個のコードと79個のサブカテゴリー、28個のカテゴリーが抽出された。そしてこれらの技術は適用される3つの臨床場面((1)基本的なケアを提供する技術 (2)救急・急性期ケアに対する介入技術 (3)暴力や攻撃に対処する技術)に区分できることが明らかとなった。またこれらの介入技術が精神科看護師に求められる特殊な技術ではなく、日常的な看護実践の延長上に展開される高度な介入技術であることが示唆された。