2008 年 17 巻 1 号 p. 34-43
本研究では、看護職によるDV被害の早期発見に役立つ簡易な観察チェックリストの作成とその活用について検討した。H17.11〜H18.2に、X県内の看護職にDV早期発見観察チェックリストを試行していただいた。これらの観察項目と配偶者暴力被害相談支援センター4ケ所へDV相談に来所した54ケースを比較した。その結果、保健師では、5ヶ所の保健センターで120ケースの観察をし、DV被害の疑い1ケース、児童虐待1ケースを発見した。看護師では4施設122の受診者の有効回答を得、DV被害者2ケース、高齢者虐待2ケースを発見した。DV被害と関連が深かった項目は「経済的な問題(74.1%)」、「不定愁訴や抑うつ傾向(63%)」で、子どもがいる家庭では、「子どもの生活の乱れや子どもへの暴力(57.1%)」と関連があった。これらの結果より、DV早期発見観察チェックリストを利用することによって、看護の場の特性に応じ観察項目に違いがあることが判った。また、自らDVや暴力被害を告白するケースはなく、看護職がなんらかの「不自然さ」に気がつき、DV早期発見観察チェックリストに沿った観察や問いかけが必要であり、それによって早期介入の手がかりが得られることが示唆された。