2018 年 27 巻 1 号 p. 9-20
本研究は,統合失調症患者の受け入れがたい言動に対する精神科熟練看護師の視点取得に至るプロセスを明らかにすることを目的とし,11名の精神科熟練看護師を対象に半構造化面接を行った.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果,28概念,5サブカテゴリー,9カテゴリーが生成された.
精神科熟練看護師は,統合失調症患者の受け入れがたい言動に対して【交錯する思い】に揺れ動き葛藤を抱きつつも【断ち切れない思い】で患者に関心を向け続け,【関わりの糸口を掴むための試行錯誤】をしながら向き合っていくことで【患者の苦悩を理解】しようとしていた.一方で,《このままではいけないという思い》や【断ち切れない思い】が強すぎたことにより【思いの押しつけによる患者の状態悪化】を招いたことに対して,【自己の言動を内省】することで【患者の苦悩を理解】しようとしていた.【自己の言動を内省】したり【関わりの糸口を掴むための試行錯誤】を後押しするものとして,【ポジティブな職場風土】といった肯定的な要素が職場内にあった.
本研究により,対応困難な患者への関わり方や組織的支援の重要性が示唆された.