2022 年 31 巻 2 号 p. 48-57
目的:本研究の目的は,軽度認知症の人の語りから軽度認知症の人がとらえる自己を明らかにすることである.方法:質的帰納的研究方法を用い,認知症の診断後,地域生活を継続している15名の研究協力者に半構造化面接を行った.結果:軽度認知症の人の語りからみる自己のとらえは《縮小する自己》《心やすまらない自己》《遊離する自己》《知恵を活用する自己》《連続性を保つ自己》の5つが明らかになった.結論:軽度認知症の人の語りからみる自己のとらえは,認知障害や診断を受けた影響による自身や他者との多元的な相互作用により,縮小や遊離した世界の中で心がやすまらず苦悩にとらわれていた.しかし懸命に知恵を駆使し,連続性を保つことで自分らしい人生を懸命に生きていた.本知見をもとに言動の意味を丁寧に解釈し,看護ケアを展開することは,認知障害の影響によって生じる自己の存在の不確かさを軽減し,生きる活力を支えると考える.