2024 年 33 巻 1 号 p. 88-97
目的:刑事精神鑑定入院に関わる看護師のゆらぎを明らかにすることである.
方法:刑事精神鑑定入院の対象者に直接関わった経験のある看護師16名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.
結果:看護師のゆらぎとして,《犯罪者に関わる恐怖と嫌悪》《手に負えない感情の振り回し》《管理・看守の役割を求められるもどかしさ》《明確でない看護師の役割》等の9大カテゴリが抽出された.
結論:看護師のゆらぎは,刑事精神鑑定を精神科医療の枠組みで受け入れることに起因していた.精神科病院での入院でありながら治療を目的としない関わりを持つという矛盾のなかに看護師は置かれていた.その状況で,看護師は刑事精神鑑定入院における役割が曖昧なまま対象者と関わっている.それは,精神科看護師としての関わりをしないことや管理・看守の職務を要求される心理的苦痛を増強させるものであった.看護師の役割を明確にし,心理的苦痛を軽減する事が必要である.