日本精神保健看護学会誌
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資料
精神医療機関における新人看護職員の研修に関する実態調査
~施設の特徴と研修内容との関連~
河野 あゆみ松田 光信牧野 耕次奥野 裕子佐藤 史教大平 幸子冨川 順子精神保健看護学会教育の質向上委員会
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2024 年 33 巻 1 号 p. 125-137

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Abstract

精神科病床を有する施設における新人看護職員研修の内容と各精神医療機関の特徴との関連を明らかにすることを目的に実態調査を実施した.対象者は,全国の精神科病床を有する1,619施設の教育担当者とし,対象者が所属する施設の特徴と,新人看護職員研修の内容に関するWebアンケートによる無記名自記式調査を行った.収集したデータは,χ2検定を用いて分析した.結果,246人から回答が得られ,分析対象は214人(回答率13.2%)となった.χ2検定の結果,精神科を主とする病院で行う新人看護職員の研修内容には,グループ支援,精神の病態やアセスメント,向精神薬,自立支援や家族援助,隔離や自殺予防を含む医療安全など,精神科ならではの内容が含まれていた(p < 0.05).本研究結果を踏まえ,看護基礎教育機関においては,多様な学習方法により看護実践能力の育成に関する教育を展開することの必要性が示唆された.

Translated Abstract

To clarify the relationship between the characteristics of facilities with psychiatric wards (psychiatric facilities) and the contents of their novice nurse training programs, we conducted a survey, involving persons in charge of education at 1,619 psychiatric facilities nationwide. We examined the characteristics of their facilities and the contents of their novice nurse training programs using an anonymous, self-administered web questionnaire, and analyzed the collected data by the chi-square test. A total of 246 persons responded, 214 of whom were included for analysis (response rate: 13.2%). The chi-square test showed that the novice nurse training programs of these psychiatric facilities addressed issues specific to psychiatry, such as group support, the pathology and assessment of mental disorders, psychotropic medications, support for patients to regain independence, support for their families, and isolation, suicide prevention, and other medical safety measures (p < 0.05). The results suggested the necessity for institutions providing basic nursing education to foster students’ nursing competence, adopting various learning approaches.

Ⅰ  はじめに

精神保健医療体制や人々のニーズが高度化・複雑化する社会において,看護職が高い専門性を更に発揮するには,看護基礎教育から卒後教育への円滑な接続および卒後教育の内容的充実が重要だと考えられる.特に,卒後教育の中でも新人看護職員研修は,看護基礎教育での学びを基盤として,臨床現場で求められる知識及び技術の修得を支援し,看護基礎教育と臨床現場における看護実践との乖離を埋めるために必要との認識から,2009年保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の改正において努力義務化された(厚生労働省,2009).これに伴い,新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)(厚生労働省,2014)が示されたが,精神疾患の特性に応じた援助技術や多職種連携,さらには精神保健福祉法に基づく社会資源の活用等,精神科看護特有の要素が含まれていない.

精神医療機関における新人看護職員研修に関する既存の調査には,日本精神科看護技術協会が会員施設に実施したものがある(日本精神科看護技術協会,2004).この調査では,対象施設の71.4%が新人看護職員研修を実施しており,病床数が多いほど実施率が高いという結果を示しているが,研修内容の詳細については示されていない.また,現時点では,新人看護職員研修で扱われている内容の詳細を把握する全国調査も見当たらない.そこで,精神科病床を有する施設における新人看護職員研修の内容と各精神医療機関の特徴との関連を明らかにすることを目的に実態調査を実施した.本調査結果が明らかになれば,看護基礎教育における教育内容を検討する際の基礎資料になり得ると考えた.

Ⅱ  方法

1. 用語の定義

本調査における新人看護職員とは,看護基礎教育修了直後から概ね1年以内の看護師とした.

2. 対象者

本研究の対象者は,精神科病床を有する施設の教育担当者とした.対象施設は,2021年度の厚生労働省・地方厚生局の公表情報を基に,入院料に精神疾患に関する料金を算定している全国の病院1,619施設とした.

3. 調査方法

調査の依頼は,対象施設の看護管理代表者宛に,調査依頼文書,調査票を郵送して行った.データ収集は,Webアンケートによる無記名自記式調査とし,2022年6月~7月に実施した.調査依頼文書には,研究目的と方法,Webアンケート回答フォームのQRコードとURLのほか,協力が得られる場合は看護管理代表者より教育担当者へ調査依頼文書を渡していただくことを記載した.教育担当者への調査依頼文書にも同様の内容を記述し,本研究への参加に同意いただける場合はWebアンケートに回答していただきたい旨を記載した.

4. 調査票

1) 対象施設の基本情報

地方区分,市区町村,設置主体,病院機能評価の認定取得の有無,許可病床数(うち精神病床数),精神科病棟の平均在院日数,新卒看護職員(看護師,准看護師)採用者数(うち精神科病棟への配属者数),正規雇用の看護職員(看護師,准看護師)数(うち精神科病棟への配属者数),精神科における専門性の高い看護師数(専門看護師,認定看護師,特定行為研修修了者)とした.なお,数値を問う項目では実数の記入を,それ以外は単一選択により回答を求めた.

2) 新人看護職員の研修内容に関する項目

項目は,看護学士課程教育におけるコアコンピテンシー(日本看護系大学協議会,2018)を基に,狭義の精神看護にとって重要だと考えられる内容を選定し,わかりやすい表現に修正した.この過程においては,精神看護学を専門とする共同研究者全員で合意できるまで検討を繰り返した.最終的な項目数は73項目となり,それらは内容に沿って1)看護の基本となる研修内容,2)看護のアセスメントに関する研修内容,3)看護援助技術に関する研修内容,4)安全なケア環境とチーム医療に関する研修内容,5)看護専門職の研鑽に関する研修内容という5つの大項目に分類された.なお,回答は研修内容に含むか否かという二者択一で求めた.

5. 分析方法

本研究における分析対象項目対象施設の特徴については,精神科病床数の割合,病院機能評価の認定取得・平均在院日数,精神科における新卒看護職員数,専門性の高い看護職員数に関する5つの項目に限定した.なぜならば,これらの項目は,各施設の努力によって改善可能な内容であるほか,今後の新人看護教育を検討する上で重要な知見になり得ると考えたからである.また,精神科病床数については,全病床数に占める精神科病床数の割合が半数以上であるか否かを基準とし,総合病院または精神科を主とする病院からなる病院種別に分類した.平均在院日数については,2020年の精神病床の平均在院日数277.0日(厚生労働省,2022)を基準とし,長期群と短期群に分類した.病院機能評価の認定取得,精神科における新卒看護職員,専門性の高い看護職員については,2値データに変換した.対象施設の特徴と新人看護職員研修の内容との関連については,χ2検定を用いて分析した.なお,対象施設の基本情報については記述統計を算出した.

6. 倫理的配慮

研究開始に先立ち,大阪市立大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得た(承認番号2021-7-1).対象者には研究の趣旨と方法,調査協力は自由意思に基づくこと,無記名調査のため個人が特定されないこと,結果を論文等で公表すること,データは論文発表後の10年間厳重に保管されその後適切に廃棄されること,利益相反はないことを記載した説明文書を添付し,調査への回答をもって同意とみなした.

Ⅲ  結果

1. 対象施設の基本情報(表1
表1

対象施設の基本情報

n % 平均 ± SD
地方区分
 北海道 10 4.7
 東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島) 18 8.4
 関東(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川) 54 25.2
 中部(新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知) 44 20.6
 近畿(三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山) 29 13.6
 中国・四国(島根・鳥取・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・ 高知) 31 14.5
 九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄) 28 13.1
市区町村
 政令指定都市 33 15.4
 東京23区 4 1.9
 市 155 72.4
 町村 22 10.3
設置主体
 国立(厚生労働省立・国立病院機構・国立大学法人・独立行政法人機構) 14 6.5
 公立(都道府県立・市町村立) 30 14.0
 地方独立行政法人 13 6.1
 公益法人 13 6.1
 医療法人 121 56.5
 私立学校法人 7 3.3
 社会福祉法人 3 1.4
 その他 13 6.1
許可病床数
 100床未満 0 0.0
 100床以上200床未満 62 29.0
 200床以上300床未満 49 22.9
 300床以上400床未満 41 19.2
 400床以上500床未満 31 14.5
 500床以上 31 14.5
許可病床数のうち精神病床
 100床未満 52 24.3
 100床以上200床未満 66 30.8
 200床以上300床未満 41 19.2
 300床以上400床未満 30 14.0
 400床以上500床未満 19 8.9
 500床以上 6 2.8
精神科病棟の平均在院日数(2020年度) 366.27 ± 534.39
新卒看護職員採用者数(2021年4月1日)
 看護師数 19.41 ± 55.03
  うち精神科病棟に配属の看護師数 5.26 ± 20.52
 准看護師数 1.90 ± 7.10
  うち精神科病棟に配属の准看護師数 1.48 ± 6.11
正規雇用の看護職員数(2021年4月1日)
 看護師数 180.46 ± 239.80
  うち精神科病棟に配属の看護師数 68.79 ± 92.35
 准看護師数 13.17 ± 13.26
  うち精神科病棟に配属の准看護師数 11.17 ± 12.47
精神科における専門性の高い看護師数
 精神看護専門看護師 0.30 ± 0.75
 精神科認定看護師 0.97 ± 1.59
 特定行為研修修了者 0.23 ± 0.98
看護教育体制(委員会を含む)
 整備している 208 97.20
 整備していない 6 2.80

質問紙は,入院料に精神疾患に関する料金を算定している全国の病院1619施設に郵送し,回答数は246件(15.2%)であった.そのうち,新人看護職員の研修を実施していない25件と研修内容に関する項目において未選択が確認された7件を除外し,残りの214件(13.2%)を分析対象とした.ただし,平均在院日数については記入の不備が確認された4件のみを除外し,210件のみを分析対象とした.対象施設の地方区分のうち,最も多かったのは関東54件(25.2%)であり,市区町村区分では市が155件(72.4%)と最多であった.設置主体では,医療法人が121件(56.5%)と最多であった.許可病床数のうち多数を占めたのは100床以上200床未満62件(29.0%)であり,精神科病床数についても100床以上200床未満が66件(30.8%)と最多であった.また,精神科病棟の平均在院日数の平均(±SD)は,366.27日(±534.39)であった.新卒採用看護師数の平均は19.41(±55.03)人(うち精神科病棟への配属数は平均5.26人(±20.52)),新卒採用准看護師数の平均は1.90(±7.10)人(うち精神科病棟への配属人数は平均1.48(±6.11)人)であった.正規雇用看護数の平均は180.46(±239.80)人(うち精神科病棟への配属人数は平均68.79(±92.35)人),正規雇用准看護師数は平均13.17(±13.26)人(うち精神科病棟への配属人数は平均11.17(±12.47)人)であった.専門性の高い看護師数については,精神看護専門看護師0.30(±0.75)人,精神科認定看護師0.97(±1.59)人,特定行為研修修了者0.23(±0.98)人であり,看護教育体制を整備している施設が208件(97.2%)であった.

2. 対象施設の特徴と新人看護職員研修内容との関連

ここでは,対象施設の特徴と新人看護職員研修の内容との関連について示す.

1) 施設の特徴と看護の基本となる研修内容(表2-1

精神科を主とする病院では「グループ支援(32.9%,p < .05)」の実施割合が高く,総合病院では「看護実践に関わる倫理の原則(87.2%,p < .05)」,「看護側職の倫理規定(95.7%,p < .01)」,「インフォームドコンセント/アセント(68.1%,p < .05)」の実施割合が高かった.また,病院機能評価の認定施設では「ノーマライゼーション(53.9%)」「患者の権利(59.2%)」「情報倫理(80.3%)」「看護実践に関わる倫理の原則(88.2%)」「インフォームドコンセント/アセント(63.2%)」の実施割合が高く(p < .05),平均在院日数が短期の病院は「情報倫理(78.6%)」「看護職の倫理規定(84.9%)」「看護実践に関わる倫理の原則(81.0%)」「インフォームドコンセント/アセント(61.9%)」「自己理解の必要性や方法(46.0%)」の実施割合が高かった(p < .05).精神科において新人看護職員を採用している施設では「権利擁護(64.1%)」「患者の権利(55.9%)」「情報倫理(76.6%)」「コミュニケーションの原則と技術(73.1%)」「援助的関係の形成過程(40.0%)」「グループダイナミクス(21.4%)」「グループ支援(34.5%)」の実施割合が高く(p < .05),専門性の高い看護師を有する施設では「看護実践に関わる倫理の原則(81.7%)」「コミュニケーションの原則と技術(73.0%)」「治療的コミュニケーション(38.1%)」「グループ支援(34.9%)」の実施割合が高かった(p < .05).

表2-1

施設の特徴と看護の基本となる研修内容

病院種別 病院機能評価の認定状況 平均在院日数の長短 精神科における新卒看護職員採用の有無 専門性の高い看護師の有無
精神科を主
とする病院
(n = 167)
総合病院
(n = 47)
χ2 p 取得あり
(n = 76)
取得無し
(n = 138)
χ2 p 短期群
(n = 126)
長期群
(n = 84)
χ2 p あり
(n = 145)
無し
(n = 69)
χ2 p あり
(n = 126)
無し
(n = 88)
χ2 p
n % n % n % n % n % n % n % n % n % n %
基本的人権の尊重 研修有 133 79.6 36 76.6 0.21 .651 64 84.2 105 76.1 1.95 .163 101 80.2 65 77.4 0.24 .628 118 81.4 51 73.9 1.57 .210 95 75.4 74 84.1 2.36 .125
研修無 34 20.4 11 23.4 12 15.8 33 23.9 25 19.8 19 22.6 27 18.6 18 26.1 31 24.6 14 15.9
ノーマライゼーション 研修有 71 42.5 20 42.6 0.00 .996 41 53.9 50 36.2 6.29 .012* 60 47.6 30 35.7 2.92 .088 67 46.2 24 34.8 2.50 .114 56 44.4 35 39.8 0.46 .496
研修無 96 57.5 27 57.4 35 46.1 88 63.8 66 52.4 54 64.3 78 53.8 45 65.2 70 55.6 53 60.2
権利擁護(アドボカシー,代弁等) 研修有 96 57.5 27 57.4 0.00 .996 49 64.5 74 53.6 2.36 .124 77 61.1 44 52.4 1.57 .210 93 64.1 30 43.5 8.17 .004** 72 57.1 51 58.0 0.01 .906
研修無 71 42.5 20 42.6 27 35.5 64 46.4 49 38.9 40 47.6 52 35.9 39 56.5 54 42.9 37 42.0
患者の権利(リスボン宣言等) 研修有 77 46.1 28 59.6 2.66 .103 45 59.2 60 43.5 4.85 .028* 66 52.4 38 45.2 1.03 .310 81 55.9 24 34.8 8.31 .004** 66 52.4 39 44.3 1.35 .246
研修無 90 53.9 19 40.4 31 40.8 78 56.5 60 47.6 46 54.8 64 44.1 45 65.2 60 47.6 49 55.7
情報倫理(情報をもちいた社会形成に必要とされる一般的な行動の規範,道徳等) 研修有 115 68.9 36 76.6 1.06 .304 61 80.3 90 65.2 5.34 .021* 99 78.6 50 59.5 8.87 .003** 111 76.6 40 58.0 7.77 .005** 90 71.4 61 69.3 0.11 .739
研修無 52 31.1 11 23.4 15 19.7 48 34.8 27 21.4 34 40.5 34 23.4 29 42.0 36 28.6 27 30.7
個人情報の保護,プライバシーへの配慮,守秘義務 研修有 157 94.0 46 97.9 1.12 .463 74 97.4 129 93.5 1.52 .335 121 96.0 78 92.9 1.02 .354 137 94.5 66 95.7 0.13 1.000 121 96.0 82 93.2 0.86 .365
研修無 10 6.0 1 2.1 2 2.6 9 6.5 5 4.0 6 7.1 8 5.5 3 4.3 5 4.0 6 6.8
看護実践に関わる倫理の原則(自律尊重,善行,無危害,正義,誠実,忠誠の原則等) 研修有 120 71.9 41 87.2 4.66 .031* 67 88.2 94 68.1 10.57 .001** 102 81.0 56 66.7 5.52 .019* 114 78.6 47 68.1 2.77 .096 103 81.7 58 65.9 6.97 .008**
研修無 47 28.1 6 12.8 9 11.8 44 31.9 24 19.0 28 33.3 31 21.4 22 31.9 23 18.3 30 34.1
看護職の倫理規定(「看護職の倫理綱領」等) 研修有 127 76.0 45 95.7 9.02 .003** 64 84.2 108 78.3 1.10 .294 107 84.9 62 73.8 3.96 .047* 119 82.1 53 76.8 0.82 .365 101 80.2 71 80.7 0.01 .924
研修無 40 24.0 2 4.3 12 15.8 30 21.7 19 15.1 22 26.2 26 17.9 16 23.2 25 19.8 17 19.3
インフォームド・コンセント/インフォームド・アセント(患者の理解力に応じた平易な表現の説明等) 研修有 82 49.1 32 68.1 5.31 .021* 48 63.2 66 47.8 4.63 .031* 78 61.9 34 40.5 9.30 .002** 82 56.6 32 46.4 1.94 .163 73 57.9 41 46.6 2.68 .102
研修無 85 50.9 15 31.9 28 36.8 72 52.2 48 38.1 50 59.5 63 43.4 37 53.6 53 42.1 47 53.4
自己理解の必要性や方法 研修有 60 35.9 24 51.1 3.52 .060 28 36.8 56 40.6 0.29 .592 58 46.0 24 28.6 6.46 .011* 61 42.1 23 33.3 1.50 .221 55 43.7 29 33.0 2.49 .115
研修無 107 64.1 23 48.9 48 63.2 82 59.4 68 54.0 60 71.4 84 57.9 46 66.7 71 56.3 59 67.0
自己分析,相互作用(プロセスレコードを用いた分析等) 研修有 38 22.8 17 36.2 3.46 .063 19 25.0 36 26.1 0.03 .862 35 27.8 19 22.6 0.70 .402 43 29.7 12 17.4 3.68 .055 37 29.4 18 20.5 2.15 .142
研修無 129 77.2 30 63.8 57 75.0 102 73.9 91 72.2 65 77.4 102 70.3 57 82.6 89 70.6 70 79.5
対人関係(対人関係に関する諸理論,信頼関係の形成等) 研修有 73 43.7 24 51.1 0.80 .371 36 47.4 61 44.2 0.20 .656 57 45.2 37 44.0 0.03 .865 72 49.7 25 36.2 3.40 .065 63 50.0 34 38.6 2.70 .100
研修無 94 56.3 23 48.9 40 52.6 77 55.8 69 54.8 47 56.0 73 50.3 44 63.8 63 50.0 54 61.4
コミュニケーションの原則と技術(基本的な傾聴技法等) 研修有 113 67.7 30 63.8 0.24 .622 52 68.4 91 65.9 0.14 .712 90 71.4 51 60.7 2.62 .105 106 73.1 37 53.6 8.00 .005** 92 73.0 51 58.0 5.30 .021*
研修無 54 32.3 17 36.2 24 31.6 47 34.1 36 28.6 33 39.3 39 26.9 32 46.4 34 27.0 37 42.0
治療的コミュニケーション 研修有 57 34.1 11 23.4 1.95 .163 22 28.9 46 33.3 0.44 .510 41 32.5 26 31.0 0.06 .809 52 35.9 16 23.2 3.46 .063 48 38.1 20 22.7 5.65 .018*
研修無 110 65.9 36 76.6 54 71.1 92 66.7 85 67.5 58 69.0 93 64.1 53 76.8 78 61.9 68 77.3
援助的関係の形成過程(患者-看護師関係等) 研修有 58 34.7 13 27.7 0.83 .363 26 34.2 45 32.6 0.06 .812 44 34.9 26 31.0 0.36 .550 58 40.0 13 18.8 9.44 .002** 47 37.3 24 27.3 2.35 .125
研修無 109 65.3 34 72.3 50 65.8 93 67.4 82 65.1 58 69.0 87 60.0 56 81.2 79 62.7 64 72.7
グループダイナミクス(集団力動,集団の凝集性等) 研修有 27 16.2 11 23.4 1.32 .251 13 17.1 25 18.1 0.03 .853 28 22.2 10 11.9 3.62 .057 31 21.4 7 10.1 4.04 .044* 27 21.4 11 12.5 2.83 .093
研修無 140 83.8 36 76.6 63 82.9 113 81.9 98 77.8 74 88.1 114 78.6 62 89.9 99 78.6 77 87.5
グループ支援(SST,心理教育,リワークプログラム,家族会等) 研修有 55 32.9 7 14.9 5.80 .016* 27 35.5 35 25.4 2.46 .117 38 30.2 24 28.6 0.06 .805 50 34.5 12 17.4 6.64 .010** 44 34.9 18 20.5 5.27 .022*
研修無 112 67.1 40 85.1 49 64.5 103 74.6 88 69.8 60 71.4 95 65.5 57 82.6 82 65.1 70 79.5

*** P < .001 ** P < .01 * P < .05

2) 施設の特徴と看護のアセスメントに関する研修内容(表2-2
表2-2

施設の特徴と看護のアセスメントに関する研修内容

病院種別 病院機能評価の認定状況 平均在院日数の長短 精神科における新卒看護職員採用の有無 専門性の高い看護師の有無
精神科を主
とする病院
(n = 167)
総合病院
(n = 47)
χ2 p 取得あり
(n = 76)
取得無し
(n = 138)
χ2 p 短期群
(n = 126)
長期群
(n = 84)
χ2 p あり
(n = 145)
無し
(n = 69)
χ2 p あり
(n = 126)
無し
(n = 88)
χ2 p
n % n % n % n % n % n % n % n % n % n %
看護過程の展開(アセスメント・計画・実施・評価) 研修有 97 58.1 39 83.0 9.81 .002** 55 72.4 81 58.7 3.96 .047* 86 68.3 47 56.0 3.28 .070 89 61.4 47 68.1 0.92 .339 80 63.5 56 63.6 0.00 .983
研修無 70 41.9 8 17.0 21 27.6 57 41.3 40 31.7 37 44.0 56 38.6 22 31.9 46 36.5 32 36.4
看護情報と看護記録(記録の目的,法的意義,管理,評価等) 研修有 118 70.7 44 93.6 10.51 .001** 61 80.3 101 73.2 1.33 .248 103 81.7 57 67.9 5.36 .021* 111 76.6 51 73.9 0.18 .674 98 77.8 64 72.7 0.72 .397
研修無 49 29.3 3 6.4 15 19.7 37 26.8 23 18.3 27 32.1 34 23.4 18 26.1 28 22.2 24 27.3
人間の基本的欲求・不安 研修有 43 25.7 18 38.3 2.83 .092 21 27.6 40 29.0 0.04 .834 37 29.4 23 27.4 0.10 .755 45 31.0 16 23.2 1.41 .235 43 34.1 18 20.5 4.75 .029*
研修無 124 74.3 29 61.7 55 72.4 98 71.0 89 70.6 61 72.6 100 69.0 53 76.8 83 65.9 70 79.5
発達段階と発達課題(ライフサイクル各期の特徴) 研修有 36 21.6 9 19.1 0.13 .720 17 22.4 28 20.3 0.13 .721 33 26.2 12 14.3 4.24 .039* 39 26.9 6 8.7 9.33 .002** 34 27.0 11 12.5 6.55 .011*
研修無 131 78.4 38 80.9 59 77.6 110 79.7 93 73.8 72 85.7 106 73.1 63 91.3 92 73.0 77 87.5
精神の仕組みと働き(心の構造,自我防衛機制等) 研修有 49 29.3 6 12.8 5.28 .022* 19 25.0 36 26.1 0.03 .862 32 25.4 23 27.4 0.10 .749 45 31.0 10 14.5 6.70 .010** 37 29.4 18 20.5 2.15 .142
研修無 118 70.7 41 87.2 57 75.0 102 73.9 94 74.6 61 72.6 100 69.0 59 85.5 89 70.6 70 79.5
人間にとってのストレスとストレスへの適応・対処行動 研修有 63 37.7 28 59.6 7.16 .007** 40 52.6 51 37.0 4.93 .026* 62 49.2 28 33.3 5.19 .023* 62 42.8 29 42.0 0.01 .920 63 50.0 28 31.8 7.01 .008**
研修無 104 62.3 19 40.4 36 47.4 87 63.0 64 50.8 56 66.7 83 57.2 40 58.0 63 50.0 60 68.2
精神疾患の病態と症状 研修有 127 76.0 10 21.3 47.77 .000*** 45 59.2 92 66.7 1.18 .277 71 56.3 64 76.2 8.64 .003** 99 68.3 38 55.1 3.54 .060 81 64.3 56 63.6 0.01 .922
研修無 40 24.0 37 78.7 31 40.8 46 33.3 55 43.7 20 23.8 46 31.7 31 44.9 45 35.7 32 36.4
精神疾患の早期発見,早期診断,早期治療,社会復帰 研修有 70 41.9 6 12.8 13.61 .000*** 25 32.9 51 37.0 0.35 .552 44 34.9 31 36.9 0.09 .769 56 38.6 20 29.0 1.90 .169 47 37.3 29 33.0 0.43 .513
研修無 97 58.1 41 87.2 51 67.1 87 63.0 82 65.1 53 63.1 89 61.4 49 71.0 79 62.7 59 67.0
身体合併症の予防と早期発見 研修有 81 48.5 15 31.9 4.08 .043* 35 46.1 61 44.2 0.07 .795 60 47.6 34 40.5 1.04 .308 73 50.3 23 33.3 5.47 .019* 62 49.2 34 38.6 2.34 .126
研修無 86 51.5 32 68.1 41 53.9 77 55.8 66 52.4 50 59.5 72 49.7 46 66.7 64 50.8 54 61.4
精神機能のアセスメント(意識,注意,知覚,感情,気分,欲求,衝動,思考,記憶,知能等) 研修有 62 37.1 10 21.3 4.13 .042* 24 31.6 48 34.8 0.23 .635 44 34.9 27 32.1 0.17 .677 52 35.9 20 29.0 0.99 .320 46 36.5 26 29.5 1.13 .289
研修無 105 62.9 37 78.7 52 68.4 90 65.2 82 65.1 57 67.9 93 64.1 49 71.0 80 63.5 62 70.5
生物・心理・社会的視点(身体状態の精神状態への影響や心理社会的問題等包括的な視点)からのアセスメント 研修有 45 26.9 9 19.1 1.18 .277 17 22.4 37 26.8 0.51 .474 31 24.6 23 27.4 0.20 .652 39 26.9 15 21.7 0.66 .417 33 26.2 21 23.9 0.15 .700
研修無 122 73.1 38 80.9 59 77.6 101 73.2 95 75.4 61 72.6 106 73.1 54 78.3 93 73.8 67 76.1
ストレングスの視点に基づくアセスメント 研修有 43 25.7 6 12.8 3.50 .061 17 22.4 32 23.2 0.02 .891 33 26.2 16 19.0 1.44 .231 34 23.4 15 21.7 0.08 .781 32 25.4 17 19.3 1.08 .298
研修無 124 74.3 41 87.2 59 77.6 106 76.8 93 73.8 68 81.0 111 76.6 54 78.3 94 74.6 71 80.7
精神疾患とともに生きる営みへと移行する支援 研修有 37 22.2 5 10.6 3.08 .079 16 21.1 26 18.8 0.15 .697 28 22.2 14 16.7 0.97 .324 32 22.1 10 14.5 1.70 .192 27 21.4 15 17.0 0.63 .427
研修無 130 77.8 42 89.4 60 78.9 112 81.2 98 77.8 70 83.3 113 77.9 59 85.5 99 78.6 73 83.0
個人のセルフケア(食事・水分・空気,排泄,個人衛生,活動と休息,孤独と人付き合い,安全を保つ能力等) 研修有 65 38.9 12 25.5 2.86 .091 25 32.9 52 37.7 0.49 .485 43 34.1 33 39.3 0.58 .446 54 37.2 23 33.3 0.31 .578 43 34.1 34 38.6 0.46 .499
研修無 102 61.1 35 74.5 51 67.1 86 62.3 83 65.9 51 60.7 91 62.8 46 66.7 83 65.9 54 61.4
家族機能,家族の生活 研修有 42 25.1 9 19.1 0.73 .394 16 21.1 35 25.4 0.50 .479 30 23.8 21 25.0 0.04 .844 37 25.5 14 20.3 0.70 .402 36 28.6 15 17.0 3.79 .051
研修無 125 74.9 38 80.9 60 78.9 103 74.6 96 76.2 63 75.0 108 74.5 55 79.7 90 71.4 73 83.0

*** P < .001 ** P < .01 * P < .05

精神科を主とする病院では「精神の仕組みと働き(29.3%)」「精神疾患の病態と症状(76.0%)」「精神疾患の早期発見,早期診断,早期治療,社会復帰(41.9%)」「身体合併症の予防と早期発見(48.5%)」「精神機能のアセスメント(37.1%)」の実施割合が高かった(p < .05).また,病院機能評価の認定施設では「看護過程の展開(72.4%)」「人間にとってのストレスとストレスへの適応・対処行動(52.6%)」の実施割合が高く(p < .05),平均在院日数が短期の施設では「看護情報と看護記録(81.7%)」「発達段階と発達課題(26.2%)」「人間にとってのストレスとストレスへの適応・対処行動(49.2%)」の実施割合が高かった(p < .05).精神科において新人看護職員を採用している施設では「発達段階と発達課題(26.9%)」「精神の仕組みと働き(31.0%)」「身体合併症の予防と早期発見(50.3%)」の実施割合が高く(p < .05),専門性の高い看護師を有する施設では「人間の基本的欲求・不安(34.1%)」「発達段階と発達課題(27.0%)」「人間にとってのストレスとストレスへの適応・対処行動(50.0%)」の実施割合が高かった(p < .05).

3) 施設の特徴と看護援助技術に関する研修内容(表2-3
表2-3

施設の特徴と看護援助技術に関する研修内容

病院種別 病院機能評価の認定状況 平均在院日数の長短 精神科における新卒看護職員採用の有無 専門性の高い看護師の有無
精神科を主
とする病院
(n = 167)
総合病院
(n = 47)
χ2 p 取得あり
(n = 76)
取得無し
(n = 138)
χ2 p 短期群
n = 126)
長期群
(n = 84)
χ2 p あり
(n = 145)
無し
(n = 69)
χ2 p あり
(n = 126)
無し
(n = 88)
χ2 p
n % n % n % n % n % n % n % n % n % n %
救命救急処置技術(気道確保や人工呼吸,チームへの応援要請,AED等) 研修有 141 84.4 46 97.9 6.01 .014* 72 94.7 115 83.3 5.78 .016* 116 92.1 67 79.8 6.81 .009** 132 91.0 55 79.7 5.44 .020* 112 88.9 75 85.2 0.63 .427
研修無 26 15.6 1 2.1 4 5.3 23 16.7 10 7.9 17 20.2 13 9.0 14 20.3 14 11.1 13 14.8
患者を取り巻く人的・物理的環境調整の技術(病室環境の整備,ベッドメイキング,人々の調整等) 研修有 90 53.9 39 83.0 12.96 .000*** 49 64.5 80 58.0 0.87 .352 84 66.7 43 51.2 5.05 .025* 88 60.7 41 59.4 0.03 .859 71 56.3 58 65.9 1.98 .160
研修無 77 46.1 8 17.0 27 35.5 58 42.0 42 33.3 41 48.8 57 39.3 28 40.6 55 43.7 30 34.1
日常生活援助技術(精神疾患患者の日常生活の特徴と援助技術) 研修有 97 58.1 21 44.7 2.66 .103 42 55.3 76 55.1 0.00 .979 71 56.3 46 54.8 0.05 .821 81 55.9 37 53.6 0.10 .758 71 56.3 47 53.4 0.18 .670
研修無 70 41.9 26 55.3 34 44.7 62 44.9 55 43.7 38 45.2 64 44.1 32 46.4 55 43.7 41 46.6
症状管理技術(精神症状の理解と精神症状のある患者への対応) 研修有 90 53.9 13 27.7 10.11 .001** 36 47.4 67 48.6 0.03 .868 58 46.0 44 52.4 0.81 .367 74 51.0 29 42.0 1.52 .218 60 47.6 43 48.9 0.03 .858
研修無 77 46.1 34 72.3 40 52.6 71 51.4 68 54.0 40 47.6 71 49.0 40 58.0 66 52.4 45 51.1
自立支援の援助技術(精神疾患患者のセルフケア能力の向上と意思決定の促進等) 研修有 70 41.9 9 19.1 8.16 .004** 27 35.5 52 37.7 0.10 .755 44 34.9 35 41.7 0.98 .323 56 38.6 23 33.3 0.56 .454 49 38.9 30 34.1 0.51 .474
研修無 97 58.1 38 80.9 49 64.5 86 62.3 82 65.1 49 58.3 89 61.4 46 66.7 77 61.1 58 65.9
退院後の療養生活に関する相談(看護面談・看護相談等) 研修有 45 26.9 13 27.7 0.01 .923 26 34.2 32 23.2 3.01 .083 40 31.7 18 21.4 2.68 .101 41 28.3 17 24.6 0.31 .576 40 31.7 18 20.5 3.34 .067
研修無 122 73.1 34 72.3 50 65.8 106 76.8 86 68.3 66 78.6 104 71.7 52 75.4 86 68.3 70 79.5
健康に関する教育(患者教育等) 研修有 31 18.6 10 21.3 0.17 .676 16 21.1 25 18.1 0.27 .601 28 22.2 13 15.5 1.46 .227 31 21.4 10 14.5 1.43 .232 27 21.4 14 15.9 1.02 .313
研修無 136 81.4 37 78.7 60 78.9 113 81.9 98 77.8 71 84.5 114 78.6 59 85.5 99 78.6 74 84.1
危機介入(危機理論,クライシスプラン等) 研修有 41 24.6 9 19.1 0.60 .439 18 23.7 32 23.2 0.01 .935 30 23.8 20 23.8 0.00 1.000 35 24.1 15 21.7 0.15 .698 35 27.8 15 17.0 3.33 .068
研修無 126 75.4 38 80.9 58 76.3 106 76.8 96 76.2 64 76.2 110 75.9 54 78.3 91 72.2 73 83.0
医療系の社会資源の活用(自立支援医療制度,訪問看護等) 研修有 68 40.7 12 25.5 3.61 .057 30 39.5 50 36.2 0.22 .639 44 34.9 36 42.9 1.35 .246 54 37.2 26 37.7 0.00 .950 52 41.3 28 31.8 1.98 .160
研修無 99 59.3 35 74.5 46 60.5 88 63.8 82 65.1 48 57.1 91 62.8 43 62.3 74 58.7 60 68.2
福祉系の社会資源の活用(地域活動支援センター,就労支援,障害年金,障害福祉サービス申請等) 研修有 57 34.1 10 21.3 2.82 .093 17 22.4 50 36.2 4.38 .036* 39 31.0 28 33.3 0.13 .717 40 27.6 27 39.1 2.90 .089 40 31.7 27 30.7 0.03 .869
研修無 110 65.9 37 78.7 59 77.6 88 63.8 87 69.0 56 66.7 105 72.4 42 60.9 86 68.3 61 69.3
向精神薬の分類 研修有 96 57.5 15 31.9 9.61 .002** 40 52.6 71 51.4 0.03 .868 71 56.3 39 46.4 1.99 .158 79 54.5 32 46.4 1.23 .267 65 51.6 46 52.3 0.01 .921
研修無 71 42.5 32 68.1 36 47.4 67 48.6 55 43.7 45 53.6 66 45.5 37 53.6 61 48.4 42 47.7
向精神薬の作用機序,作用,副作用,有害事象,薬物動態 研修有 104 62.3 14 29.8 15.65 .000*** 42 55.3 76 55.1 0.00 .979 69 54.8 48 57.1 0.12 .734 86 59.3 32 46.4 3.16 .075 69 54.8 49 55.7 0.02 .894
研修無 63 37.7 33 70.2 34 44.7 62 44.9 57 45.2 36 42.9 59 40.7 37 53.6 57 45.2 39 44.3
与薬の技術①:薬理作用と薬物療法 研修有 107 64.1 31 66.0 0.06 .811 55 72.4 83 60.1 3.20 .074 91 72.2 45 53.6 7.68 .006** 97 66.9 41 59.4 1.14 .285 86 68.3 52 59.1 1.90 .168
研修無 60 35.9 16 34.0 21 27.6 55 39.9 35 27.8 39 46.4 48 33.1 28 40.6 40 31.7 36 40.9
与薬の技術②:経口・外用薬の与薬方法 研修有 105 62.9 30 63.8 0.01 .905 49 64.5 86 62.3 0.10 .755 86 68.3 48 57.1 2.69 .101 93 64.1 42 60.9 0.21 .643 82 65.1 53 60.2 0.52 .469
研修無 62 37.1 17 36.2 27 35.5 52 37.7 40 31.7 36 42.9 52 35.9 27 39.1 44 34.9 35 39.8
与薬の技術③:注射の方法(筋肉注射,点滴静脈内注射等) 研修有 116 69.5 34 72.3 0.15 .703 59 77.6 91 65.9 3.20 .074 100 79.4 49 58.3 10.82 .001** 105 72.4 45 65.2 1.16 .283 91 72.2 59 67.0 0.66 .416
研修無 51 30.5 13 27.7 17 22.4 47 34.1 26 20.6 35 41.7 40 27.6 24 34.8 35 27.8 29 33.0
薬物療法のモニタリング(治療効果や副作用等の観察) 研修有 68 40.7 16 34.0 0.69 .408 29 38.2 55 39.9 0.06 .808 53 42.1 30 35.7 0.85 .357 60 41.4 24 34.8 0.85 .356 48 38.1 36 40.9 0.17 .678
研修無 99 59.3 31 66.0 47 61.8 83 60.1 73 57.9 54 64.3 85 58.6 45 65.2 78 61.9 52 59.1
薬物療法に対するアドヒアランスの支援(主体的な服薬継続に関する教育支援等) 研修有 56 33.5 12 25.5 1.08 .298 26 34.2 42 30.4 0.32 .570 41 32.5 26 31.0 0.06 .809 49 33.8 19 27.5 0.84 .358 40 31.7 28 31.8 0.00 .991
研修無 111 66.5 35 74.5 50 65.8 96 69.6 85 67.5 58 69.0 96 66.2 50 72.5 86 68.3 60 68.2
ピアサポート 研修有 27 16.2 8 17.0 0.02 .889 16 21.1 19 13.8 1.90 .168 28 22.2 7 8.3 7.00 .008** 26 17.9 9 13.0 0.82 .366 25 19.8 10 11.4 2.72 .099
研修無 140 83.8 39 83.0 60 78.9 119 86.2 98 77.8 77 91.7 119 82.1 60 87.0 101 80.2 78 88.6
精神疾患患者の家族への精神的援助 研修有 47 28.1 5 10.6 6.11 .013* 20 26.3 32 23.2 0.26 .610 31 24.6 21 25.0 0.00 .948 38 26.2 14 20.3 0.89 .346 37 29.4 15 17.0 4.28 .039*
研修無 120 71.9 42 89.4 56 73.7 106 76.8 95 75.4 63 75.0 107 73.8 55 79.7 89 70.6 73 83.0

*** P < .001 ** P < .01 * P < .05

精神科を主とする施設では「病状管理技術(53.9%)」「自立支援の援助技術(41.9%)」「向精神薬の分類(57.5%)」「向精神薬の作用機序,作用,副作用,有害事象,薬物動態(62.3%)」「精神疾患患者の家族への精神的援助(28.1%)」の実施割合が高かった(p < .05).また,病院機能評価の認定施設では「救急救命処置技術(94.7%)」の実施割合が高く(p < .05),平均在院日数が短期の施設は「救急救命処置技術(92.1%)」「患者を取り巻く人的・物理的環境調整の技術(66.7%)」「与薬の技術①:薬理作用と薬物療法(72.2%)」「与薬の技術③:注射の方法(79.4%)」「ピアサポート(22.2%)」の実施割合が高かった(p < .05).精神科において新人看護職員を採用している施設では「救急救命処置技術(91.0%)」の実施割合が高く(p < .05),専門性の高い看護師を有する施設では「精神疾患患者の家族への精神的援助(29.4%)」の実施割合が高かった(p < .05).

4) 施設の特徴と安全なケア環境とチーム医療に関する研修内容(表2-4
表2-4

施設の特徴と安全なケア環境とチーム医療に関する研修内容

病院種別 病院機能評価の認定状況 平均在院日数の長短 精神科における新卒看護職員採用の有無 専門性の高い看護師の有無
精神科を主
とする病院
(n = 167)
総合病院
(n = 47)
χ2 p 取得あり
(n = 76)
取得無し
(n = 138)
χ2 p 短期群
(n = 126)
長期群
(n = 84)
χ2 p あり
(n = 145)
無し
(n = 69)
χ2 p あり
(n = 126)
無し
(n = 88)
χ2 p
n % n % n % n % n % n % n % n % n % n %
リスクマネジメント 研修有 128 76.6 40 85.1 1.56 .212 61 80.3 107 77.5 0.22 .642 104 82.5 62 73.8 2.32 .128 110 75.9 58 84.1 1.86 .173 98 77.8 70 79.5 0.10 .757
研修無 39 23.4 7 14.9 15 19.7 31 22.5 22 17.5 22 26.2 35 24.1 11 15.9 28 22.2 18 20.5
セーフティマネジメント 研修有 61 36.5 24 51.1 3.24 .072 35 46.1 50 36.2 1.97 .160 60 47.6 25 29.8 6.67 .010** 61 42.1 24 34.8 1.04 .309 55 43.7 30 34.1 1.98 .160
研修無 106 63.5 23 48.9 41 53.9 88 63.8 66 52.4 59 70.2 84 57.9 45 65.2 71 56.3 58 65.9
医療安全対策 (転倒・転落・褥瘡・暴力・離院・自殺等の予防と対策,CVPPP,災害発生時の対応等) 研修有 159 95.2 39 83.0 7.93 .010** 71 93.4 127 92.0 0.14 .711 116 92.1 80 95.2 0.82 .366 137 94.5 61 88.4 2.50 .114 119 94.4 79 89.8 1.64 .201
研修無 8 4.8 8 17.0 5 6.6 11 8.0 10 7.9 4 4.8 8 5.5 8 11.6 7 5.6 9 10.2
インシデントレポート 研修有 142 85.0 42 89.4 0.57 .450 67 88.2 117 84.8 0.46 .496 115 91.3 67 79.8 5.78 .016* 126 86.9 58 84.1 0.31 .576 110 87.3 74 84.1 0.44 .506
研修無 25 15.0 5 10.6 9 11.8 21 15.2 11 8.7 17 20.2 19 13.1 11 15.9 16 12.7 14 15.9
感染防止対策(MRSA,肝炎,疥癬,新型コロナウイルス対策等) 研修有 151 90.4 46 97.9 2.79 .129 73 96.1 124 89.9 2.57 .109 118 93.7 76 90.5 0.72 .396 132 91.0 65 94.2 0.64 .423 115 91.3 82 93.2 0.26 .611
研修無 16 9.6 1 2.1 3 3.9 14 10.1 8 6.3 8 9.5 13 9.0 4 5.8 11 8.7 6 6.8
スタンダードプリコーション (手洗い,防護用具の装着,使用した器具の取り扱い,無菌操作等) 研修有 157 94.0 46 97.9 1.12 .463 73 96.1 130 94.2 0.34 .750 122 96.8 78 92.9 1.75 .203 138 95.2 65 94.2 0.09 .749 119 94.4 84 95.5 0.11 1.000
研修無 10 6.0 1 2.1 3 3.9 8 5.8 4 3.2 6 7.1 7 4.8 4 5.8 7 5.6 4 4.5
チーム医療(他職種の専門性と相互の尊重等) 研修有 100 59.9 31 66.0 0.57 .450 55 72.4 76 55.1 6.18 .013* 82 65.1 49 58.3 0.98 .323 90 62.1 41 59.4 0.14 .710 80 63.5 51 58.0 0.67 .413
研修無 67 40.1 16 34.0 21 27.6 62 44.9 44 34.9 35 41.7 55 37.9 28 40.6 46 36.5 37 42.0
チームの中での看護専門職の役割 研修有 67 40.1 25 53.2 2.56 .110 37 48.7 55 39.9 1.56 .212 63 50.0 29 34.5 4.90 .027* 66 45.5 26 37.7 1.17 .279 64 50.8 28 31.8 7.61 .006**
研修無 100 59.9 22 46.8 39 51.3 83 60.1 63 50.0 55 65.5 79 54.5 43 62.3 62 49.2 60 68.2
アサーティブコミュニケーション 研修有 32 19.2 18 38.3 7.50 .006** 19 25.0 31 22.5 0.18 .675 35 27.8 15 17.9 2.73 .098 38 26.2 12 17.4 2.03 .154 32 25.4 18 20.5 0.71 .401
研修無 135 80.8 29 61.7 57 75.0 107 77.5 91 72.2 69 82.1 107 73.8 57 82.6 94 74.6 70 79.5
カンファレンスの運営方法 研修有 27 16.2 9 19.1 0.23 .629 13 17.1 23 16.7 0.01 .935 21 16.7 14 16.7 0.00 1.000 19 13.1 17 24.6 4.45 .035* 21 16.7 15 17.0 0.01 .942
研修無 140 83.8 38 80.9 63 82.9 115 83.3 105 83.3 70 83.3 126 86.9 52 75.4 105 83.3 73 83.0
多職種連携のために必要な情報 研修有 55 32.9 17 36.2 0.17 .678 32 42.1 40 29.0 3.78 .052 45 35.7 27 32.1 0.29 .593 45 31.0 27 39.1 1.37 .241 46 36.5 26 29.5 1.13 .289
研修無 112 67.1 30 63.8 44 57.9 98 71.0 81 64.3 57 67.9 100 69.0 42 60.9 80 63.5 62 70.5
地域包括支援センターとの連携 研修有 35 21.0 15 31.9 2.46 .117 22 28.9 28 20.3 2.05 .152 34 27.0 16 19.0 1.75 .186 33 22.8 17 24.6 0.09 .761 33 26.2 17 19.3 1.37 .242
研修無 132 79.0 32 68.1 54 71.1 110 79.7 92 73.0 68 81.0 112 77.2 52 75.4 93 73.8 71 80.7
訪問看護ステーションとの連携 研修有 38 22.8 15 31.9 1.65 .199 22 28.9 31 22.5 1.11 .293 35 27.8 18 21.4 1.08 .299 34 23.4 19 27.5 0.42 .517 35 27.8 18 20.5 1.49 .222
研修無 129 77.2 32 68.1 54 71.1 107 77.5 91 72.2 66 78.6 111 76.6 50 72.5 91 72.2 70 79.5
地域包括センター・訪問看護ステーション以外の関係機関との連携 研修有 23 13.8 12 25.5 3.71 .054 17 22.4 18 13.0 3.12 .078 25 19.8 10 11.9 2.29 .131 22 15.2 13 18.8 0.46 .498 25 19.8 10 11.4 2.72 .099
研修無 144 86.2 35 74.5 59 77.6 120 87.0 101 80.2 74 88.1 123 84.8 56 81.2 101 80.2 78 88.6
ケアマネジメント 研修有 19 11.4 5 10.6 0.02 .887 9 11.8 15 10.9 0.05 .829 13 10.3 11 13.1 0.38 .535 16 11.0 8 11.6 0.02 .903 15 11.9 9 10.2 0.15 .702
研修無 148 88.6 42 89.4 67 88.2 123 89.1 113 89.7 73 86.9 129 89.0 61 88.4 111 88.1 79 89.8
患者と家族を中心としたチーム医療・チームケア 研修有 43 25.7 16 34.0 1.26 .261 23 30.3 36 26.1 0.43 .513 33 26.2 25 29.8 0.32 .571 39 26.9 20 29.0 0.10 .749 33 26.2 26 29.5 0.29 .589
研修無 124 74.3 31 66.0 53 69.7 102 73.9 93 73.8 59 70.2 106 73.1 49 71.0 93 73.8 62 70.5
退院支援・退院調整 研修有 67 40.1 21 44.7 0.32 .575 30 39.5 58 42.0 0.13 .716 55 43.7 32 38.1 0.64 .423 55 37.9 33 47.8 1.89 .169 48 38.1 40 45.5 1.16 .282
研修無 100 59.9 26 55.3 46 60.5 80 58.0 71 56.3 52 61.9 90 62.1 36 52.2 78 61.9 48 54.5

*** P < .001 ** P < .01 * P < .05

精神科を主とする施設では,離院や自殺予防等の対応を含む「医療安全対策(95.2%)」の実施割合が高く(p < .01),病院機能評価の認定施設では,「チーム医療(72.4%)」の実施割合が高かった(p < .05).さらに,平均在院日数が短期の施設は「セーフティマネージメント(47.6%)」「インシデントレポ―ト(91.3%)」「チームの中での看護専門職の役割(50.0%)」の実施割合が高かった(p < .05).精神科において新人看護職員を採用していない施設では「カンファレンスの運営方法(24.6%)」の実施割合が高く(p < .05),専門性の高い看護師を有する施設では「チームの中での看護専門職の役割(50.8%)」の実施割合が高かった(p < .01).

5) 施設の特徴と看護専門職の研鑽に関する研修内容(表2-5
表2-5

施設の特徴と看護専門職の研鑽に関する研修内容

病院種別 病院機能評価の認定状況 平均在院日数の長短 精神科における新卒看護職員採用の有無 専門性の高い看護師の有無
精神科を主
とする病院
(n = 167)
総合病院
(n = 47)
χ2 p 取得あり
(n = 76)
取得無し
(n = 138)
χ2 p 短期群
(n = 126)
長期群
(n = 84)
χ2 p あり
(n = 145)
無し
(n = 69)
χ2 p あり
(n = 126)
無し
(n = 88)
χ2 p
n % n % n % n % n % n % n % n % n % n %
情報リテラシー(情報倫理,電子カルテ,オーダリングシステム等) 研修有 72 43.1 24 51.1 0.94 .333 34 44.7 62 44.9 0.00 .979 62 49.2 33 39.3 2.00 .157 66 45.5 30 43.5 0.08 .779 63 50.0 33 37.5 3.27 .070
研修無 95 56.9 23 48.9 42 55.3 76 55.1 64 50.8 51 60.7 79 54.5 39 56.5 63 50.0 55 62.5
自己のストレスへの対処(ストレスマネジメント,マインドフルネス,アンガーマネジメント等) 研修有 73 43.7 27 57.4 2.78 .095 38 50.0 62 44.9 0.51 .477 62 49.2 36 42.9 0.82 .366 68 46.9 32 46.4 0.01 .943 62 49.2 38 43.2 0.76 .385
研修無 94 56.3 20 42.6 38 50.0 76 55.1 64 50.8 48 57.1 77 53.1 37 53.6 64 50.8 50 56.8
キャリアデザイン(専門看護師,認定看護師,ナースプラクティショナー,キャリアマネジメント等) 研修有 35 21.0 17 36.2 4.61 .032* 19 25.0 33 23.9 0.03 .859 34 27.0 18 21.4 0.84 .361 32 22.1 20 29.0 1.22 .270 31 24.6 21 23.9 0.02 .901
研修無 132 79.0 30 63.8 57 75.0 105 76.1 92 73.0 66 78.6 113 77.9 49 71.0 95 75.4 67 76.1
プロフェッショナリズム(看護学の価値を発展させる視点や職業アイデンティティの形成等) 研修有 16 9.6 6 12.8 0.40 .587 7 9.2 15 10.9 0.15 .702 12 9.5 10 11.9 0.31 .581 18 12.4 4 5.8 2.22 .136 16 12.7 6 6.8 1.94 .163
研修無 151 90.4 41 87.2 69 90.8 123 89.1 114 90.5 74 88.1 127 87.6 65 94.2 110 87.3 82 93.2
看護職能団体とその活用(日本看護協会,日本精神科看護協会の紹介等) 研修有 102 61.1 32 68.1 0.77 .380 49 64.5 85 61.6 0.17 .677 78 61.9 54 64.3 0.12 .726 92 63.4 42 60.9 0.13 .716 83 65.9 51 58.0 1.39 .239
研修無 65 38.9 15 31.9 27 35.5 53 38.4 48 38.1 30 35.7 53 36.6 27 39.1 43 34.1 37 42.0

*** P < .001 ** P < .01 * P < .05

総合病院では精神科を主とする施設に比べ,「キャリアデザイン(専門看護師,認定看護師,ナースプラクティショナー,キャリアマネジメント等)(36.2%)」の実施割合が高かった(p < .05)が,その他の項目では有意な差は見られなかった.

Ⅳ  考察

1. 対象施設の基本情報について

本調査の対象施設の地方区分においては,国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(2022)の630調査集計データの割合に比べ,関東・中部・近畿の割合が若干高いものの大きな偏りはなかったと考える.また設置主体は医療法人が最多であり,病床数は100床以上200床未満が最多であったことは,先行研究(日本精神科看護協会,2004)と同様の結果であり,著しい偏りはないものと考える.しかし,本調査の平均在院日数は,平均366.27日であったことから,全国調査の平均277.0日(厚生労働省,2022)に比べると施設による差が大きいと考えられる.

2. 対象施設の基本情報と新人看護職員研修の内容との関連について

1) 看護の基本となる内容

精神科を主とする病院においては,グループ支援についての研修の実施割合が高かった.精神医療の現場においては心理社会的アプローチを用いることが一つの特徴であることから,日常的に用いるSocial Skills Training等で用いるグループアプローチを新人看護職員であっても実践できるように教育しているものと考えられた.また,病院機能評価の認定施設や平均在院日数が短期の施設では,倫理やインフォームドコンセントに関する研修の実施割合が高かった.精神医療の現場においては,患者の安全を守るために隔離拘束が行われる場合があることから,看護職は患者の人権や権利擁護等に関する倫理的感受性を高める必要がある(Hamada et al., 2020)ことによると考えられる.よって,早期から倫理的判断に基づく看護実践能力を培うべく,新人看護職員の研修において取り扱われていると考えられた.さらに,専門性の高い看護師を有する施設において,コミュニケーションやグループ支援に関する研修の実施割合が高かったことは,臨床経験を通して,治療的な対人プロセス(ペプロウ,1952/1973)を基盤とする精神科看護の本質を理解することを助けるためではないかと考えられた.

2) 看護のアセスメントに関する内容

精神科を主とした病院では,総合病院に比べて精神疾患やその病態あるいはアセスメントに関する研修や,ライフサイクルと発達課題に関する研修の実施割合が高かった.特に,精神科を主とした病院では,年齢とともに順調に発達段階を経るとは限らない精神疾患をもつ患者の正確な理解が求められる(川野,2002)ことから,これらに特化した教育が行われているものと考えられた.また,病院機能評価の認定を受けている施設や平均在院日数が短期の施設では,ストレスとその対処に関する研修の実施割合が高かった.これにより,ストレスと対処に関する知識と技術は,患者の再発予防に向けた支援を行ううえで不可欠であることから,新人看護職員の研修中に組み込まれているものと考えられた.

3) 看護援助技術に関する内容

精神科を主とする病院において,向精神薬,自立支援,家族援助に関する研修の実施割合が高いという結果は,バイオ・サイコ・ソーシャルモデル(渡辺・小森,2014)に基づく治療及び看護を適切に展開するためであろうと考えられた.また,病院機能評価の認定を受けている病院,平均在院日数が短期の病院,精神科における新人看護職員を採用している病院では,救急救命処置技術に関する研修の実施割合が高かった.精神医療の現場においては,抗精神病薬の副作用による嚥下障害等のリスクが高いことから,新人に限らず緊急事態に備えて,救急救命処置を安全に実施できる教育を行っていると考えられた.さらに,専門性の高い看護師を有する施設では,家族支援に関する研修が実施されていた.このことは,従来から精神科看護において,家族が抱えるストレスの軽減や患者と家族の良好な関係構築に向けた支援が行われてきたことから(厚生労働省,2009),新人看護職員の段階からその力を育成するために教育されているものと考えられた.

4) 安全なケア環境とチーム医療に関する内容

精神科を主とする病院では,離院や自殺予防等を含む医療安全対策についての研修を実施していた.特に自殺については,精神科における三大事故の一つであり,自殺事故が生じた際に医療者への責任追及が起こり得る(木ノ元,2008)ことから,事故を防止するために,新人の段階から意識を高めるために行われている教育だと考えられた.また,病院機能評価の認定を受けている病院においては,チーム医療に関する研修を実施している割合が高かったことから,質の高い精神医療の提供を目指し各専門職の役割の理解と協力体制の構築に向けた教育が行われていることによると考えられた.さらに,平均在院日数が短期の病院や専門性の高い看護師を有する病院では,看護専門職の役割に関する研修を行っている割合が高かった.看護職は他職種が患者の日常生活に合わせて介入できるように調整したり,チーム医療全体を客観的に把握し橋渡ししたりする等,多様な役割をもっている(異儀田,2016).これより,そのような病院では,新人看護職員の研修においても看護職の役割意識の向上に向けた教育が行われていると考えられた.

5) 看護専門職の研鑽に関する内容

キャリアデザインに関する研修については,精神科を主とした病院よりも総合病院の方が高い割合で実施していた.昨今の総合病院では,キャリアを積み重ねた看護師が高度実践看護師として特定分野の専門的な活動を展開している.このことは,新人看護職員に自らのキャリアや目標を定めるきっかけを与えやすい環境にあると考えられる.この利点を活かし総合病院では,新人看護職員の研修においてキャリアデザインを扱い,新人看護師が自らの将来を見据えて自己研鑽を積むことができるように支援しているのではないかと考えられる.このような教育は,これからの精神科を主とした病院においても重要になると考える.

3. 調査の限界と教育の質向上への示唆

本調査は対象施設数が少ないことに加え,全国の平均在院日数よりも若干長い施設が対象であったことから,結果を一般化することができないが,全国調査による結果という点においては,稀少な資料になり得る.特に,精神科を主とする病院が行う研修では,グループ支援,精神の病態や治療,家族援助等,精神科特有の内容が含まれていた点に着目すると,これらの内容は看護系大学や各種学校で行う看護基礎教育において適切に取り扱う必要があるのではないかと考えられた.さらに,精神科を主とする病院では,適切に対象を理解する力が新人看護職員にも求められていると考える.以上より,看護基礎教育においては,対象の世界を疑似体験する動画学習(茂木,2005)のほか,プロセスレコードを活用して行う実習体験や援助の振り返り(宮本,2003和田・鈴木,2017)を強化することにより,看護基礎教育から新人看護研修へと円滑に繋ぐこと,さらには新人看護師のリアリティショックを最小にし,看護実践能力の向上に向けた教育内容及び方法を工夫することの重要性が示唆された.

Ⅴ  結論

精神科病床を有する施設における新人看護職員研修の内容と各精神医療機関の特徴との関連を明らかにすることを目的に,入院料に精神疾患に関する料金を算定している全国の病院を対象に実態調査を行った.結果,精神科を主とする病院の新人看護職員の研修内容は,グループ支援,精神の病態やアセスメント,向精神薬,自立支援や家族援助,医療安全対策が組み込まれる傾向が高かった.大学等の看護基礎教育機関においては,本研究結果を踏まえて卒後教育への円滑な接続を視野に入れた教育を展開することの必要性が示唆された.

謝辞

本研究にご協力くださいました教育担当者の皆様に深く感謝します.本研究は,日本精神保健看護学会「教育の質向上委員会」活動の一環として行った調査です.

著者資格

KAは,研究の着想およびデータ収集ならびに分析と論文の作成を行った.MMは,研究の着想およびデザイン,データ分析ならびに総括を行った.MKとOHは,研究の着想とデータ分析および論文作成の補助を行った.SF,OS,TJは,研究の着想および論文作成の補助を行った.全ての著者が最終論文を読み,承認した.

文献
  • Hamada, Y., Tanaka, M., Arashi, H., et al. (2020). Ethical problems experienced by psychiatric nurses in Japan and their correlated factors. 東京女子医科大学看護学会誌,15(1), 1–12.
  •  異儀田 はづき(2016).精神科チーム医療において他職種が認識する看護の役割.東京女子医科大学雑誌,86(1), E109–E119.
  •  川野 雅資(2002).精神科看護診断学 第5回 看護からみた発達段階の診断学.精神科診断学,13(2), 235–246.
  •  木ノ元 直樹(2008).わが国の医療施設における自殺事故の現状とその対策 精神科における自殺事故と民事責任.精神神経学雑誌,110(11), 1051–1063.
  • 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(2022).630調査集計データ.https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/630.html(2023年8月18日検索)
  • 厚生労働省(2009).精神保健医療福祉の更なる改革に向けて.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0924-2a.pdf(2023年8月18日検索)
  • 厚生労働省(2014).新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000049466_1.pdf(2023年8月18日検索)
  • 厚生労働省(2022).令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(各定数)・病院報告の概況.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/(2023年8月18日検索)
  • 宮本真巳(2003).援助技法としてのプロセスレコード―自己一致からエンパワメントへ.1–246,精神看護出版,東京.
  •  茂木 泰子(2005).精神看護学における対象理解のための体験学習 バーチャル・ハルシネーションを通して.高崎健康福祉大学紀要,(4), 105–111.
  • 日本精神科看護技術協会(2004).精神科における新卒新人看護職員の到達目標および指導指針「資料2平成16年精神科の新人看護職員と研修に関する調査(新人編)」.精神科看護出版,39–63.
  • ペプロウ(1952)/稲田八重子,小林富美栄,武山満智子,他訳(1973).ペプロウ人間関係の看護論.1–372,医学書院,東京.
  •  和田 拡子, 鈴木 恵美子(2017).精神看護学実習におけるコミュニケーションでの学生の戸惑い プロセスレコードの分析から学習支援を考える.神奈川県立よこはま看護専門学校紀要,(9), 1–4.
  • 渡辺俊之,小森康永(2014).バイオサイコソーシャルアプローチ―生物・心理・社会的医療とは何か? 1–260,金剛出版,東京.
 
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