抄録
市区町村別死亡率データを使用した死亡危険度の地理分布を把握するための統計的方法について考察した.方法は,人口規模で規定される円状近傍を用いて空間平滑化された値を期待値とするポアソンモデルに基づくものである.さらに,その平滑値に対してガンマ揺らぎモデルに基づく経験ベイズ法および交叉型尤度による修正についても検討した.提案された方法により,相対死亡危険度に関する標準化死亡比(SMR)の縮小推定量が求められ,各市区町村別の粗SMRが局所的なその近傍平均値の方へ縮小される.我々は,本方法を1993年から2002年の期間における日本での部位別悪性新生物死亡率データへ適用し分析を試み,その性能を検証した.その結果,空間分布の概観を把握する上で,ガンマ揺らぎモデルによる調整が有効であることが分かったが,単純平滑化に較べて顕著な向上は観られなかった.