応用統計学
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研究論文
リカレントニューラルネットワークを活用したイベントヒストリー解析
辻谷 将明池亀 和博海田 勝仁大杉 夕子岡田 昌也井上 貴之玉置 広哉福永 景子小川 啓恭
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 47 巻 2-3 号 p. 71-87

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抄録

生存時間解析では,観測開始時点で記録される共変量の値が,目標事象発生(打切りあるいは死亡)まで一定であるとして解析してきた.しかし,患者は観測期間中モニタリングされ,目標事象までに種々のイベント発生の検査値が記録される.本稿では,共変量の値が時間に依存して変化する骨髄移植(同種造血幹細胞移植)データを取上げる.イベント発生ごとに変化する共変量の時系列情報を取込むため,自然言語処理の分野で急激な発展を遂げているリカレントニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network;RNN)を活用する.具体的には,ブートストラップ法を援用し,最適な隠れユニット数の決定,影響分析による外れ値の検出,モデル改善の検証,およびモデルの適合度検定などを目途とする.部分ロジスティックモデルを拡張したフィードフォワードニューラルネットワーク(Feed-Forward Neural Network;FFNN),更にそれに帰還路を加えたRNNを活用することにより,非線形なイベントヒストリー解析が可能になる.RNNを活用し,観測期間中のイベント発生時点における,ある共変量のもとでの半年後条件付き生存確率を予測すれば,従来のFFNN,部分ロジスティックモデルおよびCoxの比例ハザードモデルに比べて,イベントの発生現象を的確に表現できる.

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© 2018 応用統計学会
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