2024 年 53 巻 1 号 p. 1-14
ガウス過程は信号処理から天文学まで幅広く利用される非常に汎用で強力な非線形モデルの一種であるが,近年ではゲノム学の分野でも用いられるようになった.本稿ではゲノム学の分野でも,特に遺伝統計学において,経時的に変化する動的な遺伝的関連をゲノム上に位置づけるモデルについて紹介する.また実例として,一細胞RNA解析において自然免疫応答の擬似時間に沿った遺伝子発現の遺伝的関連を同定した結果と,縦断研究における疾患・発達に関わるありふれた形質をゲノム上に位置づける試みについて紹介する.またその課題についても議論する.