応用統計学
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原著論文 特集 : 機械学習とその応用(その2)
異なる次元数のデータを同時に投入した行動的ロイヤルティ推計手法の提案
—Source-Attention Transformerと特徴融合によるマルチモーダル深層学習—
新美 潤一郎
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2024 年 53 巻 1 号 p. 15-32

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抄録

近年の深層学習分野では,動画,音声,テキスト等複数のモダリティにわたるデータを同時的に投入して学習器を構築するマルチモーダル学習の手法が様々提案されている.一方のマーケティング分野においても,顧客生涯価値(CRM)の推定や行動予測にあたり,スマートフォンアプリや購買履歴等の行動ログとデモグラフィック変数や調査回答などの複数のデータを組み合わせた解析自体は広く行われているものの,それらはあくまでも各データを分析者の手で変数化し,単一の解析データに集約することにより実施されることが一般的である.しかしながら,このような分析では深層学習の特徴抽出に基づく高い予測性能を必ずしも活用できていない可能性がある.そこで本研究では,CRM分析への応用を目的として,外部データを文脈情報として考慮可能なSource-Target Attention Transformerと,データ融合手法としての特徴融合を組み合わせることにより,顧客のサービス利用を時系列的に記録したパネルデータと,デモグラフィック情報や調査回答を収録したクロスセクションデータを同時かつ効率的に学習する解析手法を提案する.検証にあたっては,スマートフォンゲームの将来利用を対象として,LSTM等の非Transformerを含む複数モデルの比較による網羅的な実データ解析を行い,既存手法と比較した高い予測性能から提案手法の有用性を示した.

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