応用統計学
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事例研究 特集 : 機械学習とその応用(その2)
重力波観測における突発性雑音の教師なし分類
坂井 佑輔寺田 吉壱高橋 弘毅
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2024 年 53 巻 1 号 p. 33-54

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抄録

重力波は,アインシュタインの一般相対性理論によって予言された重力による時空のゆがみが光の速さで伝わる波動現象である.近年,重力波の観測が可能になり,重力波を用いた物理学・天文学や重力波と他波長との観測によるマルチメッセンジャー天文学への発展が期待されている.一方で,重力波観測においては,非定常・非ガウス性の突発性雑音が発生するため,重力波望遠鏡の不安定化や重力波信号の模倣・隠蔽を引き起こす.突発性雑音は,その原因に起因すると考えられる様々な特徴を持つため,突発性雑音の分類によりその原因の特定や観測の精度向上に貢献することが期待できる.本論文では,深層学習を用いて突発性雑音の潜在変数を抽出し,その分類を行う.まず,抽出した潜在変数に対しては3次元空間に埋め込むことで可視化し,さらに潜在変数に対する入力画像を即座に表示するツールを開発した.可視化ツールでは潜在空間上の突発性雑音の分布についてその入力画像と共に考察できるようにした.また,潜在空間上の突発性雑音に対し教師なし分類を実施し,クラスタリング不安定性と誤判定率の評価により適切なクラスタ数を推定した後,その分類結果について報告する.

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