応用統計学
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血液製剤によるHIV感染数およびAIDS発病数の推計
潜伏期間を考慮したモデルの検討
橋本 修二福富 和夫森尾 眞介
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1988 年 17 巻 2 号 p. 119-127

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抄録

わが国の血液製剤によるHIV感染数およびAIDS発病数を推計するために,1987年6月までの観察された発病数について潜伏期間を考慮したモデルを適用した.このモデルは潜伏期間にワイブル分布,感染時期の分布の確率密度関数に階段関数を仮定した上で,ワイブル分布の中央値と型パラメータを与え,観察された発病数から感染数を推定し,観測時点以降の発病数を推計するものである.潜伏期間を考慮するのは,AIDSのそれが極めて長いためであり,発病数から感染数を推定するのは,感染の情報の入手が極めて困難であるためである.発病数の推計値およびその精度に対する潜伏期間の分布の中央値と型パラメータ,感染時期の分布の確率密度関数とした階段関数の区間の設定の影響を検討した結果,総発病数の推計値は潜伏期間の中央値の影響が大きく,中央値5年と仮定した場合では130人,7年では232人と中央値の上昇とともに急激に増大した.期間別発病数の推計値は中央値とともに型パラメータの影響が大きかった.総発病数の推計値の精度は型パラメータとともに区間の設定の影響が大きかった.従って,AIDS発病数の確度の高い推計を行なうためには,潜伏期間に関する正確な情報が必要であるが,その精度には感染時期の分布の影響も大きいことが示唆された.

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