応用統計学
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多次元空間への相対射影追跡法について
弘 新太郎小宮 由里子南 弘征水田 正弘
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2004 年 33 巻 3 号 p. 225-241

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抄録

近年, ゲノムデータやPOSデータのような変量の多いデータが増加し, そのような高次元データに対する解析手法の必要性が増している.一般に, データ解析において, データが高次元になるほど, 有益な情報を抽出することは困難になる.そこで, 多変量データ解析では解釈が容易な低次元空間にデータを次元縮小し, 有益な情報を引き出す手法が数多く研究されている.なかでも, 射影追跡法 (Friedman and Tukey, 1974) は, 興味深い構造が現れる低次元空間を探索する有効な次元縮小法である.従来の射影追跡法では興味深さを数値化する射影指標がいくつか提案されているが, その提案のすべてにおいて, 興味深い構造を正規分布から最も離れている分布と定義しているため, 正規分布を基準としないような興味深い構造の探索は難しい.
これに対して, 解析者が参照とする標本を定義して, その標本の分布から最も離れている分布が現れる射影方向を探索する相対射影追跡法がMizuta (2002) によって提案されており, 用いられる射影指標として, Area射影指標 (弘・小宮・南・水田, 2003) が既に提案されている.しかし, この指標は2次元以上の空間へ射影した場合に興味深さを測ることができない.そこで本論文では, 2次元以上の空間へ射影する場合に対応したArea相対射影指標を作成する.また, 従来の射影追跡法で使用されるHallの射影指標を相対射影追跡法を行うための射影指標に拡張し, 新たなHallType相対射影指標を作成する.この2つの相対射影指標を用いて高次元データを2次元空間へ次元縮小し, 興味深い射影方向空間が得られるかを比較検討する.

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